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番外1416 親子への祝福を

 ゼルベルとリュドミラ、トリスディートの語らいは良いものだったようで。ティアーズと共に部屋から出てきたゼルベルとリュドミラは穏やかな雰囲気でこんな事もあったなと、トリスディートとの思い出話をしていた。


「母さんとお話ができて……嬉しかったわ」

「あいつは、変わらないな」


 リュドミラの言葉にゼルベルは微笑ましそうに目を細める。それから……神殿の祭壇の間で待っていた俺を認めると、親子で笑顔を向けてきた。


「改めて、礼を言う。その、なんだ。胸のつかえが取れたような気がする」

「私達の呪いが解けたことが嬉しいって。母さん自身は冥府に来た時に呪いが解けて、のんびりと暮らしてるから心配するなって言っていたわ」

「……ん。それなら良かった」


 本人を少し傍から見たり、二人から話を聞いた印象では、トリスディートはかなり竹を割ったようなというか、質実剛健な性格なようだしな。俺としてもゼルベルとリュドミラの反応は喜ばしいものだ。


 トリスディートの話によると、自分だけ冥府で呪いが解けている分、逆にゼルベルとリュドミラの事が心配だったそうで。今回二人の呪いが解けて嬉しいのだと言う。


「だから改めて、テオドール公にも礼を伝えて欲しいと言っていた」


 ゼルベルがそう教えてくれる。


「ああ。確かにその言葉は受け取った」


 そう頷いて……ゼルベルとリュドミラを連れてフォレスタニア城へと戻る。

 カドケウスの五感リンクでフォレスタニア城の状況は見ているが、宴会の準備は万端整っているようだ。神殿を出るタイミングで今から戻ると伝えると、料理を運んだりと、氏族の面々が慌ただしく動いていた。

 俺達が橋を渡り、城の内部――入口のホールに入ったところで氏族の面々がゼルベルとリュドミラを待っていて、顔を見ると拍手で迎えてくれる。


「おお、戻ってきたようだな」

「お待ちしていましたぞ、ゼルベル殿、リュドミラ殿」

「実はテオドール公やリュドミラ殿に協力してもらい、我らで祝いの席を用意したのです」


 と、氏族長達が笑顔で言う。


「それはまた……俺ははぐれだったからこんなに盛大に祝われるとは思ってなかったが」

「ふふ。儀式の前にもお伝えしましたが、ゼルベル殿には感謝しているのです」

「うむ。ゼルベル殿は自分達の為と仰っていましたが、それはそれとして我らの今の状況に繋がっている事も事実ですからな」


 そんな風に言う氏族長達の言葉にゼルベルは目を閉じて所在なさげに頬を掻いたりしていた。ゼルベルの反応にリュドミラはにこにこと微笑んだりしているが。


「ふふ。父さんの解呪の祝いだから、料理については私も早起きして仕込みを手伝ったのよ」

「なるほどな。そいつは楽しみだ」


 リュドミラの言葉にゼルベルはにかっと笑う。

 そうして、みんなで場所を中庭に移すと、そこには宴会場が作られていた。料理も並んで……テスディロス達や氏族の面々、城のみんなといった顔触れがそこに集まって、ゼルベルとリュドミラを温かく迎える。


「おめでとうございます……!」

「解呪おめでとう……!」

「ああ――。ありがとう」


 ゼルベルは噛み締めるように笑って、リュドミラと共に席に着く。宴会前の口上という事で、開会の挨拶をさせてもらった。


「みんなの解呪が順調に進んでいることを喜ばしく思っている。こうやってみんなが用意してくれた料理を味わったり催し物を見られるというのも、役得ではあるかな。主賓であるゼルベルとリュドミラに限らず、出席したみんなに楽しんでいって貰えると嬉しい」


 そう言うと拍手が起こり……そうして杯を掲げ「これからの平穏に!」と言えば、みんなもそれに続く。そうして乾杯してから宴が始まった。

 個別の宴ではあるから例によって規模自体は大きくないが、それでも解呪が順調に進んでいる事は喜ばしいとみんなも思っているのだろう。頑張って料理を用意してくれた。


 ゼルベルの料理の好みに関しては印象通りで結構分かりやすい。肉料理が好きとの事なので、今回はハンバーグのレシピを、リュドミラを始めとする料理班に伝えている。


 朝早くから起き出し、儀式が始まる前まで、一生懸命料理の仕込みをしていたリュドミラの姿が印象的だ。解呪儀式の対象であるゼルベルだけでなく、俺や手伝ってくれるみんなに対する感謝もあるからと……そう言っていた。


 そんなわけでリュドミラが作ったものは他のハンバーグに比べて分かりやすくするために一回り程大判だ。ゼルベルのところだけでなく俺のところやグレイス達のところにもそうした物が運ばれていて、リュドミラは上機嫌そうににこにことしている。

 というわけで白米、ハンバーグ、トマトのスープ、サラダといった品々がテーブルに並ぶ。


「これは――美味いな」


 ゼルベルがハンバーグを口にしてゆっくりと味わってから言う。

 ふんわりとしていてナイフで切ると肉汁が溢れて来る。……ソースともよく合っているし、付け合せの人参とポテトも良い塩梅だな。

 事前に小ぶりなハンバーグを何度か作って実食して味を良くしようとしていたようだからな。リュドミラ達の本気度や丁寧に作っている事が伝わってくると言うか。


『ふんわりとしていて、美味しいです』

『ん。これは良い』


 エレナの言葉にシーラもこくんと頷いて、みんなも笑顔になっていた。


 氏族達の作ったレシピも同じもので……分量等は揃えられているのでこちらも良い出来のようで。お代わりもあるという事でゼルベルは「こっちも美味いな」と笑って二皿目を平らげていたようだ。

 そうやって食事が進んでいき一段落すると今度は催し物という事で。楽器演奏やらは流石に新しくやってきた氏族の面々は練度が足りないとの事だが、歌に関しては練習したらしい。


 イルムヒルトが水晶板越しにリュートを演奏し、それに合わせてリュドミラ達が歌声を披露する。歌に関しても結構練習しているのが窺えるな。ドミニクとユスティアが指導の手伝いに来ていたからか音程も正確だしハーモニーも綺麗だ。ゼルベルは解呪したばかりという事もあって、終始機嫌が良さそうにそうした歌声にも耳を傾けている様子であった。


 テスディロス達も一緒に食事をとったりしながらそうした光景を微笑ましそうに眺めていた。


「いや。めでたい事です。いよいよ残すはテスディロス殿一人、というところまで来ましたな」

「そうだな。まあ……テオドールはゼルベルの測定と装備品の調整もあるし、他にも色々と仕事のある忙しい身だから、ゆっくりと進めて貰えればと思っているが」


 ウィンベルグの言葉にテスディロスは静かに頷いて言う。


「ああ。そう言って貰えるのは助かるよ。まあ、俺としても全員の解呪をしっかり完遂したいと思っていたから、なるべく早い段階で進めていきたいところではあるけれど」


 テスディロスを解呪するとまた新しい段階に入るからな。解呪の祝いもこうした内々の祝いではなく公的な発表と共にという事になるから、規模も大きなものとなり、それ相応の準備も整えなければならない。ローズマリーの予定日より後、場合によってはイルムヒルトとシーラの予定日の後……になってくるかな。


 そうした考えを説明すると、テスディロスは「それで構わない」と笑って応じてくる。

 俺にとっても……最後の解呪はヴァルロスやベリスティオとの約束において重要な位置付けだからな。和解と共存のためにするべき事は今後もずっと続くから通過点ではあるのだが……節目としての意味合いは大きい。その事を内外に通知して、お祝いする事の意味もそうだ。


 いずれにしてもまた明日からやるべき事を順番に、丁寧に進めていくとしよう。まずはゼルベルの能力測定、装備品の調整からだな。

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― 新着の感想 ―
[一言] のんびり暮らしているということで剣客○売っぽい隠居生活のイメージが湧いてきましたw 性別も年齢も違いますがw
[良い点] 土竜への祝福を と書かれた石板を前に置き横臥した獣がチラ目で見ている
[気になる点] 個別の宴ではあるから例によって規模自体は大きくないが、それでも解呪が順調に進んでいる事はゼルベルの料理の好みに関しては印象通りで結構分かりやすい。 ? なんとなくしか解りませんです。1…
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