番外1404 王家の集い
ステファニア、ローズマリーの両名の予定日を控えて――メルヴィン王、ミレーネ王妃、グラディス王妃、それにジョサイア王子、ヘルフリート王子、デボニス大公にグロウフォニカ王国のバルフォア侯爵と……二人の肉親、親戚にあたる面々が、スケジュールを合わせて見舞いに来てくれた。
「うふふ。こうやって父上達が見舞いに来て下さるのは嬉しいですね」
「うむ。子供達が生まれた後はどうしても復調を優先せねばならぬしな。直接顔を合わせて話をするならば今の時期が良いかと皆と話をして予定を合わせた次第だ」
ステファニアの言葉に、メルヴィン王が笑って応じる。
顔触れが顔触れなので護衛は同行しているが、人数的にはこれぐらいなら大丈夫だろうと事前にルシールも交えて話をしている。勿論、あまり面会の時間を長くとらないようにであるとか、浄化の魔道具を使うとか、そうした点は気を付けてくれているが。
ジョサイア王子とヘルフリート王子、それぞれの婚約者であるフラヴィアとカティアは……まあ、今回は水晶板での参加だな。あまり面会の顔触れが多くなると挨拶回りで大変だし、フラヴィアにしてもカティアにしても、今後もある程度女性陣で集まる機会があるので顔を合わせる事が増えるし。
「姉上がお元気そうで良かった」
「環境としては最高の物だと思っているわ。見立て通り、体調は良いから安心なさいな」
ヘルフリート王子の言葉に、羽扇の向こうで目を閉じてそっけないと言った態度で答えるローズマリーである。その言葉や態度は普段通りといった印象で、ヘルフリート王子やグラディス王妃、バルフォア侯爵もそんなローズマリーを見て安心しているように見えるな。
「貴女は気難しい所があったから心配していたけれど……そうね。こうして顔を合わせて気を許せる場所なんだなと、そんな風に思えたわ」
「私は妹から話を聞いているだけで、細かな機微は分からないが……ヘルフリート殿下やグラディス殿下がそう言うのであればそうなのだろうね」
グラディス王妃がローズマリーのそんな様子を見て笑みを見せ、バルフォア侯爵も楽しそうに頷いていた。
「まあ……こうして顔を見せに来てくれた事には感謝しているわ」
ローズマリーはそんなヘルフリート王子達の様子に目を閉じて答えていた。ヘルフリート王子やグラディス王妃としてはローズマリーがこういった言葉を口にするのは少し意外であったようだ。微笑んだり一瞬間を置いて嬉しさを噛み締めるように目を細めて頷き、そんな反応にローズマリーはあさっての方向を向いたりしていたが。
ステファニアも、ミレーネ王妃やジョサイア王子と朗らかに言葉を交わす。
「双子となると如何にも大変そうですが……テオドール公、ルシール先生、ロゼッタ先生と、治癒術や医術での顔触れも凄いものですからね。そこは安心できます」
「私も双子と分かった時は驚きましたが……今はそうですね。落ち着いて過ごせています」
「私もフラヴィアと結婚した後の事を考えると、姉上の身の周りを見ると色々と安心できるところではあるね」
ミレーネ王妃の言葉にステファニアが穏やかな笑顔で答え、ジョサイア王子も目を閉じて頷く。
オフィーリアやカミラに絡んだ話でもあるか。俺としてはフラヴィアやカティアに関しても母子の体調維持に協力するのは吝かではない。ジョサイア王子やヘルフリート王子を経由して生命力の補強を行えば良いわけだしな。
ルシールやロゼッタもいるという事を考えればジョサイア王子が安心というのも分かる。ともあれ双子であるからミレーネ王妃もジョサイア王子もステファニアを心配しているというのは間違いないが、言葉は前向きで、励ましに来てくれているというのは分かる。
そんなやり取りに、メルヴィン王やデボニス大公も目を細めて穏やかな表情を浮かべてから、俺を見て言う。
「うむ。娘達と孫の事をよろしく頼む」
「子供達の顔を見られる事を楽しみにしておりますぞ」
「はい。陛下、大公」
メルヴィン王やデボニス大公と言葉を交わす。……それからメルヴィン王はステファニア、ローズマリーにも「娘と孫達の顔を、揃って見られることを楽しみにしている」と伝えていた。メルヴィン王とデボニス大公もかなり誕生を楽しみにしているようだな。
「私達や子供達の体調が落ち着いたら、早い内にまたこうした機会を設けられれば嬉しいです」
「そう、ね。今日の面会も喜ばしく思っています」
ステファニアとローズマリーも落ち着いた様子でメルヴィン王に答えていた。
フラヴィアやカティア達も『体調が良くなったら会いに行きたいです』と笑顔で水晶板越しに挨拶をしていた。そうして面会も程無くして終わる。
バルフォア侯爵はこのまま王城に向かい、グラディス王妃やヘルフリート王子との交流を兼ねて少しタームウィルズに滞在してから帰国する、との事だ。
妹や姪、甥に会えてバルフォア侯爵は楽しそうであるが。
そうして、メルヴィン王達はみんなとの面会を終えて、フォレスタニア城の中庭でのんびりお茶を飲んだりしてから王城セオレムへと引き上げていった。
「みんなああして顔を見せに来てくれるのは嬉しいね」
みんなも城の上層……居住区画に引き上げる。メルヴィン王達が帰るのを見送った後で上層に顔を出すと、ステファニア達はソファベッドに横たわり、のんびりと身体を休めていた。顔を合わせてそう言うと、ステファニアが微笑み、ローズマリーは羽扇の向こうで頷く。
「ふふ、そうね。心配して直接顔を見に集まって貰えて、嬉しかったわ」
「まあ……たまには悪くないわね」
俺の言葉に二人はそう答える。ソファベッドに身体を横たえてのんびりと身体を休めている二人に薄手の毛布を持っていくと、ステファニアが「ありがとう」と、嬉しそうにそれを受け取って、隣に来て欲しいと言ってきた。
隣に腰を落ち着けると、そっと手を握られる。
「うん。やっぱりテオドールが側にいてくれると……とても安心できるの。双子って聞いても落ち着いていられたのは、テオドールやみんながいてくれるからよ」
大切な物を扱うように、両手で俺の手を取って微笑むステファニアである。包まれた手が温かい。ほのかな良い香りも鼻孔をくすぐる……静かで穏やかな時間。
「ん……。俺がこうしていられるのもみんなのお陰だからね。お互い様だよ」
そう答えて循環錬気を行うと、ステファニアは心地良さそうに目を閉じていた。温かな反応が三人分……ステファニアから返ってくる。
「ふふ、マリーも一緒に」
「わたくしはまだ先だから今はステフがテオドールとのんびりとしていても良いのだけれど……取り決めもあるものね」
そんな風に言いつつも隣に座り、少しそっぽを向きながらも空いた手を取ってくるローズマリーである。
対等に、という取り決めもあるからな。シーラやイルムヒルトもそんなやり取りに頷いていたりするが。
そんなみんなの反応に少し笑いながらも、ローズマリーも交えて循環錬気を行っていく。
ほっそりとした手を通して、ローズマリーの生命反応と魔力が伝わってきて。温かくて心地のよい魔力を感じる。子供達がいるので、1対1で循環錬気を行うよりも効果が上がっているというのもあるな。
何はともあれ、ステファニアはそろそろ状況を注視しておいた方が良いという時期に入る。グレイスの時もそうだったが、予定日から前後するというのはよくある事だしな。
特に双子という事を考えれば、万全を期して望みたいというのはある。あまり過度に対応してステファニアに不安を覚えさせてもいけないから、なるべく表に出さず、さりげなくというのが理想ではあるかな。




