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番外1353 魔人達の返答は

「大丈夫か?」

「ああ。再生能力が高いから身体は問題ない。少し疲れただけだ」


 尋ねると娘に支えられながらもゼルベルが答えてくる。答えながらもゼルベルは変身の際に長く伸びた髪を瘴気操作で切り払い、瘴気の圧力で虚空に散らすように消滅させているようだった。

 手馴れているようにも見えるので変身を解除した時にいつもやっているのだろう。


「変身の際に瘴気特性の関係か、それともそういう形態変化なのか毎回勝手に髪が伸びるが変身を解いても短くはならん」


 という事らしい。身体強化や再生能力という特性を現す変身の仕方ではあるかな。


 ともあれ、怪我等はないようで良かった。俺の方も多少攻防や大技の激突によって衝撃を受けているが、気になるような怪我はないしな。俺の治癒術や魔道具等でも対応可能だ。


「まあ、マジックポーションを渡しておこう。消耗してると対応の幅も減るし」


 と言いつつゼルベルにポーションを渡し、俺もポーションを服用しておく。

 娘の事は……まあ、割と察せるところもあるので、後で事情を聞かせてもらおう。そう伝えるとゼルベルは「感謝する」と静かに答えていた。ゼルベルもその娘も、啓示の影響があったからなのか、互いに心配しているようで、仲の良い父子に見える。


 そんな話をしつつ結集場所に戻ると、氏族長達が一礼してくる。


「卓越した技量と偉大なる魔力、確かに拝見させていただきました。あれはまさに……アルヴェリンデ様のお力」

「盟主や最古参の方々の意志や力を引き継いだと、言葉ではなく実感として理解しました」

「氏族の者達も安心した事でしょう。我ら一同、氏族と共に恭順すると誓います」


 アルヴェリンデは最古参の魔人の一人だ。いくつかの氏族に跨って顔が利いたようだからな。ヴァルロスの術は……合流していない面々にはあまり知られていなかったようだが、高位魔人としてヴァルロスは新顔だ。一方でアルヴェリンデの術は見せる事による効果が大きかったという事なのだろう。


 それに……アルヴェリンデに限った話ではないが残った氏族の事を気にかけていたから、これは当人にとっても望んで貰えるような術の使い方だったのではないだろうか。


「ああ。そう言って貰えると俺としても安心できる」


 氏族長達に頷く。


「覚醒した魔人を相手に底を見せていない、とは……」

「始祖の魔人達に勝ったというのも納得だな……」


 はぐれ魔人達もさっきとは見る目が少し変わっている様子だし、目の前で実際に手合わせしたのは良い方向に作用したようだ。ゼルベルと利害が一致していた、というのは有難い話だ。


「こうなると……話も前に進めやすくなりましたね」


 オーレリア女王が少し安堵したように笑顔を見せてそう言うと、お祖父さんやフォルセトも頷く。

 手合わせの前に話していた通り、氏族の魔人達からも封印術を希望する面々が前に出てきたので、早速その作業を進めていく。とは言え、健康や安全に関わる事だから、まずは説明をしっかりとしてからだな。


「というわけで封印術を受けた後は、魔道具を装着してもらって効果を固定する事になる。力が抑えられてしまうから、処置が済んだらこの場所に来る為に使った乗り物に移ってもらい、安全を確保できるように動いていきたいと考えてる」

「乗り物……?」

「姿を隠しているんだ。今見せるよ」


 そう言って水晶板に向かって頷く。二隻の飛行船を覆っていた隠蔽フィールドが解ける。停泊させていたのは少し離れた場所だが、その姿が肉眼で目視できるようになった。


「これはまた……」

「あんな大きなものが気配も感じさせずに……」


 と、魔人達も驚いているようだ。というわけで魔人達が落ち着くのを待ちつつ、飛行船を結集場所に横付けさせてタラップを降ろし、全員の封印処置が済んだらそのまま船に乗り込める体制を整える。

 船室への案内等はティアーズやアピラシアの働き蜂達がやってくれる。そのあたりの説明もしつつ、魔道具の準備も整えた。


 さてさて。では希望している面々に封印術を施していこう。

 最初に並んだ顔触れは希望した面々だが……親子連れが多いようだ。安心や安全な環境での子育てというのを歓迎しているのか、或いは啓示の際の親子の間での感覚を好ましいものだと受け取ったか。何にせよこちらとしても喜ばしい事である。

 ゼルベルとその娘さんも希望するとの事で。


「多少は貰ったポーションで回復しているしな。まあ、今なら問題はないだろう」

「分かった。体調が悪ければ封印を解くから言って欲しい」

「ああ」


 話が進展する事に協力してくれたし、まずはゼルベル父娘からという事でみんなも異存はないようだ。ゼルベル自身も覚醒魔人という事で力を見せて、他の魔人達から一目置かれているようだしな。


「リュドミラよ。その……よろしくお願いします」


 ゼルベルの娘……リュドミラも少しおずおずと自己紹介してくる。意志の強そうな印象だが、色んな状況もあって気を遣ってくれているというのは間違いなさそうだ。


「ああ。よろしく」

「こっちこそ」


 というわけで父娘に封印術を施す。ゼルベルとリュドミラは一瞬封印術の光に包まれて、目を瞬かせていたが、やがて顔を見合わせたり周囲を見回し……それから頷き合う。


「……なるほど、な。やはり、来て良かった」

「ええ、父さん」


 やはり、啓示を受けての影響が大きかったわけだ。風景や肉親への物の見え方など……色々思うところがあるらしい。

 体調にも問題はないとの事で、二人はそのまま魔道具を装着してくれた。封印が終わった面々は結集場所の一角に集まってもらい安全確保をしておく。敷地から出ず、一通り終わったらみんなで船に乗りこめばより安全というわけだ。


「封印を受けた者用に、防寒具も用意してきている」


 と、テスディロスが船から運んできた木箱から防寒具を取り出して言った。ゼルベル父娘もきちんと毛布を羽織っているようだ。まあ、シリウス号の操船席にいるバロールが風魔法のフィールドを構築できるので合わせて寒気対策もしておこう。


 そんなわけで希望した面々の封印処置をどんどん進めていく。親子連れの魔人達は封印を受けると少し呆然とした後段々と感動した面持ちになって、親子で抱き合ったりしていた。ヴァルロスの呼びかけに応じなかった魔人達は、やはり戦闘能力には劣る面々が多いらしく。それに比例するように好戦的な傾向や残虐性も魔人達の中では比較的低い者達ばかりではあるらしい。氏族長クラスも同様だ。戦闘要員はベリオンドーラに集まっていたから、本来なら次の氏族長に指名される立場ではなかったという者もいるそうで。

 ともあれ、先程と同じように、落ち着くのを待って魔道具を装着してもらい、防寒具を配る。


 氏族長が体調や気分等を聞いてそれを更に氏族の者達に伝えたりしている。氏族長達はどうかと言えば、氏族全員の安全が確保されてから封印術を受けるという方向のようだ。この辺は氏族の者達を守る役割もあるしな。

 はぐれ魔人達もその状況を見守っていて、危険が無さそうだという事が分かると、封印術に応じてくれる面々も出てくる。


 そうして封印作業は順調に進んでいき、やがて全員が処置に応じてくれた。色々と不安もあったし手合わせも行う事にはなったが、一先ずはこれで安心できたな。魔人達は氏族同士や肉親達同士で喜びを露わにしたり、風景に見惚れたりしているようで……種族特性封印の効果が相当大きいというのが見て取れる。


 モニターの向こうで、グレイス達もその光景に笑顔を見せていた。では――みんなで船に乗り込んで移動していくとしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 総天然○ョック再びw 4○96色同時表示可能なFM○7AVではありませんがw
[良い点] 尋ねると畜ペンに支えられながらも獣が答えてくる 「ワイ不死身や…で……」
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