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番外1323 砂漠の王と巫女頭

 まず外部からという事で、敷地全体を結界で覆っていく作業からだ。結界の為に魔法陣を描いていく事になるが、敷地の上に既に建造物がある。しかも先祖代々の伝統的な建築物だ。なるべく元の形を維持したままで魔石粉やミスリル銀、核となる魔石や魔道具を敷設していきたいところだ。歴史のあるものというのは魔法的にも意味が出てくるし。


 そこで――まずは敷地の外側からコルリスの力を借りて建材の下へと回り込んで地中から魔石とミスリル銀を敷設していく、という方法を取る。

 作業の内容を聞くとエフィレトは驚きの表情を浮かべていた。


「難しそうな作業ですね」

「歴史的な価値のあるものに手を加えるのは抵抗がありますから。過去から伝えてきたものはそれだけで魔法的な効力を高めるので、組み込んだ結界等が強固になるのも期待できます」

「なるほど……。では作業が順調に進むように、一帯の土の精霊達にもお願いしておきますね」


 理由を説明すると納得してくれたようで、そう応じてくれるエフィレトである。


「ありがとうございます。それじゃあ始めようかコルリス、よろしくね」


 エフィレトに礼を伝えてから向き直るとコルリスはこくんと頷いて、俺を肩に担ぐようにして地面に潜行してくれた。

 敷地の下からなので描く魔法陣も鏡写しになるが……そこはウィズにサポートしてもらって失敗や混乱をしないように進めていこう。


 コルリスの術に干渉しないように樽に入れた魔石粉を放出、土魔法で制御して鏡写しの魔法陣の形になるように流し込んでいく。ミスリル銀線の束も制御して魔法陣の一部として構築。魔法陣を形成した場所は周辺の土ごと固めて構造強化。後で崩れないように処置を施しておく。


 コルリスに循環錬気で動いて欲しい方向を伝えていくと、こくんと頷いて魔法陣を構築する方向に向かってくれる。

 土中で魔法陣構築のために右に左に動いて地上部分の結界魔法陣が完成したら、更に地下部分の施設も立体的に魔石粉とミスリル銀線で囲んで封鎖の為の結界を構築。効力、範囲を増強していく。


 一通りのところが終わったら、後は石材の隙間からミスリル銀線を出してやる。地上で見張りの人員が詰める設備内に通してやる形だ。地上で猫の姿をとったカドケウスがアルバートを案内してきて、ミスリル銀線が露出した部分を伝える。


「後はこれに魔道具を繋いでやればいいんだね?」


 アルバートが尋ねればカドケウスが首肯する。というわけで早速作業に取り掛かってくれるアルバートである。契約魔法、警報装置と連動しており結界が発動すればギメル族の集落側で警報が鳴る、という寸法だな。警報装置に関してはまあ、警備用の施設に埋める。警報装置を破壊しようとしても契約魔法に抵触するので問題はない。不審なものがあれば任意で警報を発動させる事もできて、色々と対応の幅も増える。


「――といった内容を、地下作業中のテオドール様から伝えておいて欲しいという事です」


 ビオラが笑顔で通信機の内容をエフィレト達に伝える。エフィレトはありがとうございます、と笑顔になっていた。

 そうして魔石を敷設したり、地下部分での結界構築、秘宝保管庫への防御策など、諸々の作業を終えて地上にコルリスと共に戻ってくる。


「これで大丈夫かな。ありがとうコルリス」


 俺の言葉にこっくりと頷くコルリスである。モニターの向こうでステファニアも笑顔を見せていた。


 警報装置の魔道具を詰め所の壁に埋め込み、巫女頭であるエフィレトと契約魔法を結ぶ。これで一先ずの作業回りは完了だ。


「後は警報装置や契約魔法と連動した結界が、きちんと機能するかの実証実験ですね」

「連動する魔道具も、もう用意してあるからね。後でこれらを集落側に配置すれば良い」


 コマチの言葉に答えるアルバートである。警報を鳴らす装置は3つ。集落の別々の場所に配置する事で運用の際の確実性を上げる、というわけだな。


 手動で警報装置を反応させたり、即席のゴーレムに施設内で暴れさせてやればそのたびに警報装置が発動してけたたましい音が響く。

 ゴーレムとそれを使役する俺のところにもしっかりと呪法が発動しているのは確認できた。呪法に関しては俺が仕掛けたものだしテストなので問題なく解除できる。実際の運用では施設を預かる巫女頭やそれに準じる者からの赦免が必要となってくるが、エフィレトが承知しているテストである以上は最初から許されているのと同じだからな。


 結界発動中の、ギメル族側の出入りに関しても問題ないようだ。選択型の結界はディフェンスフィールドに近い性質があって、味方は通すが敵は阻害するというものだな。


「諸々問題無さそうですね。これで安心して秘宝を保管できます」

「分かりました。後は監視用の魔道具と三つの警報機を集落側に分散して配置しましょうか」

「ありがとうございます」


 エフィレトとそんな会話を交わし、秘宝を保管場所に移してから集落へと戻る。

 集会所、集落の広場。エフィレトの家と……警報機を分散して配置すれば一連の作業は完了だ。

 警報機側も契約魔法の範囲内なので、破壊、無力化、窃盗等でも警報を鳴らす。

 墓所への潜入と警報機への攻撃では違う部分が光るようになっていて……ギメル族の文字で何故警報が鳴っているかの文言が刻んである。それぞれで適切な対応を取りやすくなっているはずだ。今の世代だけでなく後からでも使いやすいだろう。


「何というか、これは相当至れり尽くせりだな」

「かなり防備が厚い気がするな」


 ラプシェムとエンメルがしみじみと頷き合っていた。

 さて。諸々の作業も終わったので、エフィレトも転移門でタームウィルズに案内する事になるだろう。セルケフト王との対面や、ヴェルドガル王国や同盟としての歓待が待っているはずだ。


「集落を留守にしても、中継映像を見られるのは安心よね」

「ふふ、そうですね。墓所側に詰めている墓守担当の安全度もかなり上がったように思いますし」


 レシュタムの言葉にエフィレトも笑って同意する。

 そんな会話を交わしつつ転移門を通ってタームウィルズに移動する。


「これは――」


 視界に入ったセオレムを見上げて、エフィレトが驚きの声を上げる。レシュタムがエフィレトにあれこれと俺達から聞いた情報を伝えたりして、感心したように頷いている。うむ。


 転移港にはメルヴィン王とセルケフト王が姿を見せていて、俺達とエフィレトの姿を認めると迎賓館から出てきて迎えてくれた。


「ヴェルドガルを預かる王として、エフィレト殿の来訪を歓迎しよう」

「私もだ。会えて嬉しく思う」

「こちらこそ。お会いできて光栄です」


 と、メルヴィン王達とエフィレトが初対面の挨拶を交わす。俺はまだ転移門の意匠を仕上げる仕事が残っているので、それが終わったら王城に移動しよう、という事になった。

 今後の国交、後始末等で話をするにあたり、俺にも立ち会って欲しい内容があるのだそうな。


「分かりました。では少々お時間を頂きます」


 そう言って作業に移る。転移門の意匠を完成させるだけだが、予定があるからと手抜きにならないようにきっちり造らないとな。


 そう思って作業に移ったが、メルヴィン王達は意匠造りも楽しそうに見ていた。やがて門の意匠造りも終わるとセルケフト王とエフィレトが感謝の言葉を伝えてくる。


「自分の仕事が無事に一段落して安心しました」

「ふっふ。では、王城へ向かうとしようか」


 俺の言葉にメルヴィン王もにこやかに笑って、みんなで王城へと移動する。国や同盟としてセルケフト王とエフィレトの歓待も行われるが、まずは王城で少し話をしてからだな。

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― 新着の感想 ―
[一言] コルやんと組んでの仕事は土の宝貝を使っていた敵と戦って以来でしょうか。 戦闘ではなく土木工事ではありますがw
[良い点] モニターの向こうのステフの笑みに危険を感じた獣だった
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