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番外1573 自分にできることを

「考えたのですが……私が流されてからの皆の状況が分かりませんし、平常通りに事が進められる、とは限りません。やはり、皆で向かうのが良いのかも知れませんね」

「確かに単独行動が危険というのはありますね。安全確認できるところまでは共に移動し、交渉の場はその際に決めるというのが良いのかも知れません」


 ナヴェルの言葉に答える。

 地脈に乗っての移動は自由に乗り降りできるというわけではなく、決められたポイント間でしか乗り降りできないらしい。

 魔法を使っての駅間移動というような理解で良さそうだ。そういう意味でも状況を確かめつつ移動し、話を通してから俺達を迎えるかどうか、という事もできるだろう。彼らの拠点が無事ならば、という前提ではあるが。


 というわけで、先にナヴェルに行ってもらって話をつけてもらってから動くのではなく、共に同行して安全確認をしてから、という事で話も纏まった。


 ドラフデニアの面々は誰がナヴェルと一緒に行って、誰がこちらに残るか、という事も含めて少し話し合いとなった。魔道具の準備ができるまでなので話し合いは短くする必要があるが。


「余は向かう必要があろうな。詳しい事は聞けておらぬが、場合によっては交渉ではなく国交の樹立という段階まで行くかも知れぬ。その場に居合わせて他人任せともいくまい」

「境界公の見解を伺いたく思うのですが……」


 レアンドル王の言葉を受けて、護衛の武官が俺に尋ねてくる。救助だけではなく未知の種族と区画への対応。確かに国交樹立レベルの話には成り得る。

 武官達の心情としてはレアンドル王の身の安全を考えるなら後方にいて欲しい、のだとは思うが、それでも主君の意を最大限汲みたいという気持ちもあるのだろう。


「現地の環境や種族全体の性質は分かりませんが……ナヴェルさんの言動や行動を見ていると、地上の人達と接点を持たないようにしているものの害意はなく、むしろ敵対しないように気を遣っている、という印象を受けますね。これは一族全体の意向、方針でもあるのかなとは思います」


 ナヴェルが彼らの拠点への同行を提案しているという事もあるし、一存では話せないと手順や決まり、道理を重視する姿を見せるナヴェルがルトガー達を助けに入ったことといい、どうも彼らの中では地下で困っている地上人がいたら助ける、保護するといった方針があるように見受けられる。


 ただし……それは平時ならの話で、今は有事である。彼らの種族はこちらに友好的な対応でも、起こっている問題に関連した危険がないとは言えまい。


 そうした俺からの見解について話すとレアンドル王も頷き、武官達は真剣な表情でそれに耳を傾けて思案を巡らせているようであった。


「一方で僕からの備えや対応という話をするのなら、有事の際に転送魔法陣がなくても術式で陛下や同行している方々を安全な場所に避難させる、という事は可能です」


 召喚魔法技術の応用だしな。地上かこの中継地点にバロールを残しておけば同行者を召喚の対象とすることで離脱は可能だ。

 そうした話をすると、護衛の武官達は顔を見合わせて頷きあった。


「という事でしたら……我らとしても陛下のご意向は尊重したいと思います」

「理解があって嬉しいものだな」


 護衛の武官達の言葉に、レアンドル王がにっこりと笑った。そんなレアンドル王の対応に武官達も苦笑し、ナヴェルも和んだように少し笑い声を漏らしていた。


「地上を守る者、同行して陛下をお守りする者が、それぞれに必要になりますね。ナヴェル殿との約束もありますし」


 ルトガーが言うと一同同意する。確かに、事情を把握した上で他言せず、状況を把握している者というのが後方に必要だろう。


 この場では武官達に加えて、冒険者達もその貴重な人員に成り得る。バイロンもそうだな。テスディロス達は俺に同行するが、ドラフデニアの武官達からレアンドル王の護衛を無くすわけにもいかないし。

 内訳については彼らの間で最適な編成を話し合って決める、とのことだ。

 そうこうしている内に水晶板にローズマリーが顔を出す。


『魔道具転送の準備も整ったわ』

「ん。ありがとう。それじゃあまずはこっちに魔道具の転送からかな」


 そう言ってマジックサークルを展開。転送魔法陣を起動させ、フォレスタニア側にある魔法陣に置かれている品々を、前線基地となっているこの場所に転送してくる。

 虚無の海対策での装備品の外に空気のクッションを構築する魔道具、結界や隠蔽魔法関連の魔道具や護符も送ってもらった。空気のクッションに関しては環境に寄らず行動できるようになるし、隠蔽用のものは中継地点用としても使える。斥候や潜入、潜伏が必要になった時も活用できるので役立たせてもらおう。


 他にも追加のポーションも届いているな。


「アルには感謝しないとね。休養中でも魔道具に助けてもらってる」


 俺の言葉に、マルレーンがにこにことした笑みを見せる。

 そうした品々を魔法の鞄に収めたり、護符を使って周辺の防備を固めたりといった作業を進めていると、武官達の話し合いも終わったらしい。


 まずレアンドル王の護衛達と共に、武官達の最高戦力という事でルトガーも同行するとのことだ。

 訓練生達と冒険者達は消耗もあるので外での待機、となるな。冒険者達が外に出ればギルドとの連携もしやすくなるというのもある。

 これも依頼の内という事で、待機してもらう事そのものに依頼料を支払うとレアンドル王は明言していた。きちんと繋がりを作っておけば他言無用の約束を守ってもらいやすくもなるしな。


 バイロンは――外での待機組だ。訓練生達と一緒ではあるが。今は連絡を受けた父さんやダリルと水晶板越しに少し話をしていた。


 ルトガーから預かっているのに巻き込んでしまって申し訳ないという旨の報告から、父さん達と話をしていた形だな。


『ルトガー卿から話を聞いた。救助作戦では良い形の支援をしてくれたと。良い師や先達に会えたようだ』

「その……自分が力量で劣っているのは十分承知していましたから……。自分にできることをしようと。後は無我夢中で。ルトガー先生や先輩方の指導に関しては、その通りかと思います」


 父さんの言葉に、バイロンは目を閉じて答える。そんなバイロンの様子を見てダリルも少し目を細めて頷く。


『兄上は、元々騎士として実力を付けたいと思っていたのは存じています。今の兄上は――何というか少し前に農業に従事してみた自分の時と同じように感じられます』

「ああ。それは――」


 バイロンはダリルの言葉に少し感じ入っている様子であった。意識が変わったダリルを見て、バイロンも思うところがあったようだからな。その時に似ているというのは……確かにそうかも知れない。バイロンは自分の掌を見て静かに頷いていた。


『キャスリンからも伝言を預かっている。自分はあまり口を出せる立場にはないが、今できることを頑張るように……応援している、と』

「母上も……。はい。精進します」


 バイロンは居住まいを正して答える。そうして通信を切り上げ、俺のところにやってきた。その表情は真剣なものだが晴れやかな印象があるな。


「その、私は後方支援という事で地上待機になってしまいましたが……皆さんが無事に帰ってくるよう、祈りつつお待ちしています」

「ありがとう。後方支援とはいえ事情を知っている人手は多くないから、頼りにしてる」


 支援と連絡要員とはいえ、やれる事、やるべき事に意識を集中させている今のバイロンならば、きっちりとした支援をしてくれそうだ。


 バイロンに手を差し出すと、こちらを真っ直ぐに見て頷き、そうして握手を交わす。それからルトガーを除いた訓練生達、冒険者達をバイロンと共に地上へと転送したのであった。


 では……ナヴェルと共に移動していくとするか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] >召喚魔法技術の応用だしな。 他一同(危険回避と同時に対戦相手を減らしたくないんだな) >「アルには感謝しないとね。休養中でも魔道具に助けてもらってる」 ある…
[一言] 敵も現場がどうなっているかも未だ不明なままというミステリアスな状況にドキドキしています。
[良い点] ん。ありがとう。それじゃあまずはこっちにコルリスバイクとベルト、そして魔道具の転送からかな
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