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番外1413 ゼルベルへの祝福を

 というわけで造船所に移動してエスナトゥーラの身体能力と特殊能力の測定を行った。

 この辺の測定は慣れたもので、正確な測定を行うべきポイントも押さえているので割合スムーズに進んでいく。


 エスナトゥーラは瘴気を鞭として形成し、そこからの打撃によって相手に効率的に瘴気を叩き込んで干渉させるというのを得意としていた。

 そして、エスナトゥーラの解呪後の魔力特性については……水の治癒魔法と同等のレベル、近い性質で肉体に干渉できる事が分かっている。


 離れた距離から触れた時と同レベルで魔力を叩き込む事のできる鞭はエスナトゥーラの能力と性質に合った武器の選択だと言えるだろう。


 更に装備品に呪法効果を付与し、魔力的な繋がりを強くすると共に呪法防御も付与。遠隔で発動した時の効果向上と共に、対呪法能力も向上させている。この点はオルディアもそうだな。なのでエスナトゥーラもオルディアも、鎧や石のような無機物、魔法生物にもしっかりとした干渉力を発揮する事が可能となっている。


 そんなわけでゴーレム相手に能力を行使してもらったが、鞭で魔力を叩き込んでからの干渉はかなり強力だ。温度を奪って凍結させるだけでなく、魔力そのものの動きも低下させる事で行動や術式の発動、術そのものの動きも阻害するので、解呪前の瘴気と似た形での能力行使が可能なようだ。


 瘴気侵食そのものによる肉体へのダメージが無くなっている、というのはあるか。叩き込まれた箇所から凍ってしまえばダメージは大きかろうが、能力を発動させなくとも悪影響があった分はなくなった。

 そうした分析結果を伝えるとエスナトゥーラは納得したように頷いていた。


「私から使用した結果は大きく変わらずとも、細かく見ていくと変化している、というわけですね。瘴気侵食がないのであれば……相手を制圧する際に、予後を気にしなくても良くなったとは言えますが」

「そうだね。魔力を叩き込んでも能力を発動させなければそれで済んでしまうし、発動させても侵食が無くなった分、その点で意図しない損傷が相手に残る事はなくなった」

「私個人としては以前より魔力が扱いやすく感じているので、喜ばしい変化ですね。侵食が無くなった分、拡散させた魔力を扱いやすく感じています」


 その言葉に頷き、更に細かく能力の測定を行っていく。魔力の出力、増幅率等、基本的なところで大凡9割という水準は変わらずのようで。

 干渉能力についてはエスナトゥーラとオルディアに関しては重要な項目なのでこの辺はしっかり調べていかないといけない。ゴーレムを停止させるまでの時間で計測しているが……こちらも良い数字が出ているようで安心した。


「瘴気鞭と違って状況に応じて武器の形状を変えられるわけではなくなりはしましたが……その分は魔道具の扱いの習熟や鍛練等で補っていきたいものです」

「必要になりそうな術があって、適性も合うなら魔道具だけじゃなく実際に術を教えるっていうのも良いかもね。これはエスナトゥーラに限らずの話だけれど」


 エスナトゥーラの言葉にそう言うと、オルディアやオズグリーヴ共々頷いていた。鍛練に対して前向きというか、気合が入っているという印象だな。


 そのまま測定を続けていく。装飾品型魔道具による機動性といった身体能力面でも良い結果が出て、まあこの辺は何よりと言えよう。


「そうなると次は俺の順番、ってことになるか。俺としては今の状況に満足しているし、納得もしているから、都合の良い時で構わない」


 そうして一通り計測が終わったところで、ゼルベルが顎に手をやって言う。


「ああ。それは助かるな」

「それは何よりだ」


 俺の返答にゼルベルが笑って応じる。


「装備品に関しては――解呪後の解析を行えばすぐ魔石部分も仕上がるかな?」

「うん。術式を渡してもらえば後は刻んで組み込むだけだからね。すぐに渡せるようになると思う」


 アルバートが頷く。

 ゼルベルはリュドミラのデザインした装備品を気に入っていた様子だし、その辺は早めに進めてやりたいところではあるな。ゼルベルに関しては……当人はあまり気にしていないようだがはぐれ魔人だった者達、それに各氏族の面々からもあの状況で率先して結集の話を前に進める協力をしてくれたとか、覚醒能力を皆の前で披露してくれたという事もあり、結構人気があったりする。


 強者に一目を置くという魔人達従来の価値観は……畏怖から尊敬という形に少し変わっているようだが、いい意味で残っているようにも思うな。

 ゼルベル自身が研鑽を重要視しているという事もあって、解呪後の鍛練や勉強を重視してくれる風潮があるのもゼルベルとのやり取りがあったから、というのはある。


 そういう点、俺自身もゼルベルには助けられているしな。

 ゼルベルは自分自身の事には無頓着でもあるから、俺としても氏族の面々としてもお礼を兼ねてきちんとゼルベルの解呪を祝いたいと思っている。

 リュドミラもそういう話をすると同意してくれたので、話を進められるからと言って今すぐ解呪を進めるのではなく、しっかりと準備してから臨みたい、というのはある。


 ゼルベルがこちらの都合に合わせてくれるというのは助かるので……そうだな。ローズマリーの予定日までには解呪をして、装備品の方も前に進めておく、というのが良さそうだ。


 というわけで、予定や調整もあるので解呪も数日待って欲しいと伝えると、ゼルベルは「問題ない」と応じてくれる。

 リュドミラはと言えば……こちらと視線が合うと、ゼルベルから見えない位置で軽く一礼してきて、嬉しそうな笑みを浮かべつつラムベリアやエスナトゥーラ達と頷き合っていた。


 まあ、そうだな。解呪の祝いを進められるというのはリュドミラにしてみれば喜ばしい事だろう。親子仲も良好そうだし、氏族長達もゼルベルに好印象なのが見て取れるので結構な事である。




 さて。その後氏族長達にも確認をとってみたが、解呪儀式の日程に合わせてゼルベルの祝いを進めるという事で話が纏まった。

 料理や歌など、氏族達の間ではそれぞれに興味のあるものが違っていたりするが……その分各々の興味のある分野では上達していたりするからな。それに合わせて準備や催し等々を各々担当するとの事だ。食材等はこっちで用意するし、上手くスケジュールを組むので存分に進めて貰いたいところである。


「では……ゼルベルさんのお祝いの話も纏まったのですね。リュドミラさんも喜んでいるのではないでしょうか」


 フォレスタニア城上層の居住区画に戻ってそうした経過について話をすると、グレイスがそう言って、みんなも笑顔になっていた。


「氏族間の交流や協力にも繋がっていて、俺としても応援したいというか。氏族達がベリオンドーラに結集した時、ゼルベルにはかなり協力して貰ったからね。俺もそうだけど、氏族長達としてもゼルベルの解呪は祝ってやりたいと思っているみたいだ」


 特にゼルベルは自分の事には無頓着というか後回しにしているところがあるしな。リュドミラの身の安全を優先しているから分からなくもないが、周囲もゼルベルやリュドミラを大切に思っているというのはゼルベル本人に伝えたいところだ。


 お祝いがここの所続いてはいるが、まあ、解呪の祝いについては全員を解呪するまでは個々のささやかなものではあるし、食材の調達等は迷宮からだったり経済効果が出ていたりするので、境界公家としての経済的な負担は少なめだな。

 文官達も誕生のお祝いに関しては領内が潤って喜ばしいとほくほくしながら報告書を上げて来てくれたし、このまま進めていって大丈夫そうである。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 獣もマワシ…着けて確認作業に参加した
[一言] ゼルベルの武器ですが、ナックルダスターもあると緊急時の即応性が上がるかなと思いましたw
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