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番外1330 封印倉庫を守るために

 諸々の品々をしっかりと封印倉庫に保管する。いわくつきの品を収めていても問題が起こらないように収納容器が封印術を維持する仕掛けで、これは迷宮によって機能が維持されるという寸法だ。


 後になってエンデウィルズの城の厨房で悪霊騒ぎになったとか、原因不明の爆発事故等といった不慮の事態というのは起こらないようにしたいというか。封印倉庫の建材自体かなり強固だし結界や隠蔽術も施してあるけれど。

 後は……内部の環境魔力の変動などをモニターできるようにしておくか。


 ともあれ、現時点ではそこまで危険な事にはならないだろう。ガルディニスの遺した品々で問題があるのは主に邪法が記された手記であって、主に知識面で危険というだけだからな。呪物については解呪してあるし、念のために封印術も施してあるのでいわゆる付喪神になるなどの問題は起こらないはずだ。


「いっそ、エンデウィルズの司書や料理長に魔法生物を据えて、封印倉庫も一緒に管理していってもらう、というのも良いのかも知れないわね」


 ローズマリーが少し思案しながら言った。


「ああ。それは良い案かも。それなら今後も安心できる」

「そうなると……ソードメイデンあたりを改造して、それらの役職を担ってもらうのが良いかも知れないわね。元々ソードメイデン達はエンデウィルズ城の女官枠だから、書庫の管理や厨房での料理も行えるわ」

「城で働いていても違和感がないのは良い事ね」


 目を閉じて頷くクラウディアと、笑って応じるステファニアである。なるほど。ではソードメイデンを2人程、迷宮内部から出られるようにしておくか。


「それなら、元々本の取り扱いや料理に関する知識があるわけだね」

「そうね。それらの仕事に特化している、というわけではないけれど、全体的に卒なくこなせるわ。本当は剣を装備しての戦いが一番得意だったりするのだけれど」


 エンデウィルズ城にいるソードメイデンは……見た目は青銅のような質感のメイド達だ。名前の通り手首や足首のあたりにブレードが収納されており、それらを使って踊るように戦うのだとか。

 後でソードメイデンも解析して制御術式を見せてもらおう。ティアーズ達と同系列の月の技術体系で造られているはずなので、ノウハウのある現状なら改造にもそれほど時間はかからないはずだ。


「それじゃあ、この後ソードメイデンを連れて工房へ行こうか」


 そう言うとみんなも頷く。どんな風に改造するか等、決めていきたいところである。


「友人が増えるのは喜ばしい事です」

「ふふ。オウギはカストルムとも仲良くなったもんね」


 オウギが言うと、ユイは楽しそうに笑っていた。うむ。




 そうして候補となるソードメイデン2人を迷宮内部から連れ出せるように処置を施し、俺達は工房へと向かったのであった。


「ソードメイデン達は姫様の身の回りのお世話をする役割でもあります。人に接する時の対応や礼儀作法もきちんと組み込まれていますから、外に出られるようにしても安心ですね」


 と、ヘルヴォルテがそんな風に教えてくれた。ソードメイデン達はヘルヴォルテの言葉を肯定するように丁寧に一礼してくる。

 外に出られるようになっても管理者であるティエーラは勿論、代行者であるクラウディアや俺達、それに直接の上役であるヘルヴォルテの命令もきちんと聞くようだ。


 元々根幹の部分でそういった魔法生物として造られているからだろう。特に、クラウディアの安全確保は絶対のようで、今も護衛するように傍に寄り添っている。

「何だか女性型のゴーレムというとライブラさんに似ていますよね」

「これから司書役にもなるっていうのも似ているかも知れないね。テオ君の話じゃ戦闘能力も結構高いっていう話だね」

「ああ。その辺の戦闘能力もきちんと残してあげたいけれど」


 ビオラとアルバートの言葉にそう応じる。


「この子はどんな装備を身に付けているんですか?」


 コマチが首を傾げると、エルハーム姫も興味があるといった様子でソードメイデンに視線を向ける。

 クラウディアが「武装を見せてあげて」と指示を出すと、ソードメイデン達は少しみんなから離れ……安全の確保できる位置まで移動する。


 そうしてまず片方が軽く一礼すると腕を軽く曲げ、肩に掌を添えるように構えて手首の部分から収納していたブレードを展開する。続いてもう片方も一礼し、片足を軽く上げて爪先と踵から小型のブレードを伸ばしていた。


「おお……。隠し武器ですか」

「良いですね。もう少し近くで見せて頂いてもいいでしょうか?」


 コマチが笑顔になり、エルハーム姫も興味津々といった様子で尋ねる。ソードメイデン達はこくんと頷くとその体勢のままで動きを止めた。


 青銅のような質感の身体に対して、ブレードは白銀のような煌めきだ。


「中々の業物とお見受けしました。強度も切れ味も申し分なさそうですね」

「ん。流石はエンデウィルズのお城勤め」


 エルハーム姫が満足そうに頷いて離れ、シーラがそう言うとソードメイデン達は恐縮ですというように武器を収納してから揃って一礼する。うむ。


 そんなわけで今後のソードメイデン達の改造計画について話し合う。


「基本的には隠蔽しているものの管理だからね。司書や料理長としてきちんと振る舞えるように、蔵書の目録や本の適切な管理について覚えたり、新しい料理のレパートリーや衛生管理の方法を覚えて貰ったりする必要があるかな」

「まずは怪しまれない事が重要だものね。発覚してしまったら封印倉庫を作った意味もないし」


 イルムヒルトが納得したというように同意する。

 そうだな。戦闘能力も必要ないわけではないが……エンデウィルズはしっかりとした防衛戦力を有している。まずは封印倉庫の存在自体を発覚させない事が重要だろう。


「ふむ。他には……異変をいち早く感知して通報できる事や情報共有能力を持たせておくというのが良いのではないかの」

「その辺は既存の技術の組み合わせでできそうですね」

「結界術や封印術の一部を持たせておくと戦闘の際の守りと倉庫の封印を両立できて良いかも知れません」


 お祖父さんの言葉に頷くとヴァレンティナも提案してくれる。封印倉庫で起こり得る事態を想定したある程度の対処能力と、味方と連携した上での対応能力、といったところか。目指すべき方向は見えてくるかな。


「外装も少し変えた方が良いよね。司書や料理長として造られているように見えた方が、区別もついて分かりやすいし」


 アルバートが言った。そうだな。ソードメイデンは女官役でもあり、防衛部隊の一員でもあるから、特別な役割を与えられた個体であると判別できないと表向きの仕事の他に、後世でエンデウィルズの戦力を指揮する誰かに封印倉庫管理以外の仕事を割り振られてしまう可能性がある。

 そういう意味でもやはり通常の仕事を完璧にこなせる必要があるな。


「方向性としては決まってきたね。その方向で制御術式に追加の記述をして、外装に変化を加える、と」


 俺がそう言うとみんなも頷いた。では、まず制御術式の解析から始めよう。


「制御術式を見ても大丈夫かな?」


 そう尋ねるとソードメイデン達はクラウディアに視線を向ける。クラウディアが笑って頷くとこちらに向かって肯定するというように一礼してきた。


 外装等を分解せずとも体外循環錬気で解析できるはずだ。背中側に向かって首の後ろに手を翳すようにして作業を開始する。後でメンテナンスする事も考えて外装や素体の構造も見ておく事にしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 明確に違いを付けるなら表面の色を変えるとかでしょうか? 赤くなったり黒くなったり…… 黒は3体必要になりそうな気もしますがw モノアイになってブレードアンテナがついたりはしませんw
[良い点] 獣にもクリスタルパワーメイドアッパー達が居る筈
[一言]  ━━敬愛する姫君に了承を得たソードメイデン達はテオドールに向き直ると、徐に恥じらうような仕草で衣装を脱ぎだし・・・━━ てお「あの、そういうのはいいから。気まずくなるから控えて」 ある「…
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