表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2174/2811

番外1393 次なる解呪に向けて

 オルディアとユイの訓練風景は少し変化をして……ユイがガードに回ってオルディアが打ち込むような形になった。


 実戦の訓練形式というよりはただ動きやすいか見るといった形なので、オルディア側は寧ろ変わった動きをした方が参考になる。オルディアとユイは少し話をして最初はバク転や側転して回避をしたりと攻め込んだりと……アクロバティックな動きを試していたようであったが、やがて演武といった印象の流麗な動きになっていく。舞い踊りユイの周りを回りながら錫杖による打撃や刺突を見舞う。


 その動きは明らかに武術の流れを汲むもので――レギーナの動きにも似ているな。それを目にしたイグナード王やレギーナが頷いたり、笑顔を見せてたりしていたから、恐らくはオルディアが型の動きを取り込んだのだろう。正式に教えたものか、オルディアが訓練や実戦を見て自分で取り込んだものかは分からないが、二人にとっては嬉しい事のようで。


 ともあれ、舞い踊るような動きと共に技が連なるように繰り出されて、それを受けるユイもまた、踊るような動きで合わせる。

 実戦とは少し違う組手や訓練用の動きというか予定調和の動きではあるが、闘気と魔力が干渉しあって火花を散らしながらも二人が舞い踊る様は、見事なものだ。武器が激突した際の干渉波そのものを一旦宝石化して制御下に置き、それらを錫杖に纏わせ力の増強の一助としている。新しい力の使い方というか、錫杖によって能力制御が向上している印象があるな。主な目的としては出力増強や負荷防止のための発動体として錫杖を用意した部分はあるが……物が良いので精度の向上も恩恵の一つではあるな。


 やがてオルディアも動きに支障はないと十分に確かめられたようで、ユイに「大丈夫そうです。ありがとうございます」と笑顔でお礼を言う。


「うんっ、どういたしまして……!」


 そんなオルディアの感謝の言葉に、ユイも明るい笑顔で応じていた。オルディアもユイの素直な反応に嬉しそうだな。それからオルディアは俺やビオラ達に向き直る。


「動き易くて使いやすいですね。ありがとうございます」

「それは何よりです」


 オルディアの感想にビオラ達が頷く。


「制御能力も向上している印象があるね」

「そうですね。自分の思った通りに能力が使える感覚と言いますか。大きな力を放出した時に同じようになるかはまたやってみないと分からないところがありますが」


 そうだな。では、造船所に場所を移して計測と行くか。

 それを伝えるとオルディアがやる気に満ちた表情で頷く。アルバートやビオラ達も装備品製作に携わった身として結果が見たいという事で一緒に造船所までついてくる。


 工房から造船所へと移動し、早速前と同じ方法で計測していく。解呪前、変身後、解呪後の装備品の有無で比較をしていくわけだ。


「それじゃあ始めていこうか」

「はい。よろしくお願いします」


 というわけでウィズが記憶しているのと同じだけの魔力量を注いで作ったゴーレムを構築する。それらゴーレムを相手に、オルディアが錫杖を振るって能力を行使し、出力や精度の計測を行っていく。


 これに関しては既に何度も行っているのでオルディアとしても慣れたものだ。意識しないで振るえる通常の出力。集中して能力を使った場合。力を込めた大技と……少し体調や気分、力加減で変わってくるところもあるが、そこはまあ実戦でも同じだしな。体外循環錬気を使ってモニタリングを行う。その上で試行回数を増やす事で平均化を行い、おおよそのところを把握するというわけだ。


「良い装備品なのは間違いないけれど、まだ使い始めたばかりだからね。大きな力を出す時は慎重にいこうか」

「わかりました」


 と言っても暴走の兆候は分かるので、その時は体外循環錬気の干渉によって制御を行い、安全性を確保する事ができるはずだ。まあ……オルディアに関して言うなら元々能力の性質上制御が上手い方なのであまり心配はいらないと見ているが。

 工房の中庭でユイと訓練してもらったのも、道具の扱いに慣れる為、という意図があったりするしな。


 というか……高位魔人達の能力が精神性と結びついているような印象もあるので、みんな制御能力に関しては元々優れている方だと思う。解呪を保留している高位魔人達については魔人にしては元々研鑽を重視している面々が多いし、後から研鑽を積めばまだまだ伸び代がある、とは思っているが。


 メダルゴーレムやヒュージゴーレム、それらに刻印や魔法、呪法による防御処置を施したものへ能力を行使し、威力と精度を比較していく。

 

 大技を撃つ際も、かなり危なげなく魔力を制御していて、負荷や反動に関しても錫杖が抑制しているので問題は無さそうだ。

 そうして特殊能力だけでなく通常の魔力弾の威力や身体能力の測定等を順に行っていった。


「良い……ですね。流石と言いますか、かなりの手応えを感じます」

「うん。変身後と全く同じとは言えないけれど……出力増強と負荷抑制、制御能力の向上で、かなり補えていると思う」


 増強された出力は変身後の8割強から9割程、だろうか。変身後と同じや超える程という結果ではなかったが、制御能力への恩恵もあって、トータルでの戦闘能力は単純比較できなくなった、とは言える。


 防具に関しては――ドレスアーマーの素材や組み込まれた魔法式、呪法式の防御術式、オルディアの纏う魔力量から大凡の性能も予測できる。アルケニーの糸と竜鱗で構成された防具は既に俺達が実戦で活用しているからデータがあるのだ。

 流石にこちらは魔法をぶつけて性能試験というわけにはいかないしな。


 分析結果と共にその見解をみんなにも伝えると「おお……」という声と共に明るい表情になる。


「やはりこれからの研鑽が重要になってくる、というわけだな。裏を返せば変身後の力を総合力で超えることもできる、という事でもあるのだし」


 テスディロスも真剣な表情で言った。そういう点ではオズグリーヴやエスナトゥーラ、ゼルベルも研鑽の重要性は分かっている面々なので納得するように頷いていた。


「そういう事になるね。瘴気と通常の魔力なら、魔力の方が制御しやすいのも確かだし」

「技術で補うというのは元々してきた事ですからな。身に付けたものが無駄になるわけではないのですし、安心して解呪に臨めるというものです」


 オズグリーヴが笑みを見せる。オズグリーヴに関して言うなら中々覚醒に至れずにそれを補うための研鑽を積んだりと、苦労をしたようだからな。

 後天的に魔人になった経緯から研鑽の重要性も知っていたというのもあるだろう。継続して研鑽を積んでいたから……今は高位魔人としても随一の制御能力や応用力を持っているという印象もあるが。


「ん。そうだね。こっちの解析結果や予測でも覚醒能力がなくなるわけじゃなさそうだから、そこは安心してもらって良い」


 オルディアの装備品が出来上がって性能の確認も終わったところで、続いてはオズグリーヴの解呪だな。解析によると解呪したところで肉体的な劣化が起こるわけではないのでその辺は安心だ。隠れ里の面々は当然ながらというかオズグリーヴの解呪儀式への参列を希望しているので、日程等々もきちんと決めて動いた方が良い。


 その辺の話題を振ってみると、レドゲニオスやイグレットといった隠れ里の面々も同意するように頷く。


『私達としてはいつでも、といったところですね』

『そうですね。無事に解呪できたら、オズグリーヴ様とお祝いをしたいところです』


 と、そんな風に二人は答える。まあ、今すぐ慰霊神殿に足を運んで解呪とはいかないが……順を追ってしっかりと進めていこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 長柄の武器を用いながら動きがアクロバティックになったり武術的だったりということで、クンフー映画を連想しましたw イメージしやすかったですw
[良い点] 変身…ドレス…月… 獣は煩悩振り切り蒸着した
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ