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番外1316 墓守の今後は

 目を覚ますと隣にステファニアとエレナがいて。手を繋いだり、そっと抱きついたままで、静かに寝息を立てていた。

 隣に誰が眠るか、というのは継続している。別行動が増えているのは致し方ないが、一緒にいる時は変わらずといったところだ。


「ん、んん……」


 ステファニアが少し声を上げて、手の感触を確かめるように握った手に軽く力を込めたりしてから眠ったまま楽しそうに微笑む。

 どんな夢を見ているのか。ステファニアは普段は第一王女だった事もあって、公的な場ではきりっとしているが、本当は屈託のない無邪気な性格というか。安心できる場所や眠るとこうやって無防備な素の部分が出るところがある。


 そっと抱きついて来ているエレナは……眠っているとややあどけない印象もあるかな。普段からしっかり者で真面目だが、眠ると年齢相応な部分が見える気がするというか。グレイス達によれば知り合った頃より眠っている時の表情が穏やかになった、との事だ。

 エレナも……知り合う前は色々と大変だったからな。一緒にいる事で安心してくれるのであれば俺としては言う事はない。


 そのまま横になってみんなの寝顔を見たり、温かさに身を任せたりしていたが、やがてみんなも目を覚ました。


「おはようございます」

「うん、おはよう」

「ええ。おはよう、テオドール」


 みんなと朝の挨拶を交わす。寝台から抜け出して身支度を整え、それからやや遅めのゆったりとした朝食だ。


 セオレムにいるアルバートと連絡を取り合い、後で工房にて顔を合わせる旨を打ち合わせておく。


『――それじゃあお昼を済ませたら工房で落ち合おうか』

「そうだね。俺もそれまでに執務を進めておくよ」


 という事で話が纏まる。執務に関しては状況的にも落ち着いているから、そこまで重要な案件はない。というより俺の判断や指示が必要なものは旅先でも把握しているからな。後は報告書や決裁の書類を処理していくだけという段階になっているので、しっかり仕事は進めていこう。




 というわけでみんなと共に執務室に移動して、のんびり茶を飲みながら留守の間にたまった書類を片付けていく。

 シルン伯爵領については当然ながらというか、俺の留守中もアシュレイがきちんと仕事を進めているので特に問題はない。


 俺自身の魔法処理領域であるとか、カドケウス、バロールとの五感リンク。ウィズの処理能力を併用して、書類の確認を並行して進めていく。処理が終わったものは種類ごとに纏めて、ティアーズやアピラシアの働き蜂が保管していく、といった具合だ。


「テオドールの書類仕事の進め方は見ていて小気味が良いわね」

「ん。書類が見る見る減っていく」


 ローズマリーが笑い、シーラがその言葉にこっくりと頷く。


「今日は昼過ぎから工房に顔を出す予定もあるからね。少し本気を出してる」


 少し前はみんなと一緒に執務を行っていたのでお茶を飲みつつまったりと執務を進めていたが、今は身重という事もあって無理をさせたくないというか。その分だけ俺が本気を出せばいい。

 見ていて楽しいというのなら何よりだ。速度優先でチェックが疎かになってしまってはいけないので、内容の確認はしっかりとしていこう。


 予算や収支関連での計算に問題がない事は確認し終わり、その他の報告書等にも目を通し、その内容を把握していく。

 やがてそれらの確認も終わったので指示書を作っていく。紙に魔法で文章を着色して一気に形成してしまうので手書きより速い。まあ、サインと印鑑だけは自分の手で行うが。


 それらが出来上がると、ティアーズが届けてこようかと申し出てくる。


「いや。こういうのは直接渡した方が良いと思うからね。留守の間にきちんと仕事をして貰った事にもお礼を言いたいし」


 そう言うとティアーズはこくんと身体を傾ける様にして応じる。

 というわけで指示書を届けがてら城の一角で仕事をしてくれている文官達にお礼を伝えてくる。


「指示書を作ってきたんだ。それから……普段から丁寧な仕事をしてくれているのが分かるから、ありがとうと伝えておきたくてね」


 上がってきた書類に関しては計算ミスもないし、現場で何か問題があればそれも纏めてくれているからな。問題は何かしら起こるものという前提で、進言があれば文章で纏めて気楽に提出して欲しいという事も伝えている。


「勿体ないお言葉です。境界公とアルバート殿下のお作りになった魔道具が便利で、書類も形式が定まったので再点検する時間的余裕ができたというのも有りますね」


 文官達は笑顔を見せて、その言葉に同意するようにうんうんと頷いている。時間的に余裕が生まれて二重チェック等が簡単になったというわけだ。それらの魔道具や形式ができる前から仕事ぶりは丁寧だったが、余裕を持って仕事ができるというのは喜ばしいな。


「指示書の内容については皆で目を通して共有しておきましょう」

「ああ。よろしく頼む」


 そんなやり取りをして頷く。


「それにしても境界公のお仕事は迅速ですな」

「それはまあ……魔法生物に補助して貰ったり、術式制御の魔力を仕事用に割り振ったり、術式計算の確認や書類作成をしているからかな。上がってくる書類がしっかりしているからというのもあるけれど」


 計算用術式のマジックサークル等を宙に浮かべつつ答える。一例なので変数を入力すれば四則演算できるという、電卓の役割を果たすだけの簡単なものではあるが。


「魔道具無しでも同じような事ができるというわけですか。便利なものですな……」


 文官達は感心したような反応を見せていた。




 文官達のところに顔を出した後はみんなと一緒に昼食を済ませ、午後になったら工房へと足を運ぶ。みんなと共にフロートポッドに乗って移動だ。


「ああ、丁度良かった」

「やあ、テオ君」

「これはテオドール公」


 工房に向かう途中でアルバートやオーラン王子達を乗せた馬車を見かけて、地上に降りつつ声を掛けるとアルバートやオーラン王子達が笑顔で応じてくれる。エルハーム姫やラプシェム達も一緒に移動しているようで、車窓から挨拶を返してくれた。


 みんなとも昨日の時点で対面しているので昼の挨拶をしつつ移動していき、工房に到着する。


「これは皆さんお揃いで」

「ふふ。待っていました」


 と、コマチとビオラが顔を出して迎えてくれた。お祖父さん達も一緒だな。初対面の面々を紹介した後で、早速本題に移っていく。


「では……早速ではありますが、彼の様子を見に行きましょうか」


 というわけで工房の一室にアルバートが案内してくれる。墓守は、室内の一室に鎮座していた。半身は間に合わせのゴーレムだが、歩くぐらいは問題なくできるので、俺達が顔を見せると立ち上がって応じる。


「良かった。内側にあったものを攻撃に使っていたから心配だったのですが、一先ず問題はなさそうですね」


 その様子にオーラン王子が笑顔を見せると、墓守は大丈夫というように頷いていた。


「元々切り札として内部に仕込んでいたようですが、それだけに活動そのものには影響の出ない構造になっていたように見えますね」


 と、コマチが見解について説明してくれる。

 壊れた半身については砕けた外装などの破片も余すところなく回収してきているから修復に関しては一先ず問題あるまい。

 墓守も修復自体には異存がないようだが、ジェーラ女王達が冥府に去ったから、与えられた使命が無くなってしまった、というのがあるな。


 だから、墓守の今後も含めて相談するというのが今日工房にみんなで集まった理由というわけだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔法で表計算もお手の物っぽいですし、仕事が早くて正確なのも納得ですw 文官用に通信機と組み合わせて魔道具化するのも面白そうですね。 ペーパーレス化してしまいそうではありますがw
[良い点] 獣は墓守に六神合体ゴット土竜計画を持ち掛けた
[一言] (*ノ´ω`)ノ「王子! 王子~! ワタシ 王子 ニ トツグ! エ? チガウ? 就職? コトバ ムズカシイ」  いっそ、生活魔法の派生として『事務魔法』として体系化・編纂したら、文官さんは…
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