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番外1450 歌姫への祝福

「私達は交代で休みを取らせていただきましたが、テオドール様は大丈夫ですか?」

「そうですね。普段から色々お仕事をなさっていますし、ご無理をなさらないでくださいね」


 俺も起きて動いている時間が結構長くなってきたからな。迷宮村のみんなに少し心配されてしまったので、仮眠を取らせてもらおう。


「ありがとう。それじゃあ、後の事は任せても良いかな?」


「はい。お任せ下さい」


 アルケニーのクレアが微笑み、胸のあたりに手をやって一礼する。では、少し眠らせてもらい、街中への伝達等々が終わったら起きるように手筈を整えておく。


 決められた時間に自分だけに聞こえる脳内アラームを鳴らして起きる術式、というのも作ってみた。話し声等で眠っている子供を起こさないような術式を考えてみた結果の産物というか。細かく設定できるのでスケジュールを忘れないようにするには便利だな。


 そんなわけでアラームの術式を自分にかけて、入浴等々を済ませたら後は眠るだけだ。料理の仕込み等々は済んでいるのでみんなに任せておけば安心だろう。




 そうして、アラームの術式で目を覚ます。目を覚ましたのも予定の時間通りというところだ。

 昨日はみんな休憩を挟んで先に寝床に入ったりしていたから先に起き出していたが、俺が遅くまで起きていたのを知っていたから、敢えて起こさないようにのんびり休ませてくれたらしい。


「ん。おはよう」

「はい、おはようございます」

「おはようございます、テオドール様」

「ええ、おはよう」


 身支度を整えて顔を出すとみんなも笑顔で迎えてくれる。みんなとも朝の挨拶を交わして……子供達の様子も見せてもらう。

 オリヴィア、ルフィナとアイオルト、エーデルワイス。それに……そこに新顔として加わったロメリアである。

 ロメリアはまだ誕生したばかりで、細かく診る必要があるから、ロゼッタと共に母さんやセラフィナが近くに待機してくれていたようだ。


「おはようございます。お加減は如何ですか?」

「イルムヒルトとロメリアに関しては……そうね。現状で体調も安定しているし、問題ないと思っているわ。細やかに対応する必要はあるけれど、生命反応も力強いものだし。私に関してなら……さっき起きたばかりだから、心配はいらないわね」


 笑顔で応じてくれるロゼッタである。ああ。それは何よりだ。

 イルムヒルトも丁度先程起きたところという事で……ロメリアの側で寝台に身体を横たえ、その顔を見てにこにことしている。毛布の位置を直してあげたりと、とても幸せそうにしていてこちらも表情が緩むというか。


「うん。イルムヒルトも元気そうで良かった」

「ええ。体調は悪くないわ」


 と、にこにことしているイルムヒルトである。


「ふふ。こうして孫の顔を見ていられるのは幸せね」

「家妖精としても本懐かな」


 母さんとセラフィナも顔を見合わせて頷き合う。母さんやリヴェイラは冥精が出産に立ち会うのは縁起が良くない、と生まれてくるまでは距離を置いているからな。母さんとしては実際に顔を合わせられてとても嬉しそうだ。


 セラフィナは……家妖精なのでとりついている家が繁栄する事は自分の力の増大にも繋がるそうで。心なしか髪や肌の色ツヤが良くなっているような気がする。魔力に関しては……明らかに増大しているな。

 家妖精と言えばキキーモラやシルキーもそうだが子守のプロでもあるので、こうして子供部屋で見てくれているのは心強いというか。


「先程、伝令がお城から出て街中に向かいました。タームウィルズ側でも動いてくれているようですね」

「ん。そうだね。みんなもお祝いしてくれてるし、今日は街中の様子を見せてもらいながらお城でのんびりしようか」


 エレナの言葉にそう答えると、みんなも笑顔で頷く。イルムヒルトとロメリアは安静にしている必要があるから、祝ってもらう本人が出歩けないというところはあるが、中継映像を見るぐらいなら負担も少なめだしな。


 というわけで、みんなと共に腰を落ち着けて街中の映像を見せてもらう。


『おお。イルムヒルト様のお子も無事誕生ですか。それは何よりです』

『色々苦労なさったそうだものね。同じ冒険者出身の立場としては、応援したいところだわ』


 通達を聞いて喜んでいるのは冒険者達である。境界劇場の公演の影響もあって、イルムヒルトは街中での人気があるな。イルムヒルト、ユスティア、ドミニクの歌声や演奏を聞いて感動した、演出が良かったと、お祝いの言葉と共に公演の話で盛り上がっている冒険者達である。


 イルムヒルトのタームウィルズでの経緯にしても割と知られているようだ。当人や迷宮村の住民、友好的な魔物種族の立ち位置が良くなるように、月神殿や冒険者ギルドが周知してくれているところもある。


 人気があるのは冒険者達だけに限った話ではなく、フォレスタニアもタームウィルズの住民、兵士達、訪問している商人達に至るまでといったところだ。

 そんなわけで告知がなされると、あちこちで喜びに沸き立っていた。酒と料理も昼食時に合わせてフォレスタニアでも振る舞われる。


 今回用意した料理はビーフトマトシチューだ。迷宮産のバタリングオックスという牛系の魔物の肉を用いて、トマトベースのシチューに人参やポテト、玉ねぎといった具材が入った……割とボリュームのあるシチューかも知れない。

 現場で温め直して振る舞う事ができるので、こういう時に振る舞う料理としてはシチューやスープは色々と都合が良い。ポテトは煮崩れしないように事前に一旦茹でる等の下処理を施してある。


 これに加えて串焼きを一緒に振る舞っている。特製のタレを塗ってその場で焼いて配っているので、香りに誘われたのか広場の人だかりもでき始めている様子だ。


 昼食の時間も近いので俺達のところにも料理が運ばれてくる。串焼きとシチューに加えてサラダやパンもついているな。イルムヒルトは量を軽めに。ブラッドソーセージを一品加えて血液の摂取もお手軽にしている。


 そうして街中が盛り上がっている様子を眺めつつ、のんびり食事をしていると、各所からもお祝いの連絡が入る。


『母子共に無事で何よりだ。イルムヒルトの体調が落ち着いたら訪問したいところではあるな』


 エルドレーネ女王がそう言ってくる。セイレーンやハーピー、ネレイド族や魚人族といった面々からもお祝いに行きたいとの事で……。ユスティアとドミニクとの交流もそうだが、友好的な魔物種族との絆を示す事にも繋がっている部分はあるな。


 まあ、俺達は俺達でその辺はあまり意識せずに仲良く暮らしているが、外から見るとそういう視点もある、という事だ。グランティオス王国の面々やハーピー、ネレイド族、深みの魚人族との友好に繋がるのなら俺達としても喜ばしいな。


「訪問を楽しみにしています」


 エルドレーネ女王達にそう笑って応じる。


『お姉ちゃん、おめでとう……!』

『無事で良かった……!』

「うん。ありがとう」


 笑顔で歓迎してくれる孤児院の子供達に、イルムヒルトは嬉しそうに微笑んでいた。眠っているロメリアの姿を見て、子供達も沸き立っている。

 そんなイルムヒルトや孤児院の子供達の様子を見てシーラがうんうんと頷いていた。


「ん。次は私の番」


 そうして静かに気合を入れている様子のシーラであるが。耳と尻尾も気合を示すような反応を見せているな。


 シーラの予定日もそれほど遠くはないからな。今月中という事を考えると、しっかりと準備して臨みたいところだ。みんなの健康状態に注意しつつ、きっちり進めていくとしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] トマトでシチューとは予想外でしたw 酸味がきいてサッパリしたテイストになっていると想像。 パンとの相性も良さそうだし、多めに作っておけばリゾットにもできそうです。
[良い点] 蚯蚓っぽい肉入り麺に砂っぽい加薬 草を入れたパスタ風のをイルムに 猫耳にはたい焼き風の海鮮お好み風イカ焼きを披露した獣
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