番外1407 喜びの報
「もう入室して大丈夫ですよ」
ルシールが顔を出してそう言って、五感リンクでステファニアから指示を受けたのか、コルリスも窓枠から顔を覗かせてこくこくと頷く。
「ありがとうございます」
ルシールに礼を言ってコルリスに笑って手を振り、浄化の術式をしっかりと使ってからステファニアの待っている部屋に入る。子供達……双子は――産湯も使ってお包みに包まれ、ステファニアの腕の中にいた。
ステファニアは俺の顔を見ると、にっこりと笑う。疲れているようだが、生命反応の輝きに陰りはない。腕に抱かれている子供達も小さな身体ながら生命反応の輝きは強いもので。魔力もかなり高いな。
「ステフも子供達も……無事で良かった。みんなよく頑張ったね」
「ふふっ。ありがとう、テオドール」
俺の言葉に、ステファニアが嬉しそうに目を細める。
「姉と弟……男女の双子ね」
ロゼッタがそう教えてくれる。男女の双子。つまり二卵性双生児か。
「髪の色は二人ともステファニア譲りだね」
「ええ。そうみたい。母上にも似ているわね。男の子の方が少し髪の色合いも濃い、かしら」
ステファニアは柔らかな産毛にそっと触れて笑顔を見せる。
「ふふ、可愛らしいですね」
「ん。良い……」
みんなも少しの間の面会という事で浄化の魔道具を使って入室する。グレイスが言うとシーラもしみじみと頷いてみんなも笑顔になっていた。
「名前を決めないとね。女の子の方は、ルフィナかな」
「男の子の方はアイオルト、が良いわ」
俺の言葉にステファニアが笑顔を見せて頷く。
名前は……男女どの組み合わせでも大丈夫なようにと、事前に話をしていくつか考えていたのだ。後は実際に顔を見てしっくりきたものを、という名付け方だな。
どちらも紫色というか青色というか。その辺を由来や語源とした名前だ。ルピナスとアイオライトで花と鉱石という違いはあるが。
「ルフィナと、アイオルトだね。うん。初めまして」
名前が決まると一層可愛らしく感じるというか。
「ルフィナ、アイオルト。二人とも、よろしくね」
「初めまして、ルフィナ、アイオルト」
「ふふ。オリヴィアお姉ちゃんとも初めましてね」
クラウディアが笑顔を向けて、グレイスもオリヴィアと対面させるようにしながらルフィナとアイオルトに挨拶をして、その光景にイルムヒルトが肩を震わせる。
「双子か。これはまた……オリヴィアとも並んでいると尚の事可愛らしいものね」
「ルフィナとアイオルト……」
ローズマリーも静かに頷いて、マルレーンも双子の顔を覗き込んで名前を呼び、にこにこしている。
「初めまして。ルフィナ、アイオルト」
「ふふ。全員無事で、本当に良かったです」
エレナとアシュレイが揃って挨拶をする。
「本当に……おめでとう。ステフ」
「おめでとうございます、ステファニア様」
「ありがとう、アドリアーナ。それに、リサ様も」
アドリアーナ姫と母さんも顔を出して、ステファニアやルフィナ、アイオルトの顔を見て笑顔で祝福の言葉をかけていた。
「お二方ともありがとうございました。ステファニアも子供達も無事で……嬉しく思っています。これからも、どうかよろしくお願いします」
そうしたやり取りを見守っていたロゼッタとルシールにお礼を言うと、二人はこちらに向き直って笑顔を見せる。
「こうしてみんなが喜んでいるところを見るのは嬉しいものね。疲れも吹き飛ぶわ」
「ええ。本当に。こちらこそよろしくお願いします」
さてさて……。朝一番で連絡は入れるにしても、明け方に中継映像でというのもなんだし、出産直後なので負担はかけられないから時間は取れない。
メルヴィン王やジョサイア王子、ミレーネ王妃にデボニス大公もそうだが……ゲオルグを始めとしてステファニアと交流のある武官文官も多いし、カルセドネとシトリア、スピカとツェベルタも自分達と同じ双子という事でかなり二人の顔を見るのを楽しみにしているからな。きちんと記録媒体で二人の顔の映像も残しておこう。
記録媒体で二人の顔と、ステファニアの笑顔を記録しつつ、循環錬気で母子3人、生命力の補強をしていく。
「……ああ。疲れが溶けていくみたいで心地が良いわ」
ステファニアが循環錬気の感覚に微笑み、ルフィナとアイオルトもくすぐったさがあるのか、少し身じろぎしていたが、不快そうには見えないな。うん。
生命反応も……ヴァンパイアのクォーターであるオリヴィア程ではないが、中々に力強い印象だ。ステファニアも生命反応の強さ、魔力の流れ共に正常で、循環錬気を行うと割と安心できるところがある。
その事を伝えると、ステファニアも安心したというように笑顔を見せる。
「良かった。ルフィナとアイオルトも元気そうね」
「ん。ステフもね」
「うふふ」
俺の言葉にステファニアは少し笑う。そうして循環錬気が終わったところで一旦俺達は退出させてもらう。ルフィナやアイオルトの顔はもっとのんびり見ておきたかったが、母子の負担にならない程度にしておかないといけないしな。これから毎日顔を見られるのだし、今日のところは我慢しておかないと。
「おお……おめでとうございます!」
「ふうむ。母子共に健康というのが何より素晴らしい事じゃな」
双子もステファニアも元気そうという事でゲオルグや武官文官達、お祖父さん達も喜びに沸く。
「おめでとうございます……!」
「おめでとうございます、テオドール様!」
「うん。ありがとう……!」
迷宮村の住民達や氏族達の祝福の言葉に、笑顔でお礼を伝える。
シルヴァトリアとの人脈があるステファニアだからな。その子供達にも色々と期待されているところがある。
そうやって城内に連絡を回したりしている内に、時間帯も良い頃合いになってきて。水晶板にメルヴィン王やミレーネ王妃、ジョサイア王子といった面々が顔を出す。
『ステファニアも子供達も無事と聞いた……! いや、喜ばしい事だ……!』
「ありがとうございます。あまり無理はさせられないので、一先ず記録媒体で映像を残してきました」
祝福の言葉に礼を返しつつ、記録した映像を見てもらう。
「右の子が姉のルフィナ。左の子が弟のアイオルトです。双子ですが姉弟という事になりますね」
『ほうほう。良い名よな。いやはや、あどけないものよ』
と、孫の映像に表情を緩めているメルヴィン王である。
『一先ずはそうだね。顔を見に行くのはもう少し日数が経ってからが良いだろうと話をしていた』
『住民への告知はする予定ではあるがな』
ジョサイア王子の言葉を首肯してそう補足するメルヴィン王である。
「そうですね。お祝いの準備はフォレスタニアでも進めています。もう少ししたら街中にも連絡が回るかなと」
『ふふ。賑やかになりそうで結構な事です。ステファニアと孫達に会える日を楽しみにしていますよ』
ミレーネ王妃もそう言って、上機嫌な笑顔を見せた。
家族だからな。ヴェルドガル王家の人達も嬉しそうで何よりだ。そうして、シルヴァトリアのエベルバート王や各国の面々にも連絡を回す。祈りの力を届けてくれたからな。きちんとお礼も言っておきたい。
というわけで各所にステファニアとルフィナ、アイオルト、共々元気だと伝えてお礼も言うと、みんな笑顔で祝福の言葉を返してくれた。やはりみんな双子という事で母子の心配をしていたらしい。その分喜びもひとしおといったところだ。
そうしていると街中にも伝達がいって、冒険者達が顔を見合わせて喜びの表情を浮かべ合ったり、快哉の声を上げていた。うん……。俺も嬉しいな。オリヴィアとルフィナとアイオルトと……3人揃ったところを思い出すと表情が緩むというか。




