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番外1526 日常の記憶と共に

 みんなや魔法生物組、工房の面々やロミーナ達と一緒に、フォブレスター侯爵領へ向かう。

子供達も揃って移動できるようになったし、シーラやイルムヒルトも復調したからな。こうして滞在先がしっかりしている状態なら一緒に向かえる。


 魔法生物組が一緒なら護衛にもなってくれる。みんなや工房の面々も一緒なので結構な人数での移動になってしまったように思うが……フォブレスター侯爵としては『まだまだ対応できますぞ』と、そう言って笑っていた。


 流石は侯爵家というか。アルバートの顔が広いし、俺との関わりも深いから祈りで沢山人が来ると準備を進めていたというのもあるのだろう。魔法生物組は食事の用意は必要としないから、受け入れるにしても対応が楽というのもある。


「お祈りも頑張ります……!」


 アシュレイがそう言うと、マルレーンも拳を握ってこくこくと頷いていた。現地で祈りということで、二人とも結構気合の入った表情で頷きあっている。

 そんなアシュレイやマルレーンを見て、みんなも微笑ましげにしていた。


「ふふ、みんなも体調が戻りましたからね。オフィーリア様にもお祈りをして頂きましたし、お返しもしていきたいところです」


 グレイスが微笑んで言う。アルバートとオフィーリアにはお互い世話になっているというのもあるしな。

というわけでみんなと共に転移港へと向かい、フォブレスター侯爵家へと飛んだ。


「お待たせしました」

「おお。お待ちしておりましたぞ」

「やあ、テオ君」


 転移の光が収まると、フォブレスター侯爵とアルバートが俺達を迎えてくれる。

 フォブレスター侯爵のところでも魔道具の配置は同じだ。俺達のところやオルトランド伯爵領の時と同じ方法、レイアウトを踏襲すればロゼッタやルシールも対応しやすいからな。母子のいる部屋と待合室とに分かれているのも同じである。


 グレイス達も一緒ということで、ソファーベッド等も置かれ、身体を休めたり子供の様子を見ながら過ごせるように色々準備がなされているな。

「まずは……そうですな。ルシール先生によれば、今ならば娘と話もできるだろうとのことです。浄化の魔道具も設置してありますし、希望なさる方は今のうちに面会を、というのがよさそうですな」

「ありがとうございます」


 オフィーリアとの面会についてはアシュレイとマルレーン、エレナ。それにロミーナやペトラといった普段から世話になっている面々、学舎で交流のある面々が続く。


「今回の面会はこの面々で、かな。負担になっても良くないからね」

「その分、祈りに気合を入れようと思うわ」


 俺の言葉にそう答えるステファニアである。女子会もあってみんな仲は良いが、当人に負担をかけるのは本意ではないからな。面会する人数と時間は最小限に絞る。

代わりに水晶板で軽い顔合わせはできるようにしておく。誰が来ているか分かれば当人の励みにもなるだろうし。


『ああ――。来てくださったのですね』


 顔を合わせたマルレーンがその手を取ると、オフィーリアは優しい笑顔を見せる。マルレーンはこくんと頷いて口を開いた。


『オフィーリア様たちが、無事なように、お祈りしにきました』

『ふふ、嬉しいですわ』


 マルレーンの言葉に、オフィーリアは目を細めて応じる。

 オフィーリアとマルレーンも、結構付き合いが長いらしいからな。アルバートとオフィーリアが婚約するその前からの面識ということで、姉妹に近い部分がある。オフィーリアもまた、マルレーンのことをアルバートと共に心配していたから。

 だから……今日訪問している面々の中でもマルレーンとは特に仲がいい、と言えるだろう。そっと抱擁しあい、頷きあってから離れる。


『皆さんも……とてもうれしく思いますわ』

『オフィーリア様には学舎でも親切にしていただきましたから』

『新しい生活で不安な時に手を差し伸べてくださったのですから、こういう時に何か返す事ができたら、こんなに嬉しいことはありません』


 アシュレイやロミーナが笑顔で応じると、オフィーリアも柔らかく笑って応じていた。


「女性陣は和やかでいいね。僕としてもああいうオフィーリアを見るのは好きだな」


 アルバートがその様子を水晶板越しに見て言う。みんなの面会が終わったら、アルバートも夫婦水入らずで話をするとのことだ。


「アルは大丈夫? 俺達は当人ではないけれど、こういう場面で待つしかできないっていうのは結構大変だから、無理はしないようにね」


 特に、今回は予定日から2日経っているし。その分アルバートもオフィーリアも心配したというのはあっただろう。


「ん……。そうだね。確かに、その辺実感するところはある。ただ、ここのところはオフィーリアと一緒にのんびりさせてもらっているし。テオ君もフォブレスター侯爵も、こうやって気遣ってくれるから。僕としてはありがたく思っているよ」


 アルバートは俺の言葉に少し笑う。「なら良かった」と伝えると、アルバートもそうした感情を噛みしめるかのように目を閉じて応じる。


「我らも祈りを頑張っていこう」

「そうですね。こうやって身体を構築してもらった恩があります」


 頷きあって気炎を上げているマクスウェルやアルクス、ヴィアムスといった面々にもアルバートやオフィーリアは微笑みを見せる。水晶板越しに訪問しているみんなとも顔を見せあい、本格的に動いていく前にアルバートも「オフィーリアと話をしてくるね」と、隣の部屋へと向かった。入れ替わるようにアシュレイ達が待合室に戻ってくる。


「うむ……。娘は幸福者ですな。こんなに沢山の方々に祝福されているのですから」


 フォブレスター侯爵はそう言ってから「アルバート殿下とオフィーリアが話をしている間に」と、今日寝泊まりする部屋への案内等をしてくれた。

 祈りに集中できるよう、宿泊のための客室も待合室のすぐ近くだ。今が夕暮れ時なのでもう少し夜が更けたら休んだりという面々も多くなるが……その分『夜間は交代で祈りをささげよう』と言ってくれる各所の面々もいて心強い。俺はまあ、一晩ぐらいは問題ないので夜通し祈りを行うつもりではあるが。

 そうして割り当てられた部屋に手荷物を置いたりしてから、待合室に戻り、諸々準備を整えていると、アルバートがロゼッタと共に顔を出す。


「それじゃあ、私達も動いていくわ」

「よろしくお願いします」

「僕達も母子の無事を祈っていきたいと思います」


 ロゼッタの言葉にアルバートと俺がそう答える。一礼するとロゼッタも笑みを見せ、部屋へ戻っていく。


 オリヴィア達は生命反応も様子も落ち着いているので……問題ないな。では――始めていこう。クラウディアとマルレーンが祈りの仕草を取り……俺やみんなもそれに続く。アルバートも魔法生物達もみんなで祈りを捧げる。


 目を閉じて思うのは……アルバートとオフィーリアと、タームウィルズで出会った頃のことだ。それからの日常や、ヴァルロス達との戦いでの交流。

 工房に向かえばそこにはアルバート達がいて。学舎から戻ってきたオフィーリアやアシュレイ達を迎え、お茶を飲みながら一緒に魔道具のアイデアを出し合ったり、作戦を相談しあったりといった時間を過ごしてきた。


 うん。ああした時間は良いものだったな。大きくなっていく子供達と一緒にこれからもそうした時間を過ごす事ができたら、それはきっととても楽しいだろうと、そう思う。

 アルバートが苦労してきたことも、知っている。そんなアルバートを信じてオフィーリアが支えてきたことも。並行世界でもそれは同じで、誰かのための役に立ちたいと願い、誰かを助けるために二人は動いていた。

 だから……そんな二人とその子供には幸せになって欲しい。笑っていて欲しいと……そう俺も願う。そうした想いを祈りの中に込めていくのであった。

いつも応援して頂き、誠にありがとうございます!


無事、書籍版境界迷宮と異界の魔術師13巻の発売日を迎える事ができました!


ひとえに関係者各位の皆様、そして何より、読者の皆様の応援のお陰です! 改めて感謝申し上げます!


また、今回も書き下ろしを収録しております。活動報告にてフォルセトとラムリヤのラフイラストも掲載しておりますので、それらも合わせて楽しんで頂けたら幸いです!


今後ともウェブ版、書籍版、コミック版共々頑張っていきたいと思いますので、どうかよろしくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
[一言] 静かな大応援団といったところでしょうかw
[良い点] 獣も灯を灯し亀の甲羅を投げ入れていた
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