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番外1426 ネレイド達の祝福

 グロウフォニカからバルフォア侯爵達がやってくる事になったのは、それから少ししてからの事だ。

 グレイスとオリヴィアは出産から少し時間が経って経過も良好だ。ステファニアとルフィナ、アイオルト、それにローズマリーとエーデルワイスの体調も良く、無理をしなければ短時間の面会も大丈夫だろうと、ロゼッタとルシールから揃って太鼓判も押してもらえた、というわけだ。循環錬気で調べた印象でも生命反応、魔力反応は良いもので、俺としては安心できる。


 まあ……両親や弟とその婚約者、伯父夫婦と、肉親や身内だから許可が下りたというのはあるが。


 肉親と言えば……冥府上層との中継で、フラムスティード伯爵夫妻こと、エルリッヒ、ティアナとも話をしているな。グレイスのご両親だ。オリヴィアの顔を見ると、随分と喜んでくれた。


『いやはや。孫娘の顔を見られるとは、ね。世の中何があるか分からないものだ』

『オリヴィアちゃんは……ああ。可愛いわね』


 と、エルリッヒとティアナは寄り添いながらオリヴィアの顔を覗き込んで目尻を下げている。


「ふふ。こうしてお父さんとお母さんにも喜んで貰えるのは……嬉しいです」


 グレイスもそんな風に言ってオリヴィアの顔を良く見ようとモニターを覗き込んでいるエルリッヒとティアナに穏やかな微笑みを見せていた。


「こうしてみると、オリヴィアちゃんもフラムスティード伯爵夫妻と似てくるかも知れないわね」

「ああ。それは……確かに」


 微笑ましそうにそれを眺める母さんの言葉に頷く。グレイスは両親それぞれの面影があるからな。オリヴィアもグレイスの面影を引き継いでいるところがあるから……成長すればきっと似てくるだろうと思う。

 母さんの言葉にグレイスはにこにことしながら頷く。そうだな。グレイスからしたらオリヴィアにエルリッヒとティアナの面影があるというのは嬉しいだろう。


「メイナードの遺した血玉が行き着いた先、か。今の光景を見れば、メイナードもきっと喜ぶだろう」


 パルテニアラもそんなやり取りに満足そうに頷いていた。吸血鬼の起源を知る者としては、今の状況は喜ばしいという事だな。


「外に語るのが難しい歴史ではありましたが……ベシュメルクにとってメイナード卿は間違いなく英雄ですからね」


 そんなパルテニアラの言葉に、エレナも感じ入るように目を閉じて言う。パルテニアラと共に暴君と戦った英雄か。

 そうして……家族みんなとの穏やかで優しい時間が過ぎて行くのであった。




「この度はおめでとうございます」


 それから数日。メルヴィン王とグラディス王妃、バルフォア侯爵とヘルフリート王子、カティア、モルガン、アストレア達やソロンといった面々がフォレスタニアを訪問してくる。


「ありがとうございます」


 ヘルフリート王子の祝福の言葉に俺も笑って礼を言う。

 モルガンやソロンの訪問にティール達マギアペンギンやキュテリアも嬉しそうに出迎えていた。海の民仲間だからネレイド族やパラソルオクトと会えるのは嬉しいのだろう。


「はっは。これは熱烈な歓迎ぶりですな」


 と、ソロンが楽しそうに笑ってマギアペンギンの雛と触腕とフリッパーで握手を交わしていた。

 ソロン達の楽しそうな様子にティールが声を上げて。そんな光景に笑いつつ、訪問してきたみんなを城内へ案内する。


「ヘルフリート殿下は、試しにネレイドの里に滞在してみた、という事ですね。どうでしたか?」

「海の中という事でどうなるのかと構えていましたが……何というか想像していた以上に快適でしたよ。何だか、ネレイド達の祖霊達から加護を得ているようで……魔道具の補助を得なくても里の中なら違和感なく過ごせるようです。家の中に空気を入れてもらうこともできますし、里の外に出る時は魔道具もありますから、諸々不便なく過ごせていますね」


 なるほど。ネレイドの祖霊達から加護を得られるというのはヘルフリート王子としても助かるだろう。効率化した水中呼吸の魔道具も用意したが、そちらも水中にいる時は肌身離さず携帯しているので安心、との事だ。


「うふふ。ヘルフリートが里を気に入ってくれて良かったわ」


 ヘルフリート王子の反応にカティアもにこにことしている。

 食生活の面ではやはり水産物が多くなるが……グランティオスからの応援もあって、調理用具や環境の整備もできており、ネレイド族としても助かっているという事であった。


 ヘルフリート王子とカティアに関してはエルドレーネ女王としても応援してくれているらしい。ネレイド族の秘密もあるのであまり世に喧伝できる事ではないが陸と海の民が手を取り合う事はできるのだと、サンダリオ卿とドルシアの例と同じように示してくれているから。エルドレーネ女王としてはそう受け取っていると語ってくれた。


 そうだな。サンダリオとの直接の繋がりはないが、マルティネス家はバルフォア侯爵家に組み込まれているから……アストレアを始めとしたドルシアの娘達とローズマリーは少し遠いながらも親戚という事になる。そうした面々がエーデルワイスの生誕を祝いに来てくれたというのは嬉しいことだな。


 そんな話をしながら城の一角に案内する。そこにはローズマリーとエーデルワイスが待っていた。ローズマリーはソファに身体を落ち着かせ、エーデルワイスは……ベビーベッドに横になっていたが、今は目を覚ましているようだ。


「おお、ローズマリー。経過も良いと聞いて安心したぞ。と、そのままでも良いぞ。無理はせぬようにな」

「顔色も良さそうね。エーデルワイスの血色も良いようだわ」

「ええ。お陰様で、かしら。沢山の人にエーデルワイスの祝福に来て貰えたことは嬉しいわ」


 ローズマリーはメルヴィン王とグラディス王妃の言葉に少し笑って、立ち上がって一礼すると、また腰を落ち着ける。


「ああ……。これは可愛らしいわね」

「本当。きっと美人になるわ……!」


 アストレア達はエーデルワイスを目にして盛り上がっているようだ。


「ネレイド族は……総じて子供好きですから」


 モルガンは言ってにっこりと笑う。そうした言葉にローズマリーは羽扇で表情を隠しつつも頷いているが。


「姉上もエーデルワイスも元気そうで良かった」

「そういうお前こそ元気そうで何よりね。ネレイドの里の暮らしにも馴染めそうという事だし……良かったのではないかしら」


 ローズマリーは目を閉じて少し笑う。そんな姉の言葉に笑顔で応じるヘルフリート王子である。姉弟の仲も良いもののようで、喜ばしい事である。

 そうしてヘルフリート王子はカティアと共にローズマリーに挨拶した後、エーデルワイスの顔を一緒に見てお互いの顔を見合わせて笑顔になっていた。そんな弟とその婚約者の姿に静かに頷くローズマリーである。


 ネレイド族としては体調が良いのであればオリヴィアやルフィナ、アイオルトとも挨拶をしていきたいとの事で。


「そうですね。折角来て下さったのですし、みんなも喜ぶと思います」


 そう答えるとネレイド族は期待感のこもった表情で嬉しそうに顔を見合わせていた。

 オリヴィア、ルフィナ、アイオルトの顔も見たい、と言う流れはまあ……予想していたというか。グレイスとステファニアも隣室で待っていて、ベビーベッドで眠っているオリヴィアを見て小声で「ああ。可愛らしいわ」「本当……」と笑顔になったり、ルフィナとアイオルトを見て喜びの声を上げていた。


「双子かぁ……並んでいると絵になるわね」

「ふふ、そうですね」


 ネレイド族は女性所帯という事もあって、子供好きというのは間違いないようだ。子供達を起こしたり驚かせたりしないように声も控えめに盛り上がっている様子であった。うん。俺としてもそうやって喜んでくれるというのは嬉しいな。

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― 新着の感想 ―
[一言] メイナード氏と連絡が取れるといいかもしれませんね。
[良い点] 「はっは。これは熱烈な可愛がりですな」  と、ソロンが楽しそうに笑って畜ペンの雛と触腕とフリッパーで組み手を交わしていた。
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