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番外1478 氏族達と共に

 料理に関してはシーラの祝いへのお返しという事もあって、イルムヒルトも手伝いたいと伝えてきてくれた。だがまあ、今は安静にしていないといけない時期だからな。

 あまり色々手伝わせるわけにもいかない。イルムヒルトの気持ちも分かるので、少し食材を切る、程度で我慢してもらう形になるか。


「フロートポッドで安静にしたまま少し食材を切るぐらい、なら大丈夫かな」

「ええっ。ありがとう、テオドール君」


 俺の返答に嬉しそうに笑うイルムヒルトである。勿論調理なので衛生面は気を遣う必要があるから、フロートポッドを持ち込むのなら浄化の術式、魔道具をきちんと活用してだな。と言っても今は安静にしていなければならない面々や小さな子供達がいるので、衛生面回りは元々きっちり対策してあったりするが。フロートポッドも言うに及ばずだ。


 そんなわけでイルムヒルトもフロートポッドに乗ったままではあるが、楽しそうに料理を手伝ってくれた。中継映像でそれを見ていたシーラも耳と尻尾をぴくぴく反応させて嬉しそうな様子で、平和なものだ。ヴィオレーネに『ん。お母さんの親友がヴィオ誕生のお祝い料理を作ってくれてる』と、話しかけたりしているシーラである。


 さてさて。今回は街で振る舞う料理ではあるが、みんなの昼食も兼ねているし、シーラのお祝いでもあるからな。

 というわけで魚介類をふんだんに使ったスープを用意している。魚の切り身、貝やイカ、エビ……。諸々の具材もたっぷり新鮮なものを使って、スープの量も大鍋に潤沢に、というのが良い。仕込みはスピカとツェベルタを始め、城のみんなも手伝ってくれて進めてくれているので、結構スムーズなものだ。


 というよりお祝いとは言え領主本人やその家族が直接祝いの料理に携わっているのは結構珍しいような気もするが、今更ではあるのでまあ良いだろう。


 スープを用意しているのは街中で振る舞いやすいからというのもある。その分具沢山にして食べ応えもある物にしているので実際の満足度は結構高そうだ。更に魚の串焼きも用意している。


 そうしてみんなも交えて終始和やかな雰囲気で料理は進み、いくつかの大鍋にスープが満たされたものが用意された。


 これらはまあ、街中と城とで振る舞われる形だな。早速ゴーレム達が大型の台車に積んで、スープを運んでいった。


 では……俺もみんなと過ごしつつ、中継映像で話をしたり街中の様子を見せてもらいながら、のんびりとさせてもらうとしよう。




 フォレスタニア境界公家の慶事も一段落という事で、街は何時にも増して賑やかになっているという印象があるな。といっても、まだお祝い事が続くというのはある。

 祝いにしても民間の経済活動が増す方向だし、食材にしても迷宮で調達したりなので、家としてあまり散財しているというわけでもないしな。お祝い事の回数が多くても負担が少ないというのは良い事だ。


『境界公家の奥方様達やお子さん方も全員無事ってことになるわけか』

『いやあ、めでたいねぇ』


 と、酒盛りしているドワーフと獣人の会話が中継映像から聞こえてくる。冒険者や商人、住民達もスープを受け取り、酒を酌み交わして……と、かなり楽しそうな雰囲気だ。

 迷宮探索に行く予定だったがその辺を変更している面々もいるとか。


 スープを配布している広場は……人だかりから離れた場所で、棒二本を逆手持ちして構えをとったりして遊んでいる子供もいるな。あれはシーラの武器や戦い方の影響か。


『強い人達に憧れる気持ちってのは俺も兵士だから分かるが、棒を持って暴れると危ないから気を付けろよ。怪我をしたら境界公や奥方様達も悲しむからな』

『うんっ、分かった!』


 現場にいる兵士がそんな風に忠告して、子供達も頷いて動きが控えめになったりしているな。うむ。カドケウスも現場に派遣していたりするので、何か不測の事態が起こらないように注視はしておこう。


 そうして街中の明るい雰囲気を眺めながら、俺達もスープを含めた食事をさせてもらう。魚介スープは比較的さっぱりとした味付けだが旨味が濃厚で、具もたっぷり入っているという事もあって食べ応えがある。

 食欲をそそる味だ。そこに魚の串焼きも加わるので、満足度は結構高いな。


『ん。これは美味しい』


 祝いの当人であるシーラも満足そうに頷いて、料理に携わったみんなも笑顔を見せていた。


 各国の面々、国内のあちこちからも連絡があって祝福の言葉を受け取り、知り合いや城の面々もお祝いの言葉を伝えに来てくれる。そんな穏やかながらも明るい時間が流れていくのであった。




 さて。そんなわけで境界公家の慶事は一段落だ。

 テスディロスの解呪、それからカミラの予定日が控えているわけだが……。


「俺としてはオルトランド伯爵家の事が落ち着いてからで問題ないと思っているがどうだろうか。伯爵家も今月と聞いているし、テオドールも今月はそちらでの予定があるだろうから」


 今後の予定についての相談をすると、テスディロスからはそんな返答があった。カミラの予定日は今月。オフィーリアは再来月だな。


「その分、魔人全員の解呪完了が遅れてしまうと言うのがあるが……」

「私は問題ありませんぞ」

「そうですね。私もテスディロス殿の意見に異存はありません」

「氏族全体の祝いとなるのはありますが、やはり解呪を受ける方の考えが重要では、というのはありますな」


 テスディロスが少し申し訳なさそうに言うと、ウィンベルグやオルディア、オズグリーヴといった面々は気にする事はない、というように笑って応じていた。

 氏族の面々も異論はないようだ。テスディロスが気兼ねしないタイミングが一番なのではないか、という事で。


「オルトランド伯爵家のお祝いから次の月、更に来月に……と、お祝い事が継続するのであれば、寧ろ丁度良い感じなのではないでしょうか?」


 という意見はエスナトゥーラのものだ。それは一理あるかも知れないな。

 もう少しの間月に一度にお祝いで賑わうぐらいならば、行き来する商人にしても住民にしても、俺達にしても、負担はそこまででもないだろう。経済効果が継続している分には喜ばしい事であるしな。


「俺も異存はない。先に解呪させてもらって感謝しているぐらいだからな。テスディロスの解呪が良いものになれば何よりだ」

「そうですね。慌ただしくなるよりはそちらの方が望ましいかと」


 ゼルベルとルドヴィアが言う。テスディロスが目を閉じて一礼すると氏族の面々も穏やかな笑みを見せる。


「それじゃあ――解呪とそのお祝いに関しては来月で決まりだね。今の内に周知と準備を進めておくよ」


 そう言うと、テスディロスも頷く。

 とは言え、それも来月の話である。

 まず今月……カミラの予定日に合わせてロゼッタとルシールも動いていくから、俺もそれに合わせてサポートできるようにしていかないとな。

 オフィーリアの事もあるが……ロゼッタとルシールには長期間助けてもらっているから、個人的にもお礼をしたい。オフィーリアに関しても一段落したら、二人にお礼ができるように何かしていきたいところだ。


 んー……。そうだな。そのへん、エリオットとアルバートにも相談してみるとしよう。カミラ、オフィーリアの経過も母子共に順調だし……先々の事を考えて予定を立てていくのは悪い事ではあるまい。


 というわけで、水晶板を通してエリオットとアルバートに連絡を入れる。


『良いですね。お二人には親身にしていただいて、私達としても助かっていますから』

『そうだね。何かしらお礼を、というのは良いんじゃないかな。第二子、第三子と続いた時にもお願いしたいからね』


 二人はそう言って笑顔を見せる。そうだな。それでは、こちらも決定という事で良いだろう。

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[一言] ヒーローごっこならぬ有名冒険者ごっこというw
[良い点] 男獣、至高の「チュール」を猫耳に差し出した
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