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番外1546 長老達の歓待

 余興については七家の長老達が色々と見せてくれた。小さなゴーレムを作っての人形劇に始まり、幻術を使ってのイルミネーションや手品であるとか、煌びやかで不思議な出し物といった感じだ。


 台の上でコミカルな動きを見せるゴーレムである。あの話は知っている。街を騒がせる怪盗を、相談を受けた魔術師が捕まえる、というものだな。

 母さんが寝る前に聞かせてくれた話であるが……そうだな。シルヴァトリアの、賢者の学連でされてきた話だというのなら納得だ。


 魔術師達が幽霊屋敷を偽装し、誘き寄せた怪盗を懲らしめるという筋立てだ。廊下を走って逃げる怪盗を半透明の幽霊達……に見せかけた幻術が追いかけていく。

 走る泥棒の小型ゴーレムに合わせて廊下の背景がスライドしていたりと中々に趣向を凝らしているな。コミカルな造形の幽霊に泡を食って逃げ出す怪盗の仕草は、子供達にもかなり受けが良い。


 追いつめて悪事をやめるかと脅しをかける幽霊に、怪盗は半泣きになりながらも盗んだものの在り処等を白状していた。アジトの場所まで自白させて、盗まれたものも返ってきて、

魔術師は街の人達から感謝されながら去っていく、という筋立てだ。

 怪盗の被害者の顔をした幽霊を仕立て上げて恨み言を語らせたりしたことを魔術師は被害者当人に謝っていたが、商人である被害者は「なんのなんの。自分の顔が事件解決に役立ったのなら何よりです」と大笑していた。


 というか……昔は面白い話としか思っていなかったが、この話は少し気になる点があるな。


「もしかして、この話は実話だったり、実際の出来事を元にしていたりしますか?」


 魔術師が仲間を呼んで、みんなで協力して怪盗を洋館に閉じ込めるために結界を貼ったりあれこれ幽霊の演出をしたり……七家であれば可能な内容だからな。


「何代か前の長老達が泥棒騒ぎの解決に向かった、というのは事実じゃな。子供に話をするにあたり面白おかしくしている、というのはあるかも知れんのう」


 なるほど……。それは確かにありそうだ。お祖父さんの言葉に笑って応じる。


「ふふ、でも楽しいです。今の長老様達の姿を見ていると当時も近い感じだったのだろうなと想像してしまいますね」


 エレナが楽しそうに言うと、マルレーンもにこにことした笑みを見せる。


「ゴーレムの人形劇もだけれどああいった魔法の使い方はテオドール君の影響でもあるね」

「魔法騎士団の演奏もヴェルドガルの王城で見せてくれたものが影響しているが、あれも元を辿ればテオドールの影響が多々あるようじゃからな」


 長老達と頷き合うお祖父さんである。


「皆にも好評だよ。魔法制御が鍛えられるし……何より子供達と交流できるようになるからね。平和な時代にこそ合っているのかも知れない」


 エミールもそんな風に笑って教えてくれた。


「確かに、修練にもなって平時に役立つとなればやらない理由がないな」


 感心したようにテスディロスが言うと、ウィンベルグやゼルベルも同意する。


「訓練にも直結しているなら、有事にも役立ちますからね」


 と、グレイスがにっこりとしながら同意する。確かに。楽しければモチベーションにも繋がるし。BFOが知らない間に訓練になっていたことも、同じことと言えるかも知れない。


 いずれにしてもそうした受け取り方をしているという事なら、七家の長老達も、余興の出し物とは言え、結構な力を注いでいるのは間違いない。


「テオドールもそうだし、親戚だから感覚が麻痺してくるけれど、冷静になると……賢者の学連の長老達がこうして余興を買って出ているというのもすごい話ね」


 ローズマリーが顎に手をやってしみじみと言う。確かにな。他所の国で言うなら宮廷魔術師クラスの集団なのだし。

 とはいえローズマリーの言う通り、俺もあまり人の事を言えた義理ではないような気がするし、親戚の子や孫が遊びに来たからと言えば普通の事ではあるのかな。どうなんだろう。


 そんな調子で余興の席は和やかなもので、みんな楽しんでいるようだった。お祖父さんは子供達の好みを聞いたりして、水晶の像を構築したりしているな。この辺は――母さんが水晶の文鎮を気に入っていたからというのがあるかも知れない。それを見て母さんもにこにこしていたりするが。


 子供達の好みはそれぞれだが、鞄に着けたプレートのモチーフに合わせるという子が多かったな。各々シルヴァトリアのお土産までできて結構な事だ。


 そうしている内に夕食もできて運ばれてくる。長老達の余興も一段落して今度は楽師達の演奏を聴きながらの夕食だ。


 スノウボア……大きな猪の魔物を魔法騎士団が仕留めたそうで、それを食材に使ったスープや串焼きといった料理が運ばれてくる。結構なごちそうだな。スノウボア自体も結構好戦的で危険な魔物だったと記憶しているが……。


「北国の魔物は手ごわい印象がありますし、スノウボアも結構好戦的で危険度が高かったと記憶していますが、この辺は流石ですね」


 そう伝えるとラヴィーネもスノウボアに関しては同意見なのかこくんと頷き、列席していた騎士達が笑みを見せた。


「魔力溜まり周辺の討伐任務でもありますから、私達の任務としては通常の範囲ではあります」

「むしろ、倒した後の方が騒ぎになっていましたね。思いの外状態が良かったので此度の宴会に丁度いいのでは、と……。そう思いついた話をしたらみんな乗り気になってしまって」

「そうそう。処理をしてきちんと保存を効く形での迅速な輸送の手配をして連絡を入れてと……」


 当人の魔法騎士達から裏話まで聞くことができた。なるほどな。魔法騎士団の面々は仲が良くて楽しそうな事だ。エギール達と笑顔で「こうやって突っ込んできたから、躱してから気を引くために魔法を撃って……」と、身振り手振りを交えて話をしていた。


 楽師達の演奏への返礼として、イルムヒルトもリュートを奏でたりして。セラフィナが一緒に歌声を響かせる。イルムヒルトのリュート演奏については孤児院でもしているからな。思い入れもあるのだろう。シルヴァトリアの面々から大きな拍手が送られて、孤児院の子供達も嬉しそうにしていた。


 魔法騎士達の騎乗している幻獣達と子供達が、中庭で触れ合える時間も作っていたりして。ペガサスやグリフォンの生態やヒポグリフの性格であるとか、乗り手である魔法騎士達が子供達に説明をしたりといった時間も過ごす。


 サフィールも知っている幻獣達と再会できて嬉しそうだ。

 まあ……子供達に混ざってシャルロッテがグリフォンに抱き着いたりしていたが……。あれはあれでグリフォンも嬉しそうにしているし、魔法騎士達や子供達にサンドラ院長からエベルバート王、長老達に至るまで、みんな和んでいるようだ。グレイス達もそんなシャルロッテの様子に楽しそうにしていた


 そんな調子で王城にてのんびりさせてもらい、それから俺達は今日の宿泊場所という事でまたシリウス号に乗り込み、学連の塔へと向かったのであった。


 学連の敷地も少し見学していく。賢者の学連という字面もそうだが、実際雰囲気の落ち着いた、閑静な学術機関という印象がある。それでいて池や小さな森もあったりと自然も豊かで雰囲気がいい。ザディアスが倒れた事で、問題のある研究等も凍結されたという話だしな。


 子供達も緊張感が薄れてきたようで、学連に関しては結構興味深そうに周囲を見ながら敷地内を進んでいった。まあ、塔の動く廊下などは事前に注意してあるので、恐らくは大丈夫だろう。


 そうして到着したところで、みんなで手荷物を持って塔内部へと案内してもらうのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 追いかける幽霊の中にガイコツ混ざってませんかw てお「かーさん、興奮しない」やれやれだぜ きっとテオは幼少の頃ガイコツアレンジ版を聞いてたんだなw
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] >あの話は知っている。 怪盗さん、昔の人で良かったですね。 今だったらテオドールに心が粉砕されてますよ。 戦闘「一晩で屋敷を建築、侵入したら数々の罠。 そして…
[一言] 人形劇のゴーレムが往年のドリ○ターズに重なってしまいましたw 飛べ! ○悟空よりは全○集合の生身のコントの方がイメージとしては近い気がするのですがw
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