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番外1368 造船所での計測

 さてさて。そんなわけで俺の新しい仕事としてオルディアを始めとした覚醒魔人達の力を計測する、というのが加わった。


 最初にオルディアを計測し、それが終われば続いてテスディロスやオズグリーヴ、エスナトゥーラ、ゼルベルと……残る全員を順番に計測していく事になるな。

 全員の解呪を目指すというのもそうだが、専用装備を作るにあたりどういった装備でどれぐらい補強すればいいのかというデータが必要になる。


 出力を増幅しつつも自身の負荷を軽減する発動体……つまりは武器と、各々の特性からダメージを受けないようにする防具、といったところだろうか。瘴気による魔力の減衰効果が失われるので、耐久能力を補う、という意味合いもあるな。


 作る武器防具に関してはテスディロスの場合は分かりやすく、槍と鎧という装備で良い。エスナトゥーラは鞭やそれに類似する武器とドレスだろうか。

 ゼルベルは手甲と脚甲あたり。オズグリーヴは……応用範囲が広くて少し難しいな。オルディアも特に決まった武器はないようだから種類を検討中だ。防具はドレス系のもので良いだろう。


 そんなわけでメダルゴーレムを用意しつつ、計測の場所として俺達は造船所へと向かったのであった。


 郊外でというのも考えたが、造船所なら広々としているし周辺も警備しているからな。余人には見られなくて済むが、全く人目につかない場所や半端に見られるような場所で実験を進めるよりは、何をするか明確にした方が周辺としても安心感があるだろうというわけだ。まあ……結集した面々を迎えた今の時期に配慮したわけだな。


 というわけで、俺やテスディロス達、それに工房の面々、見学という事で解呪した者達も造船所にやってきている。グレイス達は……今日はフォレスタニア城で安静にしているな。代わりにモニターで中継できるようにはしてある。これからロゼッタとルシールが往診に来るとの事で。予定日も間近ではあるが……フォレスタニアにいるみんなはのんびりと穏やかに過ごしている様子だ。


「それじゃ、始めていこうか」

「はい。よろしくお願いします」


 まずは普通のゴーレムからだ。事前準備としてヒュージゴーレムを構築できる程度の石材を造船所に運び込んである。メダルは使わず、クリエイトゴーレムを用いて素のゴーレムを構築。自動操縦で魔法抵抗等々の対策は考えていない。


「まずは力を抜いておいて、合図したら力を行使していって欲しい。その際の所要時間を計測していくよ」

「分かりました」


 体外循環錬気でオルディアの力の動きを計測しつつ、ゴーレムと一定の距離を取って向かい合ってもらう。少しの間を置いて合図を送ると、オルディアが動いた。

 まず変身せずに適度に出せる程度の力で、という事でやってもらったが、煌めくオーロラのような輝きがゴーレムに到達するとその身体から魔力が抜けてあっという間に宝石になり、代わりにゴーレムが崩れ落ちた。宝石が形成されるまでの時間。ゴーレムが制御を失うまでの時間。オルディアの手元に宝石が戻ってくるまでの時間をそれぞれ計測する。


「では、戻しますね」


 オルディアが言って、こちらに瘴気の動きで合図を送ってくる。その瞬間から時間を計測。宝石が光になって戻り、ゴーレムの制御が戻ってきたところで計測を終了する。


「戻すと一度制御を失っていたゴーレムが再度形成されて制御まで返ってくるっていうのは……オルディアの能力の面白いところだね」

「ふふ。封印だけで危害を加えないようにできる、というのはちょっとした自負であったりするのです」


 と、オルディアは俺の言葉に嬉しそうにしていた。なるほどな。

 制御までそのまま戻ってくる、という性質は……オルディアのそうした想いを反映しているのかも知れない。ともあれ何度もゴーレムを作り直さずに済むようで、その点はこちらとしても魔力の節約になる、だろうか。


 続いてゴーレムの体表に紋様術式を施して魔法耐性を強化した場合。メダルゴーレムにして防御術式を組み込んだ場合。ヒュージゴーレムであれば。更にそこにメダルゴーレムを組み込んだ場合は……と段階的にゴーレムの防御能力、規模を上げて同じように計測していく。オルディアの能力がどれほどの出力で、どのぐらいの時間で効果を発揮するのか、というのを比較しつつ調べていく、というわけだ。


 マジックシールドも僅かに拮抗するが宝石に変えてしまえるのがオルディアの能力の強みだな。相手の魔法自体を宝石に変えてしまえるので、魔法的な防御は勿論、攻撃術式を打ち消したり、宝石から力を放って逆利用したりもできる。物理的な能力も封印と無力化ができるので相手の性質を問わない強さがあるな。


 そんなオルディアであるが……流石に防御術式が強固なものになると、通常状態では手古摺るようになっていた。

 とはいえ通常状態での計測を終えて変身状態で術を行使すると、ゴーレムの展開している防御術式も割とあっさり打ち破っていったが。


 最終的にヒュージゴーレムにメダルを複数枚埋め込み、表面を紋様術式で加工して……というところまでやったが、変身して本気を出した場合のオルディアは、そうやって複数の種類の魔法的な防御を固めたヒュージゴーレムもそれほど時間を掛けずに攻略していたから……まあ相当なものだ。


「大したものだな」

「ありがとうございます。多分ですが……こうした即席の魔法生物には相性がいいのかなと思います」


 テスディロスの言葉に、オルディアは少しはにかんだように笑って応じた。


「存在が固定化されていないゴーレムの場合、性質が流動的だからね。直接制御して干渉力での綱引きがないと宝石への変化を通しやすい、というのはあるかも知れないね」


 魔法対策にしてもゴーレム作製系の術式は乗っ取りといった方面での対策はしているが、制御系が丸ごと宝石化されてしまうというのは想定して組まれていない、というのがあるだろう。


 俺の言葉にオルディアも納得というようにこくこくと頷いた。

 そうしてそのまま、今度はフィジカル面での影響を見るために短距離の飛行タイム等も計測してみた。


「こういった方面ではあまり自信がないのですが」


 と、オルディアは謙遜しているが、そこは高位魔人だ。飛行の速度は十分なもので、見学している氏族長達は「いや、流石は覚醒に至った方々ですな……」と、感心している様子であった。


 オルディアの場合どちらかと言うと制御能力の方に自信があるという事で、一定の空間に光球を浮かべ、明滅の順に一度放った瘴気弾を遠隔操作で当てていくとか、そういった方向での計測もさせてもらった。解呪する事で制御能力に変化が生じるかも調べたいところだしな。


 オルディアの能力の計測を一通り終えたところで、今度は他の面々も飛行速度や攻撃能力の計測に移る。オルディアの能力と違って攻撃能力の計測は基準を定めにくいところがあるが……まあ、合図から力の集中、行使を行い、何秒でゴーレムの制御が失われるか、という方式で見て行けば良いだろう。


「こういう計測は面白いな。俺も試してみたいところだ」


 ゼルベルは結構乗り気なようだ。「頑張って」とリュドミラから応援されて「おう」とにやりと笑って応じているが。


 そうやって5人の能力計測と記録を付けていると……ロゼッタと共に往診に来ていたルシールが中継の水晶板に顔を出し、連絡を入れてきた。


『今……大丈夫でしょうか? こちらに戻ってくる事は……できますか?』

「ああ。もしかして――」


 察するものが有ってそう口にすると、ルシールは静かに微笑んで頷くのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 学生時代の体力測定を思い出しましたw でも、反復横跳びや踏み台昇降はありませんw
[気になる点]  オルディアの水晶を魔導具の核に据えて、封印を解かずに利用する、とかは出来ないんでしょうか? これなら契約魔法要らないのでは? 本人か血族固定の魔導具になるのではと。 [一言]  まさ…
[良い点] 獣の新しい仕事として畜ペン・海豚を始めとした覚醒魔獣の口答訓練だ
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