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番外1452 オフィーリアとカミラの訪問

「――これはカミラ様。お加減如何ですか?」

「ああ。オフィーリア様。ふふ、体調は良いですよ。今日はよろしくお願い致します」


 城を訪問してきたカミラとオフィーリアが和やかに挨拶をする。

 オフィーリアはあと2月程先だが、カミラはシーラと同様、今月が予定日だからな。カミラの予定日はシーラよりも少し後、だろうか。

 それぞれエリオット、アルバートと共にフォレスタニア城に訪問してきてロゼッタやルシールの診察を受けたり循環錬気をしているという関係もあって、今日も今日とて一緒にやってきた、というわけである。


 カミラとオフィーリアも、小型のフロートポッドを使っている。フロートポッドに乗ったまま乗り降りできるように送迎用の馬車を改造したものも用意しているので、街中の移動の際も目立ったり注目を集める事がない、という寸法だ。


 乗り降りや建物内の移動に際しての負担もかなり少ないな。


「この度はおめでとうございます。奥方様達の状況が無事に推移していて喜ばしい事です」

「本当にね。良い事だし、後に続く僕達としてもこの状況は安心できる」


 エリオットが穏やかな表情で一礼して、アルバートも笑顔を見せる。


「二人とも……ありがとう。カミラ様とオフィーリア様も同じように無事に続くように、万全な態勢を整えたいところだね」


 俺も笑顔で訪問してきた面々を迎える。まずはロゼッタとルシールの問診という事で、カミラとオフィーリアを城の一角に案内。

 俺達は俺達で近くの一室でお茶を飲んで話をし、問診が終わるまで待つのが恒例となっているな。その後で循環錬気を行っていく、というのが大体の流れであるが。


 カミラとオフィーリアについては――目に見える生命反応も力強くて安心だ。定期的にやってきてエリオット、アルバートと共に循環錬気をしているが、経過も順調なようで俺としても安心している。


 アシュレイとマルレーンもにこにこと上機嫌そうにお茶の準備等してくれた。エリオットとアルバートはそれぞれにとって兄だし、カミラやオフィーリアとも仲が良いからな。二人としてもこうして定期的に訪問してきてくれる状況は喜ばしいというわけだ。


「問診以外の部分で、二人から見て変わった事や気付いたことはないかな?」


 そう尋ねると、アルバートは顎に手をやって思案するような様子を見せる。


「んー。そうだね。オフィーリアはセオレムで安静にしたり、工房にフロートポッドで同行してのんびりしている事が多いけれど……水晶板のお陰で、僕が仕事している時もオフィーリアとお互い顔を見たり話ができるからね。こっちが仕事に集中している時は読書をしたり刺繍をしたり、ビオラ達と談笑したりしていて楽しそうにみえるよ。健康上の話っていう事なら、元気そうにしているね」


 アルバートがにっこり笑って教えてくれる。グレイス達も工房との中継でオフィーリアと談笑したり一緒に刺繍をしていたりするからな。マルレーンもこくこくと頷いていた。


「カミラは――そうですね。循環錬気で身体能力の水準が維持されるという話を聞いてかなり喜んでいましたよ。当人としても鍛練に使える時間が少なくなっているのに鈍っている感じがしないと言っていましたからね」


 エリオットはと言えば、カミラについてそう教えてくれる。

 カミラはエリオットがまだシルン男爵領にいた少年時代、一緒に剣技を磨いた事がある。エリオットにとってカミラは言うなれば婚約者であり、郷里の姉弟子であり、幼馴染という立ち位置の女性だった。

 その後もカミラは剣技の研鑽は続けていたそうではあるが、まあ……身体機能の維持に関しては当人にしてみると喜ばしい事だろう。エリオットも魔法剣士であるから……子供が大きくなってきたら親子で剣の修業をしたりするのかも知れないな。


 そうしているとロゼッタとルシールによる問診も終わったようで、カミラとオフィーリアが戻ってくる。グレイス達も体調を診たりしていたから一緒に姿を見せた。


「おかえり」

「ええ、ただいま戻りましたわ」

「どうだったかな?」

「ふふ、問題無しで順調ね」


 アルバートがオフィーリアと、エリオットがカミラとそれぞれ笑顔で言葉を交わす。お互い朗らかでのんびりとした空気だ。


「ん、私達も問題なかった。勿論、子供達も健康」


 と、シーラがサムズアップしながら教えてくれる。うむ。


「なら良かった。もう少しゆっくりしたら循環錬気をしていこうか」


 みんなも腰を落ち着けて、そこにお茶を淹れていく。一息ついている間に、これからの予定について少し話をする。


「経過は問題ないようだし、かねてからの話通りに進めていくのが良いかなと思っているけれど、どうかな」

「予定日一週間前になったら、ロゼッタ先生とルシール先生の滞在に移る、という話でしたね」

「うん。その前に状況が動くようなら、早めに対応する、と」


 カミラの出産に際しロゼッタとルシールがオルトランド伯爵領に少しの間滞在する形だな。カミラの予定日までにはシーラの出産は済んで……体調等も落ち着いているだろうと予想されるので、そうした対応もできるだろうというわけだ。


 もしシーラやその子供、グレイス達やオリヴィア達の誰かが不調だったらロゼッタかルシールのどちらかがこちらに残るということになるが。


 エリオットとカミラがフォレスタニアに滞在するというのも考えたが……確かに設備や人員が万全とは言え、やはり領地の人達としては自分達の土地での領主家の慶事を待っているというのはあるだろう。一番に祝いたいだろうしな。


 転移門や転送術式があるのでオルトランド伯爵家に滞在というよりは……向こうに詰める、という方が正確だな。街中を移動する感覚と時間でタームウィルズ、フォレスタニア、オルトランド伯爵領を行き来できるわけだし。


 アルバートとオフィーリアについてはまだ先の話ではあるが、二人に関しては元々タームウィルズで暮らしているから、予定日が近付いてきたらフォレスタニア城で過ごしてもらうというのが安心だろうと、その方向で話が進んでいる。


 カミラについて話を戻すと……俺も術式で補助できるのでオルトランド伯爵領に水晶板や魔道具、転送魔法陣を設置して何時でも駆けつけられるように準備を整えたり、アシスタント役となるティアーズ達を予めあちらに派遣してオルトランド伯爵領の家臣達にも慣れてもらったりと諸々準備を進めている。


 順調に推移するならみんなが祈りに駆けつけてくれたように、俺達も当日にはあちらに顔を出す、という事になるだろうな。


 ティアーズ達についてはオルトランド伯爵家の武官、文官達にも面通しして挨拶を済ませているという事だ。お辞儀をするティアーズ達に伯爵領の面々からも笑顔が漏れていたとの事である。


 一先ずは問題なさそうだな。そうやって必要な連絡事項や打ち合わせを済ませてから、オリヴィアやルフィナ、アイオルト、エーデルワイス、ロメリアの記録媒体の映像を見てもらったりして。


「可愛らしいですわね……わたくしも子供に会えるのが楽しみになってきますわ」

「はい。本当に……」


 と頷き合うオフィーリアとカミラと、それを見て微笑ましそうに柔らかな表情を浮かべているアルバートとエリオットである。


 さてさて。では、このまま循環錬気を進めていくか。ロゼッタとルシールの診断では問題ないとのことだし、魔力の整調と生命力の増強をしておけば諸々安心だ。

 二人が終わったらシーラとその子、グレイス達とオリヴィア達と順番に進めていこうと思う。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 獣は猫耳の為に鯨漁に出掛けた
[一言] 何故か思い浮かんだのが時代劇の剣○商売というw
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