表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2235/2811

番外1454 訓練設備構築

 それから数日。日々の仕事と共にみんなと一緒にのんびり過ごす傍らで……迷宮核での作業と訓練設備の調整を中心に仕事を進め、訓練設備を構築できるところまで持っていった。迷宮核での作業というのは思考を迷宮核側がサポートして処理まで落とし込んでくれるからかなりスピーディーに進むな。


 VRに関するノウハウも……並行世界の俺が地球側に干渉したお陰で知識があったからな。それも利用できそうなところは利用して構築したので、一から作るよりはかなり効率が良くなっているはずだ。


 さて。実際に訓練設備を構築する場所についてだが、フォレスタニア城の外縁部を少し拡張する、という事になるな。魔法建築と違って迷宮核を用いた拡張という事になる。


「ん。そろそろ構築に移れそうだ」

『ああ。こちらも避難誘導と警備の準備はできている』


 そうカドケウスに言ってくるのはテスディロスだ。五感リンクとカドケウスで迷宮核外部とのやり取りをしているわけだな。

 迷宮のシステムを借りての構築は一気に進めてしまえるが……その分変化が急激なので現場の下準備が大切だ。


 構築する現場を事前に通告し、その周辺に人が入らないようにしてから処理を実行に移す、というわけだな。


 迷宮核がフォレスタニア城の一角に光のフレームを構築している、という状態だ。フレーム内部は勿論、周辺にも人が近付かないようにしてから処理を実行していく、というわけだな。


 城の外縁部に拡張するのは、設備そのものの警備しやすさを考慮してのものだ。

 というのも、使われている技術を秘匿する必要があるし、利用中の防御を万全にする必要があると言った事情から一般に全解放できるものではないからな。


 景久が襲われた時のような事は防がなければならないし……VR技術は言うなれば仮想空間での感覚、体験を現実と誤認させるものなので、悪用する気になればできてしまう。


 例えばターゲットが眠っている間にVRマシンに繋いで、現実そっくりの仮想空間を構築して偽の現実で騙したり、冤罪を作り出したり、だとか。

 だから日本でもVRの技術向上に伴い、色々と危険性が考慮された上で規制もかかっていたわけだ。


 だから訓練設備の安全策については色々とそれらを踏まえているところがある。設備はスタンドアローンで、必要に応じて迷宮核側から接続路を構築すれば干渉は可能ではあるが、あちら側から迷宮核側への干渉はできないし、設備に使われている術式の改造、拡張にしても制限がかかっている。仮想空間を現実だと誤認させないように防止策も組んであるな。


 そんなわけで諸々設備構築の準備も整ったので、光のフレームを展開し、工事の予告をして……今現在はテスディロス達が現場の周囲に人がいないか確認し、警備してくれている、という状態だな。


 城の外縁部、少し湖の方に迫り出すように独立した塔を作るという感じだ。城の外縁部の湖も城の敷地という事で一般の立ち入りは元々制限されているからな。フォレスタニアに来ている水棲種族や湖底の設備にも影響がでない。


 と……バロールを頭に乗せたティールが湖面から顔を出す。バロールは頷くように目蓋をゆっくり閉じて、ティールも大丈夫、と声を上げてフリッパーをテスディロス達に振ってくる。


「湖底も、現場周辺には誰もいなかったみたいだね」


 ティールとバロールが生命反応感知で一帯をぐるっと見てきたが問題はなかった。湖底まで塔の基部が届くように構築されるが、元々立ち入りが制限されている部分だし、特に問題はなさそうだ。


『では、我らでこのまま現場周辺を見ておきましょう。私が湖底部分を担当します』

「うん。ありがとう。バロールが支援する。オズグリーヴ達が移動したら湖底から構築作業を始めるよ」


 オズグリーヴの言葉に頷く。俺の反応にオズグリーヴが応じて、ティールやバロールと共に湖に飛び込んで行った。


 ややあって、湖面にオズグリーヴが煙の能力で形成した手のようなものが飛び出てくる。問題ない、というようにサムズアップで合図を送ってきた。バロールとの五感リンクでも位置取りに問題はないな。


 では――迷宮核側で処理を実行していこう。湖上と湖底側、それぞれにカドケウスとバロールが処理開始の合図をして、構築が開始される。

 湖底から伸びた光のフレーム……塔の基礎となる部分が光を放ち、その中で下から上へと延びるように構築がなされていく。光の帯がフレームに沿って建物を造っているような光景だ。


 エスナトゥーラやルドヴィア、ゼルベルといった面々はそれらを見て感心したような表情で声を上げる。氏族の面々も城の一角から見学をして歓声を上げていた。


『これが迷宮核による構築ですか。これはまた……見応えがありますね』

『テオドール公の魔法建築も見てみたいな』


 エスナトゥーラの言葉にルドヴィアが頷く。


『ふふ、いずれ機会があればきっと見せて下さいますよ』


 そんな風にグレイスが応じると、氏族の面々は頷いていた。

 そうこうしている間にも構築はどんどん進んでいて。湖底から湖面、湖上へと光が伸びていき……その光の帯が通り過ぎたところにはフォレスタニア城と揃えた建築様式の塔が構築されていた。

 城側から渡り廊下が架けられて行き来できる形だな。施設そのものは結界で守られて内部に入るには城内から移動するしかない。施設への外部からの攻撃は結界によって守られるという寸法だ。


 外部や渡り廊下ができあがったら内部の構築だ。実際の心臓部は施設の基幹となる魔法処理を行う部分だ。その心臓部を囲うように個人用のポッドが構築される。ポッドは利用者を守るためのものだな。


 塔のそれ以外の部分は結界を維持する魔法陣の描かれた部屋や、警備を行うティアーズ達が待機する詰め所といった防衛機能を維持するための施設。それに休憩所や調理場、食堂にトイレといった生活に必要な区画といったところだ。


 工房で作ってもらったホルンの属性を付与した魔石も迷宮核に委ねてあり……構築と同時にフォレスタニア側に転送されて施設に組みこまれている。やがて一通り迷宮核の処理が終わる。


「大丈夫そうだね。構築作業は一通り終わったから、迷宮核側からの残りの作業も進めていくよ。実際の動作試験は作った人間が自分で行うのが筋だと思うから、少し待っていて欲しい」

『分かりました。一先ず警備の方は切り上げても大丈夫、という事ですね』

「うん。手伝ってくれてありがとう」


 オルディアに笑って応じてから迷宮核側でできる安全確認を行っていく。やがてそれらの作業も終わり、護衛役を担ってくれていたヴィンクル、ユイと共に迷宮核からフォレスタニアへと移動した。


「ただいま」

「おかえりなさい、テオドール様」

「ええ、おかえり」


 エレナやクラウディア、みんなが笑顔で迎えてくれる。現場を見やるとしっかりと塔と、城とを繋ぐ渡り廊下も出来上がっていて、警備をしていたテスディロス達も俺を迎えてくれた。


「ん。みんなもありがとう」

「いや。警備と言っても実際は見ていたぐらいのものだしな」


 そう言って笑うテスディロスやオズグリーヴ達である。湖底を見ていてくれていたオズグリーヴはと言えば水上に戻って来ていて、バロールの術式で塗れた髪や服を乾かしていたところのようだ。


「それじゃあ、みんなで施設内部を見に行ってみようか。利用は安全性の確認が終わってからだけれど、休憩したり喫食したりできる設備も作ったからね。感想は聞きたいな」

「うんっ、楽しみ」


 俺の言葉にユイがそう言って、ヴィンクルが声を上げる。そんな反応にみんなも微笑ましそうに表情を緩めるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 転生の切っ掛けに関連するだけあってセキュリティは厳重です。
[良い点] 獣が睡眠中VR技術を駆使した中の人は糖将コルリスやらんかスレイヤーにフェードインしてサイキッ○・惨を仕出かしている
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ