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番外1402 精霊と魔道具

 そうしてあちこちと連絡を取り、複数の神殿関係者や文献から宗教的な禁忌、慰霊の神殿の滞在中にあったら嬉しいもの、等を調べていった。


 どこそこの神殿関係者が不仲とか、そういった事例があまりないのは……神格の仕組みや精霊王同士の仲が良い事にも起因している。

 個人的な感情や諍いで神殿の運営や立場にまで影響を出すと神職としての祈りの力に影響が出るからな。神格へ向ける想い――祈りが共鳴しなくなる。つまりはクラウディアや四大精霊王達の考え、性格に賛同する者や相性のいい者達がそのまま神職として適性が高くなるというわけだ。


 その点、精霊王達は互いに仲が良いし、そもそもが精霊なので明るくて楽観的だからな。そういった元々の性格、形成された神格に反するような行動をしていると神職としての能力に影響が出てしまう。そういった背景もあって、基本的に神殿関係者同士は礼儀正しくして仲が良いし、あまり極端な事をする者も祈りの力が発揮できずに神殿内での立場がなくなってしまう。


 月神殿……クラウディアの方針の影響もあって、各神殿はあまり政治的な方面での影響力も出ないようにしているしな。


 そんなわけで各神殿の信徒も心地良く過ごせるようにという事で、調度品等を整えると共に地水火風の属性を与えた魔石を小さな精霊達の像に組み込む、という準備を進めることにした。


 四大精霊王の姿を模したものではないが祈りの際にも使えるし、試作してみたところ小さな精霊達が集まってくるという効果があった。属性の合う精霊達にとって心地が良いからそうなるわけだが……四大精霊の神職にとっても像を配置するだけで環境魔力が心地の良いものになるだろう。


「今の小さな精霊達の状態を可視化すると……こんな感じだね」


 幻術を使って像の周りに集まっている小さな精霊達を可視化してアルバート達に見せる。中庭に等間隔で配置された精霊像の周りに小さな精霊達が集まっているな。

 シルフとサラマンダーがハイタッチしていたり、ウンディーネがノームと顔を合わせてお辞儀をしていたり。精霊達同士も割と仲が良い。そう言った姿を映し出して見えるようにすると、小さな精霊達も幻術で自分達の姿を見せている事に気付いたのか、手を振ったり踊るような仕草をする者も現れて。

 それをまた幻術で再現してやると精霊達がにっこりと笑ってそれを見ている工房の面々からも笑い声が漏れた。


「はは。小さな精霊達は可愛いもんだね」


 と、アルバートがそれを見て言う。その言葉が聞こえたのか、精霊達もにこにことしてアルバートに手を振ったりしていた。


「そうだね。まあ、慰霊の神殿の状況が動くまでに、この像を幾つか用意しておこう。精霊達も集まってきて、環境魔力も良くなるし」


 仲間達で集まって魔力の増した精霊達はまたどこかに飛んでいったり、新たにどこからか飛んで来たり、顕現してきたりと。入れ替わりもしているな。

 この場を去っていく精霊達に手を振ったりしつつ、日当たりのいい窓の近くに腰を落ち着け、茶を飲みつつ工房の仕事に絡んでの話をする。


 今は……テスディロス達の新装備の他に既存の魔道具の追加、義肢、義眼の経過観察、が工房の大きな仕事としてある。

 まずはそれらの進捗について話をしていく。


「新装備は現在鞭の完成に向けて動いているところですね。解呪前に魔石を組み込むだけ、というところまで進められるようにしたいと思っているところです」


 装備品の進捗に関してビオラが教えてくれる。魔石に関してはエスナトゥーラの解呪後の測定結果を受けてだな。前例であるオルディア、オズグリーヴから概ねの結果を予測して事前に魔石用の術式を組む事もできるが、装備品の完成度を高めるためにも半端な事はしたくないしな。


「解呪も……オズグリーヴの装備品を構築と計測をしたところで止まっているからね。時間的余裕はあるし、今は装備品が必要になるような状況でもないから、無理はしないようにね」

「ありがとうございます」


 ビオラが笑顔で応じて、エスナトゥーラも静かに頷く。


「私の解呪に関しては……ステファニア様の事が落ち着いてからが良いのではないかと、テオドール様やテスディロス殿達とも話をしてあります」


 エスナトゥーラは「予定日にゆっくり備えて頂けたら私としても喜ばしく思います」と、そんな風に言ってくれた。ルクレインもいるからか、そういうところで気遣ってくれるのだろう。親の立場があっての視点でもあるから、そういう気遣いは俺もありがたく受け取っておきたい。


 ステファニアは双子を抱えているので万全を期したいというのはその通りだ。予定日の少し前あたりから家に詰めておいて、何かあったら即動けるようにしておければ俺や当人も安心だろう。そういう意味でもエスナトゥーラが気遣ってくれたのは助かるというか。


 というわけで、エスナトゥーラの鞭の製作は継続しつつも解呪自体は一旦保留という形だ。

 他の工房の仕事の話もアルバート達としていく。既存の魔道具については――迷宮商会お抱えの職人や技師達が受注した分の作製を進めてくれている。


 色々作ってきたから一般に販売できる物、できない物と個別に違うが。例えば前者なら事務用品。後者なら空中戦装備等々といったところだ。


 空中戦装備増産については平穏が戻ってきたので落ち着いてきた印象があるが、押印機等々の事務用品、破邪の首飾り、クリアブラッド等に関しては好評で貴族や商人から受注が入っているとの事だ。


「一先ず受注を受けた分は問題なく対応できているね」

「魔道具の品質をシンディーと共に確認させてもらっているがどれも良いものだった」


 ミリアムからの報告書に目を通しながらアルバートがそう言って、タルコットが頷く。

 俺も報告書を見せてもらうが迷宮商会は好調なようだな。

 職人と技師を増やして対応している分、魔道具の価格にも人件費が相応に反映されるところはあるが……余所の職人や技師の仕事の圧迫になるような事はしたくはないからこんなところだろう。


 価格の話をするなら素材調達から作製まで自分達でできる俺達自身はかなり得をしているというのは間違いないが、一般に流通させる事を考えるなら考えなければならない事は多いからな。


 そう言ったわけで魔道具の価格は概ね相場と同じぐらいではある。但し、治癒や解毒、水作成といった緊急時に役立つ魔道具は割安に。そうでない品々は使われている技術素材と人件費に、少しだけ品質分とを上乗せといった感じの価格調整をしている。

 これは俺とアルバート、ミリアムの間で話し合って満場一致で決めた事だな。


「いやはや、迷宮商会の店主となるお話を受けて良かったと思っています」


 ミリアムは話し合いをした時に、こうした価格設定の方針に喜んでいた。

 この方針については今後も継続していきたいところだな。

 五感リンク式の義眼、義肢についても経過報告の書類が上がってきている。アルバートが迷宮商会の報告書と共に俺に経過報告書を渡してきてくれた。


 一通り目を通して見るが、経過としては順調だな。非常に使い勝手が良く、装具の負担も少ないと本人達からの報告と共に、王城お抱えの治癒術師が診断した結果も添えて、事細かに書かれている。


「この報告書の内容は嬉しいね」

「そうだね。テオ君もかなり術式を細かく調整していたみたいだし、その甲斐があったね」


 使用感を良くする事は勿論だが、衛生面の維持や体重のかかる部分への負担は極力減らすように色々と術式を調整したからな。その上で魔力消費を節約できるようにもしてある。報告書の内容を読む限りは概ね狙い通りになっているようだ。不具合が出たら対応する旨伝えてあるが、今の所はそういう事もないようで。


「試験してもらっている人達の経過観察はもう少し続ける予定だね。テオ君の今の状況が落ち着いたら報告と感謝を兼ねてまた面会したいってさ」

「そっか……うん。面会も楽しみだな」


 アルバートの言葉にそう答えると、工房や水晶板の向こうのみんなも笑みを見せるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 小さな精霊がハイタッチしているシーンで何故か超人バ○ムワンを思い出しましたw
[気になる点]  誤字報告というか、文がおかしいです。  一般には売れないものは空中戦装備、売れるものは事務魔導具、ではないかと。逆になってませんか? 範囲が広いのでこちらに書かせて頂きました。 […
[良い点] そうしてあちこちと連絡を取り、複数のフレンズや関係者の爺婆から宗教的な禁忌までも添えた獣新書が出来上がった
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