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番外1502 侯爵との再会

 シリウス号に乗り込み、みんなが腰かけた船室に入ったのをカドケウスやバロールの五感リンク、ティアーズ達からの中継映像で確認したところで船内アナウンスをして出発だ。


「今から出発するからね。飛行が安定するまで椅子や寝台に座ったり手摺に掴まって、転ばないように」


 アルバートが笑顔になって伝声管で伝えると、艦橋の面々や船内各所の氏族達が頷いていた。船倉付近の通路に立っている面々は――いないようだな。


「それじゃあ行こうか」


 アルファを見て言うと、こくんと頷いてシリウス号がゆっくりと浮上する。ああいったアナウンスはしたが……離着陸の際もシリウス号の船内は静かに進められるからな。オフィーリアも乗せているし上昇下降と加減速も緩やかにしたいというのもある。


 十分な高度に浮上したシリウス号や海の方向に緩やかな速度で進みつつ、北にあるフォブレスター侯爵領に向けての針路を取った。

 フォブレスター侯爵領はタームウィルズとオルトランド伯爵領の間あたりの位置関係なので、このまま海沿いの街道を眺めながら進んで行けば到着する。


 時間をかけて速度と高度を徐々に上げて……やがて十分な速度が乗ったところで頷く。


「うん。もう出歩いても大丈夫だよ」


 そう言うと艦橋の面々も頷き、アルバートも早速伝声管で再度船内にその旨をアナウンスしていた。

 もう大丈夫? というようにミシェルの膝の上に抱かれた使い魔――ヒュプノラクーンのオルトナが視線を向けると、ミシェルもにっこりとした笑顔を見せる。


「ええ。もう大丈夫よ」


 そんな反応にオルトナも嬉しそうに頷き返すと膝から離れて、アルファやラヴィーネ、ハーベスタやアピラシアといった面々に挨拶をしに行っていた。うむ。

 アピラシアの働き蜂達も動けるようになったという事で、早速飲み物を用意してくれる。船倉の面々にもカートでお茶を運んでくれるようだな。


「ありがとう」


 礼を言うと、アピラシアもこくんと応じる。

 移動開始ということでフォブレスター侯爵にも連絡を入れる。


「予定通りに現在移動中です。到着時刻もお伝えしている通りになりそうですが……また直轄地近くまで進んだら連絡を入れますね」

『おお、到着を楽しみにしています』


 水晶板越しにフォブレスター侯爵が笑って応じてくれる。挨拶をしつつジョサイア王子に連絡を取ったり、各所にも連絡を入れておいた。


『順調なようですな。開墾のお手伝いが円滑に進むよう祈っておきましょう』


 と、そんな風に応じてくれるのはミシェルの祖父であるフリッツだ。

 シルン伯爵領の温室と水田、ノーブルリーフ達についてはミシェル不在の間、例によってフリッツが世話をしてくれているとの事で。


「そっちは大丈夫?」

『うむ。細かな事はノーブルリーフ達の方が把握しておるぐらいじゃからな。ノーブルリーフ達も歓迎してくれておるよ』


 ミシェルが尋ねると、フリッツは楽しそうに笑って応じていた。ミシェルとオルトナ不在でも大丈夫、との事で。

 フリッツの背後にいるノーブルリーフ達がオルトナと葉っぱと手を振り合って挨拶をしている。この辺は普段の仲の良さが窺える気がするな。


 シルン伯爵領についても水田の状況は順調なようで。

 シルン伯爵領では試験用水田による稲作やノーブルリーフ農法の収穫量調査や安全性の確認等も進んでいるな。成分分析では安全性は分かっているので、後はそれの実証であるが。


「稲藁を活用してみましたが、あれは良いですね。すき込みに飼料……牛達の食い付きも良いですし、畑の雑草を予防できますし、他にも畜舎の寝床に使ったり……色々と利用方法もあって好評です」


 ミシェルが笑顔で教えてくれる。稲藁については……すき込み――細かく刻んでやることで水田用の肥料として活用できるし、堆肥と合わせて普通に肥料としても使えるので次のシーズンで畑仕事、稲作の補助になるあたりが一石二鳥だ。

 他にも牛の餌になるし、家畜用のベッドにもなる。畑のマルチにもなったりするな。流石に現時点でワラジや畳等を作っているわけではないが、ヒタカと協力してそれらを広めればこちらでも何かしら作られるようになるだろう。


 副産物で畑や家畜にも利益があるし面積あたりの収穫量が多く、収穫物の保存も効きやすいという事で、シルン伯爵領でも興味を示す農民が多くなっているそうだ。


 ノーブルリーフ農法と稲作の相性や水田導入による影響、収穫量や副産物利用の影響、安全性等も確かめると……実験中ではあるが、実証も最終段階といったところか。希望者も増えているし、この調子なら今後水田の規模を広げても問題なさそうではあるかな。


 そうした現状の話は、これから農業のための開墾に向かう氏族達にとっても興味深いものだったようで。船室側にも中継しているという事もあり、みんなミシェルの話に真剣な表情で耳を傾けていた。今の流れだと水田の手伝い、という事にもなるかも知れないな。


 ノーブルリーフ農法や実験水田の現状を聞いたり、アルバートを交えてオフィーリアと循環錬気をしたりしながらもシリウス号は進んでいく。海岸線付近を街道沿いに進んでいるという事もあって、道を行き来する冒険者や行商人といった面々がシリウス号に手を振ったりしていた。


 やがて遠くにフォブレスター侯爵領の直轄地が見えてくる。


「見えてきました。そろそろ到着でしょうか」

『おお。歓迎いたします』


 その旨も水晶板で伝えると、フォブレスター侯爵は快く応じてくれた。飛竜と騎士による迎えを用意しており、外壁の警備にも話は通っているのでそのまま進んでもらって構わないとの事だ。


 高度、速度を落としてゆっくり進んでいくと、飛竜に跨った騎士が外壁から飛び立ってこちらに近付いてくるのが見えた。飛竜の背中に二人ほど乗っているな。


「わたくしの知っている方達ですわ」


 拡大するとオフィーリアが笑顔で教えてくれた。

 というわけで、甲板まで俺達も挨拶に行く。

 オフィーリアは二人とも知り合いだからと、個人用フロートポッドに乗ったままで顔を見せに甲板へ同行してくれる。アルバートとミシェル、それから氏族の代表数名も一緒に挨拶がてら甲板まで向かった。


「侯爵より案内を仰せつかりました。お目にかかれて光栄に存じます」


 顔を合わせると、飛竜を駆る武官が挨拶をしてくる。甲板に降りても大丈夫と伝えると、飛竜と共に降りてきて改めて迎えの2人と自己紹介や挨拶を交わした。


「二人とも元気そうで何よりですわ」

「お嬢様こそお元気そうで、顔を見て安心しました」


 そんな言葉を交わし、侯爵領の二人はアルバートやミシェル、氏族達にも挨拶をする。氏族の面々も丁寧に挨拶を返していた。


「今回の案内役を務めさせていただきますエルケと申します。今回はよろしくお願い致します」


 飛竜に同乗してきた文官の女性がそんな風に挨拶してくる。開拓地にも同行する事になるわけだな。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 そう言葉を返し、シリウス号はフォブレスター侯爵の直轄地へと進んでいく。外壁の警備兵に挨拶をし、街中から手を振って歓迎してくれる領民に手を振り返したりして、そうして誘導に従い、フォブレスター侯爵の屋敷の近くに横付けするようにシリウス号を停泊させる。


「これはアルバート殿下、テオドール公。よくいらして下さいました」


 すぐにフォブレスター侯爵達が笑顔で出迎えに来てくれた。俺達も挨拶を返す。

 オフィーリアにとっては実家でもあるからな。開拓地に出発する前に少しだけのんびりさせてもらう、という事になっている。転送魔法陣もフォブレスター侯爵家の一角に用意する予定だ。フォレスタニアとフォブレスター侯爵家にもそうした場所を用意しておけば開拓村で何か不測の事態が起きても安心というわけだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 獣はモグライダー(ハンググライダー )で狼の後方を滑空している(縄で牽引されてる
[一言] タヌキさんは仕草ひとつで愛嬌がありますねw
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