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番外1556 地下大空洞へ向かって

 王城では出発の準備が整えられていた。食料、水、薬や包帯、添え木にロープ、カンテラ等々、救助に必要になりそうな物資も飛行船に積み込まれていく。


「転送魔法陣を構築しておきましょう。物資を城から直接送る事で、現場で不足が出た時に即対応できます」

「おお……。それは良いな」


 レアンドル王に提案するとそう声を漏らし、許可を出してくれた。

 というわけで城の一角に転送魔法陣を構築する。顔見知りの騎士が警備についてくれるとのことだ。ティアーズと水晶板も配置しておけば、中継できるので滅多な事はあるまい。

 対になる転送魔法陣は飛行船に構築するものと、現地に直接構築するものと、2種類用意すればいい。


 安全確保できているという事で停泊させている船が簡易の前線基地になるし、現場で何か必要になった時に俺が大空洞内に転送魔法陣を構築すればその場で即対応できるからだ。


 フォレスタニア側との転送魔法陣も構築できる準備は整えてあるし、大体の状況には対応できるかな。


 というわけで城の一角に転送用の部屋を用意し、中継もできるようにしてと、簡易ではあるが王都側の前線基地替わりにする。物資集積と搬入もしやすい場所をレアンドル王に宛がってもらったので色々と対応できるだろう。


「これならば飛行船への物資搬入もある程度で済むな。今の状況であれば迅速に動いた方が良い。早速現場へ向かうとしよう」


 レアンドル王が言うと、ゼファードも気合を込めているのか声を上げた。

 翻訳の魔道具によるとゼファードとしても地下ではどうかは分からないが、物を運んだりは任せてほしい、とのことだ。


「ん。頼りにしてる」


 そう答えると嬉しそうに声を上げるゼファードである。


 ドラフデニアの騎士達が状況を確認していると、ドラフデニアの森に住む妖精の女王――ロベリアも姿を見せた。

 王都に遊びに来ていたらしいのだが、事件の話を聞いたので顔を出したという事である。


「我も身体が小さいから狭いところで手伝える事があるかも知れぬし……一緒に行ってもいいかの?」

「ありがとう。危険がないようにはするよ」


 そう答えるとロベリアは頷いて応じる。


 というわけで、みんなでドラフデニアの飛行船に乗り込んでいく。レアンドル王と共に地下大空洞に立ち入った経験のある騎士達が救助隊として選ばれているな。


「訓練で大空洞は入ったことがあります」

「とはいえ、あまり深くまでは入ったことがありませんが……」


 騎士達もそう教えてくれた。


「余も同じだな。訓練で立ち入ったことはあるが、そこまで奥に入らない。というか。王族であるがゆえに、現地を知っておくのが重要、というような方針だったからな」

「私は……師と共にある程度深くまで立ち入ったことはあります。どのような階層で事故が起こったかは分からないのでまだ何とも言えない部分はありますが、知っていることはお伝えしますね」


 レアンドル王とペトラが地下大空洞に関しての話をしてくれる。ちなみにペトラの師である宮廷魔術師については、地方都市に諸用で出かけているので、現在王都にはいないという。

 恐らく確認できる範囲で一番詳しい関係者はペトラの師匠であったのだろうが、不在であるというのならば頼りにはできないな。ただ……帰還が間に合えば中継映像で現場を見ながらの対応もできるだろうとは思うが。


 同行している面々の挨拶と紹介は移動しながらということで、点呼と確認を手早く終えたところで、ドラフデニアの飛行船は現地に向けて出発する事となった。


 テスディロス達やコルリス、アンバーといった面々と、ドラフデニアの武官達が挨拶と自己紹介を行う。


 ドラフデニアの騎士達はグリフォンを駆る関係で救助活動も行うとのことで、こういう事故対応も実戦経験があるようだ。

 大空洞での訓練もしている面々を集めているし、ドラフデニアの治癒術師もいる。救助隊としてはこの上ない面々だろう。


「俺達は大空洞には立ち入ったことがないが……迷宮や海底洞窟での活動はしているな。現地を見てみないと分からない事は多いが、力は尽くそう」


 テスディロスが言うと、編成された救助隊の面々も「心強く感じます」と応じていた。


 特にコルリスとアンバーは期待されている部分も大きいな。俺達の中にあって地下専門家と言える面々だし。


「よろしくお願いするぞ」


 ロベリアが笑って言うと、コルリスとアンバーは揃ってこくこくと頷く。そんな様子にレアンドル王も笑い、やや緊張している様子であった救助隊の面々も、ちょうどいい具合に肩の力が抜けたところはあるようだ。


 地下大空洞についても色々と話を聞かせてもらうが、やはり下層の事はよくわかっていないらしい。まあ……この辺は魔力溜まりの奥地と同じだな。立ち入るにはリスクが高いエリアだと言える。


「入り組んでいるというのもあって、地上に戻るための経路も、逆に迷い込んでしまう経路も多数ある、と思います。一見閉じ込められたように見えても崩落そのものに巻き込まれたというわけではないのなら、脱出に賭けて行動を開始しているというのはありそうですね」

「しかし、確立された経路でないとどうしても運に頼る、という事になってしまいそうだな」


 ペトラの見解にレアンドル王が言う。

 大空洞内部の表層巡回もしているそうだが、ある程度行動範囲を定めて、という事になっているから決められたルート以上には深入りされないそうだ。

 その点コルリス達が一緒なら直接地下潜行が可能だし嗅覚で追えるからな。救助対象者やルトガー達を追跡して捜索するのも可能だろう。


 話をしていると現地から中継映像が繋がる。バイロンだ。

 俺がレアンドル王と一緒にいるところを見ると、一瞬驚いたような表情をしていたが、すぐに気を取り直して一礼し、まずは必要な報告を、と聞かせてくれる。


『要救助者を探しに行ったルトガー卿や皆は、まだ戻ってきていません。その……現場まで行けないのは歯がゆくはありますが、もう一人残された連絡要員と共に交代で状況に変化がないかを見つつ、危険の排除のために立ち入りの制限を手伝っています』

「分かった。余らの到着までそのまま継続してもらえるとこちらとしても助かる」


 監視と状況方向、連絡役に更なる崩落事故に備えての立ち入り制限と……確かに重要な役回りだな。他に人員がいない状況で持ち場を離れられると困ってしまう。バイロンとしてはルトガー達を心配しているというのは察せられるが、少なくとも俺達が到着するまではそのままその役回りを継続してもらう必要があるだろう。


 レアンドル王の言葉に真剣な表情で承知しましたと応じるバイロンである。

 待機中でもあるのであまり長くはとれないが俺と話をする時間も作ってもらう。


「レアンドル陛下から連絡をいただいてね。こうして救助に参加させてもらう事になった」

『それは……心強く思います。この報告用の魔道具にしてもルトガー卿がフォレスタニアに近況について伝えるためでもありましたか、少しだけ遭難の報告相手を考えてしまいました』


 まあ、そうだな。バイロンは少し苦笑して冗談めかしているが、心情的には実際頭をよぎった部分もあるだろう。こういう救助に関してはフォレスタニアには対応できる人材や技能があるし。

 ドラフデニア国内の事件だし、ルトガー達もドラフデニアの武官だから筋としてドラフデニアに報告して善後策を、というのは筋としても手順としても正しいな。色々と思案した上で動いてくれているというのは分かる。


「うん。バイロンがルトガー卿を心配しているのは分かる。一緒に救助できるように頑張ろう」

『はい。その、応援に駆けつけてくださった事、心強く思っています』


 バイロンはやはりまだ少しぎこちない部分はあるものの、俺の顔を見てそういった。その辺は、バイロンの真摯な気持ちでもあるのだろう。

 まだ時間もあるようだし、事故の起きた状況等、把握している部分もできるだけ聞かせてもらうとしよう。

いつも拙作をお読みいただきありがとうございます!


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詳細は活動報告にて記載しておりますので楽しんで頂けたら幸いです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 獣は超音波でサーチ余裕だが、あえてダウジングロッドで探知している
[一言]  ロベリアの口調、『のじゃ』系だったような・・・。  最初期のクソガキっぷりを知ってるだけに、真面目口調のバイロンに違和感感じてしまう・・・(笑)
[一言] 大空洞に最も詳しい人物の不在が果たしてどう影響するでしょうか。 ますますモグラ班員たちの活躍に期待がかかりますねw
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