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番外1536 シルヴァトリア旅行

 シルヴァトリアは少し前にも訪れているが前回は母さんの里帰りといった側面が強かったな。今回は家族やエリオット、それに氏族の子供達や孤児院の面々と揃っての訪問と観光だから、また意味合いが変わってくるだろうか。


 ただ、氏族の子供達や子供達を引率している面々も、今回は結構リラックスしているように見受けられる。


「ルクレインはまだ小さいから……こうやって一緒に観光に行ったこと、覚えていられるかしら」

「お嬢様は利発ですから、案外記憶に残ったりするかも知れませんよ」


 ルクレインを腕に抱いたエスナトゥーラがフィオレットとそんな風に談笑していたりした。


 シルヴァトリアと魔人達とがかつての最大の敵同士であったことを考えれば……変われば変わるもの、という気がする。

 今の世代のシルヴァトリアと氏族達との間に直接的な遺恨があるわけではないという事や、七家の長老達が俺の親族達でもある、というのも肩の力を抜いていられる理由でもあるか。


 元を辿れば七家と氏族達は同祖でもあるのだしな。


「記憶か。みんなはどうかな」


 そんなエスナトゥーラ達の会話を受けて子供達に視線を向ければグレイス達も微笑む。


「覚えていてくれたら素敵ですね」

「幼い頃の記憶は薄れるものだけれど、たまに残っている、という場合もあるようね。子供達は……どうかしら」


 グレイスの言葉にローズマリーもそう応じて、子供達の表情を少し微笑んで見やる。将来が楽しみといった感じだな。


 俺も景久もそこまで小さな頃の記憶は残っていないけれど、子供達もそうとは限らないし。


「記憶媒体も動かして、少し旅の記録も残しておこうか。覚えていてもいなくても、後から振り返ることもできるし」

「それは良いわね。楽しそうだわ」


 笑顔を見せるクラウディアである。

 そうやってみんなで話をしながら同行している面々の様子も見つつ、孤児院へと向かう。

 フロートポッドに乗っている面々と馬車に乗っている面々。車列を護衛するテスディロス達……と、結構大人数での移動ではあるな。


 フロートポッドについては乗っているのが俺達なのは街中の人たちも分かっているから、手を振ったりして挨拶をしてくれた。こちらも顔を出して手を振ったりしながら移動していく。


 やがて孤児院に到着すると……サンドラ院長やブレッド少年を始めとした面々も準備万端といった調子で揃って俺達を迎えてくれた。

 メルセディアも顔を出しているな。


「おはようございます」

「おはようございます!」


 サンドラ院長の挨拶に合わせて子供達も声を合わせてきた。俺達も笑って挨拶を返す。元気で良い事だ。


「孤児院の留守については、私達騎士団の者達が責任をもって担当させていただきます」

「ありがとうございます。メルヴィン陛下とジョサイア殿下にも、改めてお礼を言わねばなりませんね」


 一礼して伝えてくれるメルセディアにそう伝えると、騎士団の面々と共に笑顔で応じてくれた。


「みんなともお揃いだな」


 と、子供達の持っている鞄を見て頷くザンドリウスである。旅行鞄についてはみんなだけでなく、迷宮村や氏族の面々にも提供している。

 旅行用に使ったり私物の収納が出来たら便利だからな。あまり手間をかけずに作れるというのもある。


 みんなも喜んでくれたので俺としても作り甲斐はあったな。

 アルバートにも話をすると『孤児院に提供したものは提供したものとして……少し見た目を変えれば一般にも売れそうな感じはするね』と、そんな風に言っていた。


 売る場合にデザインを少し変えるのは、孤児院にとって結構思い入れのある物になりつつあるからだな。卒院しても絆になると言われたら、このデザインは少し特別な位置づけにして、一般に売る場合はデザインを変えていこうということだろう。


 ただ……樹脂の形成は規模に比して結構高度な木魔法で、魔力消費も結構大きいので、そのあたり魔道具化するならば各種素材もしっかりしていないとならない。色替えや部位ごとの性質変化も必要なので形成方式といっても部品ごとになるし、多分……値段を安く仕上げたりというのは難しいだろうな。


 ともあれ、お互いの鞄のプレートに刻まれているモチーフを見せ合ったりして、子供達は楽しそうな様子だ。氏族達のプレートは、星座、鳥や動物、花等々……各々興味あるものが多岐に渡っているのでバリエーションも多いな。各々好みが出てきているというのが分かる。


 迷宮村の面々は月をモチーフにしたものや、自分と仲の良い種族をデフォルメしたものをプレートに刻む意匠として選んでいるといった様子だ。


 孤児院の面々との交流や話のきっかけにもなっているようで、良い事である。そうして朝の挨拶やお互いの顔合わせも終わったところで造船所へと移動していく。


 造船所に向かえばそこにはフォレスタニアの武官達がシリウス号の警備をしつつ待っていてくれた。同行してきたアルファが前に出る。


「警備について感謝を伝えたいみたいだね。俺からも、ありがとう」


 アルファは造船所にも顕現できるし、こっちの様子を察知できるようではあるが、まあ、それでもラヴィーネと一緒にいることが増えているからな。安心して過ごせるのは彼らのお陰、ということだろう。


「もったいないお言葉です」

「道中、お気をつけて」

「ああ。行ってくるよ」


 そんなやり取りを経て、みんなでシリウス号に乗り込む。ティアーズ達が各々、同行する面々をそれぞれの船室へと案内してくれた。この辺は計画を立てていたので案内もスムーズなものだ。船内各所の水晶板から各々船室への案内が完了したとティアーズからの合図が送られてくる。


「では、そろそろ出発します。浮上して安定航行に入るまでは少し揺れて、転んだりといった可能性がありますので、廊下に出たり立ったりしないようにお願いします」


 伝声管でアナウンスをしつつ、ティアーズの中継で船室前の廊下の様子を見たりして、落ち着いているのを確かめてからシリウス号を浮上させた。

 例によって船内各所に艦橋や外部の様子を見ることのできる水晶板を設置している。

 みんなで集まって見ることができるので、飛行が安定したらそれもアナウンスしていこう。場所についてはティアーズが案内のために待機していてくれるしな。


 この辺は本の読み聞かせ等もあって準備したものでもあるな。それぞれの場所で寛ぎながら話も聞けるし、外の様子を見ることもできる。艦橋に呼んで何かをするには、流石に同行している人数が多すぎるし。


 シリウス号の進路をオルトランド伯爵領に向けつつ、高度、速度が安定したところでアナウンスを行う。船室から出てきた子供達は船内の各所に集まり、外の光景に歓声を上げていた。うん。まだしばらくは景色を見て楽しめるだろう。陸が近ければ景色にもある程度変化があるし、読み聞かせは海を渡るまで待つ、というのがいいか。


 孤児院の子供達の反応を見て、氏族の面々も身に覚えがあるからか、うんうんと頷いていたりするのが微笑ましいというか。


「――というわけで、こちらを出発しました」

『ああ。領地で待っているよ』


 アシュレイが水晶板で連絡を取ると、エリオットも笑顔で答える。カミラとヴェルナーも一緒に映っているな。


 まずはオルトランド伯爵領へ向かい、それからシルヴァトリアへ渡る予定である。ジルボルト侯爵の領地にも立ち寄り、そこで食事などをしてから更に王都へ向けての移動となる。ロミーナも転移門で領地に移動して待ってくれているそうな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 紀行カメラモグラな獣である(記録媒体が水晶なため
[一言] 各部屋にモニターが完備されるとはw 伝声管の出番が激減しそうなw
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