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番外1382 力を補う為に

 オルディアと共に造船所へ向かい、そのまま測定を行った。なるべく条件を同じくするという事で造船所にて体外循環錬気で調べながら、と言うのを踏襲しつつ、風の影響を受けないようバロールによってフィールドを展開しての測定だ。


 オルディア自身の体調も良いとの事で、早速みんなの見守る中、ゴーレムを使った計測実験を始めていく。


 前と同じように合図を出して術を行使。ゴーレムの制御が奪われるまでの時間を計るといった内容だ。


「……どうやら……解呪した状態でも能力は使えそうです」


 オルディアのその言葉に、テスディロスが「おお……」と声を上げる。自分達にも関わる事だけにオズグリーヴやエスナトゥーラ、ゼルベルも興味深そうに顎に手をやったり頷いたりと、オルディアの状態に注視しているようだ。


「ん。それじゃあ、始めよう」

「はい」


 短く頷いて――オルディアが腕を振るようにしてゴーレムに煌めく光の波を放つ。瘴気ではなく魔力だ。しかししっかりと効果を発揮して、ゴーレムから宝石を抜き出していた。ゴーレムの制御も失われ、オルディアの手の内に宝石が引き寄せられるように飛来してくる。


「いいね。きちんと能力は発揮されてる」

「そうですね。消耗も大きくなるのかと思っていましたが……今能力を使ってみた感覚では、そうでもないようです」

「解呪前の通常状態よりも能力使用に最適化されている……ように思う。変身後程の力は多分出せないだろうし、大きな力を使おうとすると負荷や反動があると思うけど」


 最大出力そのものも……恐らくは下がっているだろう。が、通常状態の効率が良くなっているわけだ。魔人であった時の通常状態と変身状態が統合されて、解呪後の状態の平均値が高くなった、というところだろうか。今は儀式の影響もあって絶好調や強化があるかも知れないので、まだ断言はできないが。


 そういった所見について話をすると、オルディアも含め、高位魔人の面々は興味深そうに聞き入っている様子であった。


「ともあれ……魔力の動きを見つつ、負荷や反動がありそうに感じたらこっちで制限をかけるから心配しなくていい。ただ、その時の感覚は覚えておいて欲しい。負荷や反動を受け止めるための発動体が使えない時に限界を超えないためにね」

「分かりました。テオドール様が制限をかけて下さる、というのなら安心ですね」


 オルディアが笑みを浮かべると、イグナード王とレギーナも同意するように頷いていた。


「うむ。安全確保してもらえるのは有りがたい。よろしく頼む」

「よろしくお願いします」


 と、二人して一礼してきて、俺も真面目な表情で首を縦に振って応じる。では……計測作業を続けていくとしよう。




 そうして――その日は造船所で一通りの計測を進め、オルディアが落ち着くのを待って平常に感じる状態での計測も改めて行った。

 それらの計測で得られたデータは迷宮核で解析にかけ、諸々のシミュレーションを行った。


「大凡変身後の7割ぐらい……かな」


 解析で得られた情報は、工房にてオルディア達やアルバート達を交えて伝えていく。


「7割か……。変身後と比較してなら能力の減少は総合的には少ないと言って良いのかな」

「肉体の頑強さとか、瘴気特性による魔力減衰、肉体侵食効果が無くなる事を考えると、総合的な戦闘能力という観点ではもう少し下がる。但し、通常状態での能力行使よりも解呪後の方が行使能力は上がっているね」


 封印術も必要なくなる、という事を考えると平常時は対応能力が上がるだろう。それに加えて……魔力制御面――術の制御という面では影響がない。力技、大技の威力はともかく、応用力はそのままといったところだ。


「ふむ。私の場合、味方の支援などでは十分に力を発揮できそうですな」

「要するに技を鍛えれば、解呪後でも伸び代はあるって事か」


 オズグリーヴとゼルベルが言う。そういう事になるな。オズグリーヴやエスナトゥーラは技を重視しているし、ゼルベルは自己強化と体術重視だ。テスディロスも……そもそもの雷という特性が強力だし傭兵の経験があるので、やはり魔人達の中では体術や技に重きを置いている方だろう。


「鍛える分には問題ないな。解呪されても覚醒能力を今後も使えるというのは確定したのだし、鍛えがいがある」


「後は……戦力低下部分を装備品で補う、と。出力面での低下は発動体があれば増強できるし、過負荷対策もできる。防具があれば魔力減衰部分での射撃戦優位の部分は補える、と。肉体侵食の特性については、それぞれの特性に応じて影響の度合いが違ってくるから、補う方法を考えてる」


 そう言うと工房に集まっている面々が頷いた。オルディアの場合は――相手の能力を自身の能力で変質させて宝石に変えて封印するという点から、どうしても効果対象に呪法的な縁……接点が生まれる。性質そのものの根本がそうだという事となると、元々のリスクが同じなので呪法のカウンターを恐れて忌避しても仕方ない部分があるからな。


 だから呪法防御を施しつつ影響力を強化するという方向で装備品を考えている。


 これにより、対生物でも解呪前と同様に影響力を増強する事が可能だ。これを侵食作用の代わりとし……オルディアやエスナトゥーラの術特性をより効果的に活用する事が出来るようになる、と。


『そもそも呪法の対抗策にしても余程呪いに精通した者しかできぬであろうしな』

『そうした知識や能力を持つ相手だったとしたら、尚更呪法防御が大切になりますね』


 パルテニアラとエレナがモニターの向こうで言った。そうなるな。強化しつつデメリットの部分を軽減するという方法でもある。


「それじゃあ、魔石も呪法用に性質を変化させる事から、かしらね」


 ヴァレンティナの、その言葉を首肯する。


「装備品の術式については、今解析結果と共に組み上げてるところだから、もう少し待ってほしい。ただ……その前に、装備品についてどんな種類や見た目がいいかについては話し合っておきたいね」


 発動体に関しては武器を兼ねるので、それぞれ好みがあってある程度纏まっている。テスディロスは槍だし、ゼルベルは手甲と脚甲、エスナトゥーラは鞭だ。オルディアは決まった武器を持っていなかったが色々持ってみて錫杖がしっくりきたという事なので錫杖を。オズグリーヴは……瘴気剣等がなくても能力自体が煙を固めて幾らでも自由が効くからな。腕輪のように発動体として使えつつも行動を阻害しないものが良い、という話になっている。


 だがまあ、発動体の見た目や防具回りはまだ完全に決まっていないしな。それぞれの特性を考えつつ考えていきたい。防具にしても魔法的な防御を重視しているので鎧兜に限らない。そうみんなに伝えると、乗り気なのか笑顔になった。


「なら、ドレスとかサークレットとか……オルディア姉さんに似合いそうな綺麗なものがいいわ」

「ふむ。そうさな、確かに」


 と、レギーナの言葉にイグナード王が頷き、我が事のように張り切っている二人に、オルディアも楽しそうにしつつも苦笑いを浮かべた。


「どんなものが良いでしょうね、ルクレインお嬢様。やはりエスナトゥーラ様にはティアラであるとか……」


 フィオレットも楽しそうにエスナトゥーラの腕に抱かれているルクレインにそんな風に話しかけて、エスナトゥーラもまた苦笑していた。


 幻術や土魔法で希望通りのデザインに見本や模型を作ったりしてみて。こんな風にしたらいいんじゃないか、こういう方が似合うんじゃないかといった具合で案を出し合ったりと、中々に賑やかな時間を工房で過ごすのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] オルディア、魔人化解除されて幸せだろうけど、更に幸せになって欲しいな。 獣王「境界公と結婚とか?」 獣王候補「獣王になった暁には…(境界公も嫁が多いしな)」 住人「え?あの人、境界公の愛人…
[一言] 力から技にシフトするあたり、なるほどと思いました。 あと、錫杖というのが東洋風だなとw ということは三節棍とかタバックトイックが存在していれば、しっくりきた可能性が?w
[良い点] マワシとか法被とか奇抜なのがコルリスには似合うと思うわ
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