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番外1423 街角からの喜びを

「こん、にちは、エーデルワイスちゃん」

『ん。エーデルワイス……よろしくね』

『初めまして、エーデルワイスちゃん』


 マルレーンが嬉しそうに笑って声をかけ、シーラとイルムヒルトがエーデルワイスに挨拶をする。それに続いてみんなもエーデルワイスに挨拶をしていく。

 エーデルワイスは――花や植物由来の名前ではあるな。日本語に訳すなら高貴な白という意味になるらしいが。薬草として使われる事もある、という話も聞いた事があるな。


「良いものね……。こうして喜んでくれる人が、身近にいてくれるというのは」


 ローズマリーはそう言って穏やかな表情で目を細めていた。エーデルワイスがいるから表情を隠したりはしていない。今は感謝や喜びをみんなに伝える事やエーデルワイスとの時間を大切にしたい、という事なのだろう。

 魔道具で浄化を徹底していると言ってもあまり長居はできない。例によってエーデルワイスの映像記録だけは撮っておいて、後でメルヴィン王やグラディス王妃、バルフォア侯爵といった面々に見せられるようにしておく。


 初対面の挨拶も終わったところでみんなも一旦退出していき、そうしてローズマリー、エーデルワイスとも循環錬気を行う。ローズマリーもエーデルワイスも……生命反応、魔力の流れ、共々問題がない。そこから増強していくと、ローズマリーは目を閉じて微笑む。エーデルワイスも循環錬気を受け……ローズマリーの腕の中で寝息を立て始めた。


「……疲れていると普段よりも心地が良いわね。エーデルワイスの生命力や魔力も……こうしてしっかりとしたものを感じられるのは嬉しいわ」

「うん。俺としても二人の反応で安心できた」


 そう言って頷き合う。ローズマリーもエーデルワイスもしばらく安静にしなければならないし……早朝から動いていてローズマリーも大変だっただろう。


「だから……今はマリーもゆっくり身体を休めて欲しい」


 循環錬気で生命力をしっかりと増強した上でそう伝える。


「ええ、テオドール。また後で会いましょう」

「ああ。また後でね」


 穏やかな微笑みを見せるローズマリーに笑って頷いて。それから立ち上がり、ロゼッタとルシールに一礼する。


「では……後の事をよろしくお願いします。お二方には感謝しています。お疲れでしたら仰ってください」

「ふふ。任せておいて」

「お気遣い痛み入ります」


 ロゼッタとルシールはそんな風に笑って応じてくれた。

 そうして二人に頷いて、部屋を出た。一段落したことに安堵するが……まずは――そうだな。ローズマリーとエーデルワイス、母子共に無事と各所に連絡しなければな。

 エーデルワイスの生誕についても街に告知できるだろう。予定日の明け方から状況が動いたという事もあり、今日の夜には酒と料理も振る舞えるはずだ。




「おめでとう、テオ君。姉上にもおめでとうと伝えておいて貰えると嬉しいな」

「ああ。それはしっかりと伝えておく」


 通信室に場所を移して、各所に連絡を入れつつアルバートとも話をする。アルバートは喜びを露わにしつつ、オフィーリアとも笑顔で言葉を交わしていた。


「奥方様達が皆順調で喜ばしい事ですわ。わたくしも安心しておりますし、カミラ様も同じ事を仰っていました」

「うん。ロゼッタ先生とルシール先生も腕の確かな人達だし、テオ君も頼れるからね」


 オフィーリアも身重ではあるが、今は安定期に入っているし、アルバートも安心だろう。というわけで折角訪問してきてくれているというのあるので、アルバートを交えて循環錬気も行ってしまう。アルバートとオフィーリアが向かい合って座って手を繋ぎ、俺がアルバートの肩に手を置くようにして循環錬気を進めるといった具合だな。


「んー。実際経由している僕も調子が良い状態が続いてるからね。オフィーリアもだけど、僕も助かってるというか」

「うふふ。そういう意味でも安心ですわね」


 そんなやり取りを交わす二人に、オフィーリアと仲の良いアシュレイとマルレーンもにこにこと機嫌が良さそうだ。エーデルワイスが無事に生まれたからというのもあって、通信室は和やかな雰囲気である。


『ステファニアに続いて母子ともに無事、か。実に喜ばしい事だ』

『体調が安定した頃合いでそちらに伺いたいところです』


 水晶板の向こうでメルヴィン王がこちらの光景に目を閉じて笑い、バルフォア侯爵も同意しながらそう意向を伝えてきた。


「そうですね。経過が順調であれば――」


 メルヴィン王達と今後の予定について話をする。ローズマリーとエーデルワイスの経過が安定しているならという前提で、実際に面会できそうな頃合いについて見積もり、メルヴィン王とグラディス王妃、バルフォア侯爵の予定を合わせる。

 そうして必要な話も纏まったので、エーデルワイスの映像記録も媒体から再生して見てもらう。


『髪の色はローズマリーに似ておるな、うむ』

『ふふ。エーデルワイスと言うのですね。良い名です』


 メルヴィン王、グラディス王妃、バルフォア侯爵が表情を緩め、アルバートやオフィーリアやフォレスタニア城や街のみんな、各国の面々と……まだ実際に顔を見ていない者達もエーデルワイスの映像を見て微笑ましそうにしていた。実際に顔を合わせるのを楽しみにしているようで、予定を決めるやり取りも楽しそうなものであるが。


「おめでとうございます、テオドール様」

『喜ばしい事です』


 直接、或いは水晶板の向こうからと、あちこちから祝福の言葉も受け取る。お礼を言っている間に街にも通達がいっているようだ。フォレストバードの面々がシーカーを同行させており、中継映像で街中の反応を見せてくれる。


『おお……。ステファニア様に続いてローズマリー様も……!』

『ローズマリー様は堂々としていて憧れているところがあるわ。エーデルワイス姫もさぞかしお綺麗に育つのでしょうね』


 そんな風に喜びを見せる冒険者達である。エーデルワイスの名前を聞いて笑顔になったりと、なかなかに盛り上がっている様子だ。ローズマリー自身も……以前の振る舞いによる評判だけではなく、当人を尊敬しているといった声も結構聞けたな。俺と共にあちこちで戦った事も情報として周知されているので、その辺でイメージが上がっているところもあるのだろうけれど。こうして街角からも祝福して貰えているというのは嬉しいな。


『夜から酒と料理も振る舞われる予定ですよ』

『とりあえず広場に用意されるから、頃合いを見て顔を出すと良いかもな』


 フォレストバードのルシアンやロビンが言うと、冒険者達も顔を見合わせて笑顔になっていた。

 エーデルワイス誕生の報を受けて喜んでいるのは冒険者達だけではなく、商人達や住民達もだな。もっとも商人達はやはり商機と見ているのか、冒険者達や住民達の喜び方に加えて気合も入っているように見受けられる。

 フォレスタニアだけでなくタームウィルズでもそれは同じで……王城セオレムから通達がなされて、あちこちから喜びと祝福の声を聞かせてもらった。うむ。


 祝福の宴というならフォレスタニア城でもだな。今現在、街中で振る舞われる料理と共に城での祝宴用の料理が作られているところだ。


 食材に関しては……テスディロス達が訓練がてら迷宮で確保してきてくれたもので、術式で凍らせたものを準備してあった。もう少ししたらそれらの素材を使ったものが出来上がってくると思うので、今日の夕食は中々に豪勢な事になりそうだ。


 そうしている内にも通信室に色んな面々が顔を見せて祝いの言葉を掛けに来てくれる。使用人のみんな。武官、文官。氏族の面々、動物組や魔法生物の面々と……うん。賑やかで結構な事だ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 獣はジオラマアルプス(中は栗のクリームらしい)を団扇にプレゼントしていた
[一言] 抗紫外線の効用も見込まれることからスキンケア関連に利用されるようになってきたという話もあるそうですね。
[一言]  エーデルワイス様も、母君の山脈をきっと引き継いでo(螺旋衝波で吹き飛ばされ、開かれた窓から外の湖に豪快にダイブ)
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