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番外1336 結集に向けて

「さて。そうなると後は魔人達の氏族結集の話になってくるかな」

『いよいよだな』


 フォレスタニア城の通信室にて……俺の言葉にヴァルロスが目を閉じ、ベリスティオが静かに頷く。

 啓示の儀式を行いベリオンドーラの南部――フィヨルドの海岸線付近に結集地を造り……それからガルディニスの遺した品の回収。ネシュフェル王国の調査。事件の解決と後始末。封印倉庫に絡んでスピカとツェベルタの器の構築と色々進めてきたが、段々と啓示で魔人達に示した結集の時期が近付いてきた。


 各地に散らばっているであろう魔人達が、それぞれの氏族や氏族に属さないはぐれの個人ごとに意思決定をし、移動に要するであろう時間を加味した上で結集時期を決めた。

 魔人達は空を飛べるので、意思決定までにかかる時間、移動にかかる時間に合わせても問題はないだろう、という設定だ。特に……魔人達は合理的で割り切りが良い性格の者が多いし意思決定は早いだろうというのが俺達の共通見解である。


 啓示の効果も持続しているのでこの時期に出発すれば間に合う、合わないというのも何となく分かるようだしな。


『既に我らの意志は示した通りだ。結集と和解にあたり、役に立てることがあるなら言って欲しい。とは言え、現世に及ぼせる力は神格を通したものぐらいなのだろうが』

「ああ、ありがとう」


 ベリスティオはあまり大した事はできないというような言い方をしているが……魔人達に対しては心強い話だ。啓示が効果を及ぼしている通り、今の魔人達の祖として影響力があるのも事実であるし。


 魔人達は合理性が強いのでそうした神格等を敬うイメージはないが、そうだとしても啓示はしっかりと効果が出るからな。耳を傾けてもらったり、話を聞いてもらったりする切っ掛けにはなるだろう。


「私達としては、精一杯テオドール公の補佐を致しましょう。結集に際しては護衛以外にも意味があると理解しておりますぞ」

「そうだな。魔人達は力の論理で動く者も多いし、強者には敬意を示す傾向も強い。俺達が一緒にいて賛同しているというだけでも下手な言葉よりも意味を持ってくるだろう」

「覚醒魔人が共にいれば、無用な争いを回避できるというわけですな」


 オズグリーヴがそう言うと、テスディロスとウィンベルグが同意する。


「覚醒魔人は最初から全員変身して同行する、というのが良いかも知れません」

「私としても問題はありません」


 オルディアの言葉にエスナトゥーラが笑みを見せる。フィオレットは「留守中のルクレイン様はお任せ下さい」と、一礼し「ありがとう、フィオレット」と笑みを向けあっている。


「私は覚醒に至っていないが、氏族長の1人として同行したく思う」


 ルドヴィアも同行する、と。覚醒に至っていないとは言うが、ルドヴィアは……覚醒していない魔人達の中で見れば、結構な実力を有しているというのは間違いない。リネットと同じく、覚醒一歩手前、といったところだな。


「なら、俺も一緒に行きたい。子連れで不安に思う者もいるかも知れないが……俺が一緒ならテオドールが力を重視する魔人の氏族とは性格が違う、って事も伝わるんじゃないかと思う。力不足なのも、足手まといなのも、承知の上での話ではあるけど……」


 そう言ったのはザンドリウスだ。視線が集まるとザンドリウスは真剣な表情で見返してくる。ルドヴィアはしばらくザンドリウスの目を見ていたが、やがて仕方ないというように息をつくと、俺に言ってくる。


「どうやら……考えて決意した上での言葉のようだ。どうか気持ちを汲んでやってくれないか? 代わりに、私がザンドリウスを守ると約束する」

「守りであれば……私の能力も活用できるかと」


 ルドヴィアの言葉とザンドリウスの姿を見て、オズグリーヴはそんな風に提案してくる。


「……分かった。但し、ザンドリウスは船の甲板からは降りない事と……もし対話で雲行きが怪しくなったら、すぐに船内に避難する事を約束できるのなら許可するよ」

「約束する」


 俺を真っ直ぐに見たままでザンドリウスが答える。

 子供連れから見て、という話をするならザンドリウスが前に出てくるのが逆に印象が悪くなってしまう可能性もあるしな。甲板に姿を見せる、或いは伝声管による船外放送で説得ぐらいまでなら大丈夫……だろうか。この辺はみんなの意見も聞いてみよう。


 そういった考えを伝えると「確かに……伝声管を使うという手もあるな」と呟くザンドリウスである。


「ザンドリウスは落ち着いていて、慎重で合理的な行動を心がける性格だからね。無茶はしないだろうし、こっちとしてもその点は安心だから許可できるっていうのはある」

「それは……過大評価だな。だが期待は裏切らないようにする」


 苦笑してからまた真剣な表情に戻って頷いていた。まあ、こういう律儀なところも信頼できるとは思うが。ベリオンドーラで最初に会った時の危機管理能力や咄嗟の対応力は中々目を見張るものがあったからな。お世辞ではないし過大評価でもない、と思っている。


『結集の際の段取りを確認していると聞きました』


 通信室のモニターにオーレリア女王が顔を出す。魔人の結集に際してはオーレリア女王、アドリアーナ姫、それにフォルセトも同行するという話になっているからな。月の民の系譜、魔人に絡んで重要人物が同行するので防御体勢はしっかり確立しておきたい。


 子供のいるエスナトゥーラもそうだし、ザンドリウスもそうだが、俺のところにいる魔人達も俺の庇護下にある。改めてきちんと話し合い、安全性の高い計画を立てて臨みたいところだ。


「重要な顔触れには転送魔法で対応できるようにしておく必要があるわね」


 ローズマリーが言う。そうだな。転送魔法は召喚魔法の応用なので、転送魔法陣を描いておかなくても魔道具を身に付けてもらっておけば多少離れていても反応させる事ができるはずだ。


「出発までの間にもう少し装備も整えて、もしもの場合に備えたいところだね」

「こっちでも準備は進めておくよ」


 アルバートがそう言ってくれる。そうだな。心強いことだ。

 そうしてしばらくの間、みんなと共に魔人結集時の安全策やら段取り、受け入れてからの対応といった相談を重ねるのであった。




 というわけで、結集の予定日に向けて出立の準備を整えていく。魔人達を受け入れる事になるが……シルヴァトリアも飛行船を出してくれるとの事だ。これならば把握されている氏族達に加えて、はぐれの魔人達の数が予想を超えて多くとも、余裕を以って収容して戻ってくる事ができるだろうというわけだな。


 オーレリア女王やエベルバート王に限らず、受け入れでも協力する用意がある、と言ってくれた。まあ、ヴァルロスとの約束もあるが、派閥問題や住民との摩擦等が起きたりしたらそうした面でも力になってもらいたいところだな。


 それに伴い、食糧、衣類、薬に魔道具といった品々も用意。封印術や解呪を受け入れるならば魔人達にとってそうした問題も変わってくるからな。


 とりあえずゴブリン等の魔物を狩っても空腹を補える魔人達だが、種族特性が変わればそうも言っていられない。暑さや寒さ等にも弱くなるので集まるのがベリオンドーラでは衣類も必須だ。季節だってまだまだ寒い時期だしな。


 薬や魔道具類も病気や怪我に対応する必要が出てくるので同様であるが……こちらはクリアブラッドや治癒の魔道具等があるので大きな問題はない。幸いその辺はヴァルロス達との戦いに備えてそれなりの数が用意されたからな。あって困るものではないというのも大きかったが。いずれにせよ、既にある物はきちんと有効活用していきたいところである。

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― 新着の感想 ―
[一言] 少年魔人「最初に言っておきたいことがある」 覚醒魔人「なんだ、弱き者よ」 少年魔人「封印すると飯が、まい○ーっ!」 魔人たち「「「「「な、なんだってーっ!?」」」」」 というコメディタッチな…
[良い点] 獣も氏族探したいとテオに石板を渡した
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