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番外1451 ラミアの子と猫獣人の子と

「ラミアの子は、一人で動けるようになるまでが早いので、そこには注意が必要ですね。アルケニーやケンタウロスの子もそこは同じであったりしますが」


 そう教えてくれたのはヘルヴォルテだ。ロメリア誕生に際してみんなもお祝いの言葉を伝えに来てくれたが、そうした中で色々とラミアや他の種族の子供に関する話題も出てくる。クラウディアやヘルヴォルテ、迷宮村の住民からの情報は色々ありがたい。


 当人であるロメリアはと言えば……今はお腹もいっぱいになって安らかに寝息を立てている。ラミアは少し寒さに弱いので毛布を掛けてあるが、フォレスタニアの気温や湿度は安定しているからな。イルムヒルトも温度感知ができるので問題ない温度、と見ているようだ。


 毛布の端から少しだけはみ出している尻尾の先がゆっくりと揺れていて中々に微笑ましい。どんな夢を見ているのやらというところだが。


「人化の術を使っていない場合は……比較的不安定な二足歩行じゃないからね。その辺は納得ではある」


 はいはいや掴まり立ちといった過程を経る必要がない。ラミアに関して言うなら、蛇の半身は……安定して移動できる印象があるし、確かに一人で動けるまでは早いだろう。その分目が離せなくなるのも早いが、そこはそれだ。


「その時は私もみんなと協力して手伝うね!」


 と、やる気を見せているセラフィナである。その言葉にラヴィーネやエクレール、コルリスといった使い魔組やアルファ、ベリウスにティアーズやハイダー、シーカーといった面々もこくんと頷いていたりして。育児も手伝ってくれるというのはありがたい話だ。

 みんなも子供と触れ合えることを楽しみにしている様子だからモチベーションは高かったりするが、城の面々や使い魔組、魔法生物組も手伝ってくれるとのことで心強い事である。


「半人型の種族は……比較的早熟な傾向があるように思うわ。ハーピーはそうでもなくて、育児の時間はもっとゆっくりしている印象だけれど」

「完全に動物型の魔物はもっと早いというか、生まれた時から移動に支障はないとは聞きますが……私は迷宮外の魔物の生態をつぶさに見ているわけではありませんから、そのあたりは伝聞でしかありませんね」


 俺の言葉にクラウディアとヘルヴォルテが言うと、みんなも感心したような表情を見せる。

 蛇も蜘蛛も、それに馬だって移動に関してはほとんど生まれてすぐ動けるようになるからな。ラミア、アルケニー、ケンタウロスといった半人型の種族は生まれたてで自力移動できる程には早くない、という話だが……そのへんはやはり半人の部分故、だろうか?


 ハーピーに関しては……元々鳥も子育てに時間をかけるから何となく分かる気もする。ティール達、マギアペンギンもそうだな。子供達を集めて集団生活するからまた生活様式が普通の鳥とも違うけれど。


「まあ、そうね。野生動物は移動に支障があると生死に直結するでしょうし」


 ローズマリーも静かに頷いていた。


「後は……少し大きくなってきたら、人の歩き方や走り方等を教えていくのが良いわね。訓練せずとも本能的に理解している部分もあるのが不思議なものだけれど、訓練した方が習熟も早いものね。特に、跳んだり走ったりは違ってくるわ」

「私も――人化の術を覚えてから歩き方や走り方とか……教えてもらった記憶が少しある……かも」


 クラウディアが目を閉じて言うと、イルムヒルトが首を傾げて小さな頃の記憶を思い出すような仕草を見せていた。


「迷宮村の住民は外で生きていく必要性が出てくる場合があったものね。そういう訓練をする必要があったのも納得だわ」


 ステファニアも顎に手をやりながら頷く。そうだな。時折感情抑制の術式と相性の悪い者がいて……その場合は迷宮魔物から守るために外に出される事になる。友好的な魔物種族が殊更迫害されているというわけではないが、外で生きるならば人化の術は覚えていた方が何かと便利というのはあるし。


 ともあれロメリアの人化の術で慣れてもらう訓練に限らず、オリヴィア達もはいはいや掴まり立ちでちょっとしたトレーニング的な事もする事になるかな。まあ、それももうちょっとだけ先の話だし、あまり焦る必要もあるまい。


 訓練や教育は大事だし真剣に考える必要のある事ではあるけれど、親も子もそこで悩んで息苦しくなってしまっては本末転倒だからな。みんなで話し合いながら悩みや不安を共有、軽減しつつ前に進んでいければそれでいい、と思っている。


 こういう方針は冒険者稼業や今の仕事に絡んだ事と同じだな。領主や代行者としての仕事は迅速な解決を求められる事もあるから、そうとばかりは言っていられない状況もあるのは事実ではあるが、緊急性を要しないならば、というところか。


 そう言った話をすると、みんなも微笑んで頷いていた。


「ん。その方針、好き」

「ふふ、そうですね」


 シーラがそう言うとグレイスもにこにこしながら応じて、マルレーンもこくこくと首を縦に振る。


「子育ての常識も種族が違えば異なりますが……相談するにしても先人の知恵があるというのは、やはり有難いですね」


 エレナが微笑む。今後も迷宮村の住民達にノウハウを聞きつつ、進めていきたいな。


「そうだね。ロメリアに関してはデルフィロさんとフラージアさんも交えて色々相談する事になりそうだ」

「獣人の赤ちゃんの子育てに関してはどうなのでしょうか?」

「ん。獣人の子は割と丈夫だし成長も早い、とは言われてる」

「タームウィルズにも獣人はいるから孤児院にも知識がある人はいるし、エインフェウス王国の人からも情報が聞けるものね」


 アシュレイが尋ねると、シーラとイルムヒルトが頷き合って答える。

 ただし、獣人の場合は姿や性質の幅が千差万別で、一概にこう、とは言えない部分があるそうな。

 獣としての形質が姿に色濃く出ている場合は被毛なので暑さに弱いが寒さに強いといった事はあるし、逆もまた然りで人の形質が強い場合には暑さに強いが寒さに弱い……というのが気を付ける部分として分かりやすいところだ。


 室温の管理であるとか、着せる衣服等に関して細やかに見ていく必要があるだろう。


 獣人の子は身体が丈夫と言っても、それは比較すればという話で……小さい内はやはり赤ん坊だからな。フォレスタニアに関して言うなら気温や湿度が安定しているので両対応ではあるが、油断して良いわけではないし。

 追々子供達の成長に合わせて外出の機会だって増えてくるから、そうした部分は念頭に入れておく必要があるだろう。


 子供の形質がどちら寄りになるかと言えば、その辺は生まれてみるまで分からないと言うのが正直なところだ。両親の姿がどちらも人寄りの獣人であるとか、人と獣人の場合でも、獣寄りの獣人の子、というケースもあるようだからな。

 細かな予想はつかないが、シーラの場合は両親が猫系獣人で、本人もそうなので、生まれてくる子も獣人の形質が現れるならば猫の系統だろう、という部分だけは間違いなさそうなところではある。


 その辺の細やかな獣人の形質ごとの子育てのノウハウについては孤児院とエインフェウスの知り合いに連絡を取って更に情報を得ておく、というのが良さそうだ。


 どうであれ俺の場合は衣服や靴等も光球の術で当人に合うように最適化したりできるので、衣服や靴であるとか……既に用意した物も無駄にはならないし、知識についても第二子、第三子という可能性も考えると色々蓄えておいて損にはなるまい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 獣は尻尾で鞭入れられている
[一言] 目が離せないとしてもテオ氏の環境なら対応策は二重三重にできそうで不安はあまり感じられないのですがw
[一言]  今からもう仕込む計画をたt(螺旋衝波を撃ち込まれ、錐揉みしながら吹き飛ぶ)
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