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2027/2811

番外1252 未来に思いを馳せれば

「テオドール様が色々と準備して下さっていましたから、楽しみです」


 フロートポッドに乗り込んで、城に戻る道中でエレナが言う。


「ああ。迷宮核で少し調べたり、コウギョクさんにも手伝ってもらったからね」


 経過が順調なら解呪儀式を行うと事前に決めていたからな。お祝いの料理等も事前に準備していた。迷宮核ではより美味しさをあげるための調整を行った。

 少し手間がかかるので昨晩から厨房の一角でゴーレム達が調理を進めている。儀式を終えて戻れば丁度良い塩梅になるのではないだろうか。


「新しい料理……種類があるって言ったけれど。うん。楽しみだわ」


 と、ステファニアも笑みを見せている。


「そうだね。色々用意した方が盛り上がるかなって」


 そんな会話を交わしつつ、やがて城に到着する。フォレスタニアの神殿から城を行き来するだけなので、移動には大した時間はかからない。

 正門から入ってみんなで中庭に向かうと、セシリアが俺達の姿を認めて笑顔で応じてくれる。


「おかえりなさいませ。無事に解呪儀式も済んだようで何よりです」


 セシリア達が食器や椅子、テーブルを用意し、ゴーレム達が大鍋を中庭に運んで来ており、既に食事の準備が進められている。

 即席の竈と調理台も置かれており、これらを使って饗される料理の最後の仕上げをしていく、というわけだな。


「それでは皆様が戻ってきたので料理を仕上げていきましょう」


 と、コウギョクが鍋に麺を入れて茹でてくれる。そう。今回はラーメンを用意しているのだ。麺やいくつかの食材、副菜についてはコウギョクに用意して貰っている。

 スープを何種類か作っており、塩、醤油、味噌、豚骨といった各種スープの味が良くなるように迷宮核で仮想の調合をしてクオリティを高めた、というわけだな。魚介や鳥ガラ、豚骨で出汁を取ってスープを作るにしても、仕込みにそれなりに時間がかかるので、試行錯誤の時間を減らすのには有効だった。


 具についてはチャーシュー、煮卵、メンマ、ネギにほうれん草といった基本的というか、定番なところではある。後はワンタンもだな。これについてはコウギョクが用意してくれたもので、ワンタンメンもできる。


 コウギョクによれば俺の提案したものは色々工夫されていて面白い、とのことだ。基本的には澄んだ塩スープで、具材もこんな風に色々とトッピングはしたりしないそうで。


 ともあれ麺が茹で上がったら湯を切ってスープと合わせ、具材を乗せれば出来上がりである。この辺は流石プロの料理人である。見た目も良い感じに盛り付けてくれた。

 スープを何種類か用意しているので、各々好きなスープを選んでもらうという形だな。おかわりも想定して小さめの器に盛り付けてある。


「良い匂いだな。食欲をそそられる」


 ルドヴィアが目を閉じてそんな風に言うと、子供達も真似るように目を閉じて嗅覚に集中しているようだった。ルドヴィアの指導を信頼している、といった雰囲気があるが。

 ルドヴィアはそんな子供達の様子に少し笑う。


 そうして各々にラーメンが行き渡ったところで食事の時間だ。まず豚骨の仕上がりを見てみたが……これは良いな。豚骨……といっても迷宮オークだったりするが、迷宮産ならば食材としては良いものである。

 麺はコウギョクが仕込んでくれたものだが、スープの味を見て色々とそれぞれに合わせて食感が良くなるように調整してみた、との事で。麺のコシが絶妙な具合である。


「ん。これは美味」

「具も柔らかくて良いですね」


 ラーメンを口にしたシーラが耳と尻尾を反応させ、アシュレイもにっこりと頷く。


「気に入って貰えて良かった」


 主賓であるルドヴィアと子供達、アルハイムやエスナトゥーラ達も、並んでラーメンを楽しんでくれているようで。一口目を口に運んだ後で驚きの表情を見合わせた後で笑顔になっていた。

 ルドヴィアも解呪した後もあまり表情に感情は出さないが、一杯目を完食してから何度か頷いた後で、スープを変えつつ次の1杯を頼んでいたから、彼女にも大分気に入ってもらえたようで。


 アルハイムは味噌ラーメンが気に入ったようで、一口目は驚きの表情で固まっていたようだ。2杯目も同じスープを選んだあたり、とても気に入ったのだろう。


 他にも春巻きや小籠包、酢で和えたサラダといった副菜も用意してあり、みんな思い思いに食事を楽しんでくれたようだ。


 カストルムも以前造った簡易の五感器とリンクする事で食事を楽しんでいる。本体の改造は大がかりになってしまうしな。カストルムは戦闘用として、装甲や内部構造も仕上げられているから、改造するのならばきっちりと計画しないとならないが、あれならば即席でも味を楽しむ事が可能だ。


 望むならばカストルムの日常生活用スレイブユニットも用意すれば、今後も食事を楽しんだりする事もできるはずである。




 食事の後はみんなでお茶を飲みながら、一緒に歌ったり演奏に耳を傾けたりといった時間を過ごす。イルムヒルトがリュートでゆったりした曲を奏でればエスナトゥーラがリズムを取りながら腕に抱いたルクレインをあやし、ユイとリヴェイラが笛の音色を響かせれば、ザンドリウス達が目を閉じて耳を傾ける。


 ルドヴィアやザンドリウス達も音楽に聞き入ってくれているようなので魔力楽器を持ってきて自由に触ってもらう時間も作ると、割合楽しそうに楽器に触れて語り合ったりしていた。


 そんな調子で賑やかながらものんびりとした時間を過ごさせてもらった。


 さてさて。解呪祝いという事で街の施設や劇場に繰り出す予定も立てている。幻影劇ならば人の世の歴史や暮らしぶりを見る、という事もできるからな。

 ルドヴィアやザンドリウス達は第二世代以降の魔人だし、カストルムやアルハイムも人の文化的な側面には触れてこなかった。その辺を考えれば幻影劇を鑑賞してもらう、というのは良いのではないだろうか。


 ザンドリウスを始めとしたルドヴィア氏族の子供達は本を読んで色々な事に興味を持っているようだし、その辺も幻影劇とは相性が良さそうだ。




 というわけでルドヴィア達とカストルム、アルハイムを幻影劇場に案内したのであった。

 一度同じ幻影劇を見ている面々も、新しく来た面々との交流という事でまた幻影劇場に足を運んで同じ時間を共有する、というのも悪くない。話題作りになるからだ。

 そんなわけでエスナトゥーラ達が観劇している間、俺達が幻影劇場の託児所でルクレイン達の面倒を見させてもらう、というのは変わらずだな。


 マルレーンからランタンを借りて色んな光の動物を空中に浮かせてメリーゴーラウンドのように回転させる。それを見た子供達は手足を少し動かしながら声を上げていた。うむ。楽しんでくれているようで何よりだ。

 それを見たティールも楽しそうに声を上げていたりするが。


「ふふ。テオが子供をあやしているところを見ると、嬉しくなりますね」

「これから先の日常を想像するとね」


 グレイスとクラウディアがにっこり笑って肩を震わせ、そんな風に言ってくる。


「んー。そうだね。俺としても事前にこうやって小さな子をあやす経験ができて、嬉しく思ってる」


 少しの気恥ずかしさから、頬を掻いて苦笑しながらも答えると、みんなも表情を綻ばせたり、羽扇の向こうで頷いたりしていた。


 迷宮村の面々も手伝ってくれているので、育児経験豊富な顔触れに教えてもらいながら色々な状況に対応する勉強ができるというのもあってありがたい。

 小さな子を預かっているので、安全管理や体調面でのモニターはしっかりやりたいところではあるがな。

 そうしている間にも幻影劇が上映される。カドケウスで劇場ホールの様子を見せて貰っているが、ルドヴィア達は食い入るように幻影劇に見入っているようで何よりだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] おかわりに対応しているということは、1杯がわんこ的な少量のラーメンなんでしょうか。 ちび○くを思い出したりw 今だとマグ○ードルなんでしょうけどw
[良い点] 獣は至高の逸品豚の骨髄入りの白黒豚チャーシュータワー蒟蒻麺背脂マシマシを繰り出した
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