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1997/2811

番外1223 護ったものは

 というわけで、ラングハイン伯爵に頼み事をして、倒した魔物の処理が済んだらその場から移動する、という事になった。

 その前に魔物素材の剥ぎ取りと、魔石の抽出を行う。

 後は遺骸から疫病等が流行ったり他の魔物の餌になったりしないよう、然るべき処理をしてから埋葬、というわけだ。剥ぎ取った素材、魔石を木箱に収納し、残りは即席のゴーレム馬車に乗せたりといった作業をする。


 倒木は戦闘の余波であちこちにあるので、それらを片付ける意味でも木材として利用してやれば一石二鳥だ。通行の邪魔になりそうなものから順に材料にしていき、魔物の遺体も別に作った棺桶とゴーレム馬車に積んで、一先ず森の外まで移動させる事にする。


「処理をせずに原木をそのまま木材として使えるというのは……魔法というのは便利なものですな」

「諸々ゴーレム作製系統の術なのでしょうが……見事なものです」


 騎士達も見張りをしつつ倒木をどかしたり魔物を運んだりと作業を手伝ってくれながら、そんな風に感心しているようであった。

 魔物達はまあ、数を減らして森の奥に去ったので、今のところこの近辺は空白地になっているな。


 騎士達は信号用の狼煙をあげる魔道具で後続部隊にも合図を送っていた。「一先ずの危険は去った。こちらまで来るように」といった内容であるらしい。

 こうした狼煙の魔道具が開拓村にもあったから領主の直轄地から飛竜に乗って開拓村経由で駆けつけてきたという事らしい。そこで冒険者達から話を聞き、状況を見て、場合によっては俺を救出するという事も視野に入れていたそうだ。

 俺が冒険者達を逃がすまでの足止めをした、と見るのは妥当な所だろうから。


 開拓村を根城にこちらの方面で活動していた冒険者は他にも2組いたが、他の2組はもう探索を終えて村に戻っていたから人的被害は今のところ報告されていない、との事だ。

 件の冒険者達も無事という事で何よりである。開拓村まで走ったので疲労困憊気味だった、という話ではあるが。


「もう少しすれば合図を受けた後続部隊もやってくるはずです。魔物の後始末も本来ならば我らの仕事。後の始末は我らにはお任せ下さい」


 ラングハイン伯爵がそんな風に言う。


「分かりました。森の外まで運んで安全に処理できる環境を確保できたら、というのが良さそうですね。それから……魔物達の素材の幾らかを引き取ってもらえませんか? 共同で作業をしたわけですから、今回部隊を編成した費用等にも充てて頂けたらと思います」


 俺が仕留めた魔物の分からなら渡してしまっていいだろう。みんなの仕留めた分はみんなの物という事で。

 その辺もシリウス号側で待機しているみんなに伝えると、笑って頷いていた。




 さてさて。諸々を森の外まで運んで待っていると、後続部隊もやってきた。運搬しやすい形にしてあるので、後は運んで処理してくれるそうだ。


 そんなわけで後の事は任せて、俺達はラングハイン伯爵達と共に移動していく事となった。

 俺はレビテーションを用いつつカストルムに乗せて運んでもらう形だ。剥ぎ取りした魔物素材は大きな箱に入れて、メダルゴーレムを組み込んでレビテーションを用い、繋留用のロープに繋いでカストルムが吊り下げて運ぶ、といった具合だな。


 飛竜の通常飛行と同じくらいの速度で飛ぶカストルム。騎士達には少し後から付いて来て貰いラングハイン伯爵と話をしながら現地に向かう。


「では移動中にシリウス号を見せておきます。シリウス号は光魔法、風魔法等で覆う事によって姿を隠せるのですが、魔法の及んでいる範囲に入ると見る事ができるようになります」

「ほうほう」

「もう少し左手側に進むと視界に入ります。外からは僕達も見えなくなりますが、まあ……そこは船側を覆っている魔法を調整して誤魔化しましょうか」


 光魔法のフィールドに干渉し、俺達と寸分変わらない幻影をそこに置く、と。移動中もまだ少し話をするという事で、人払いを兼ねて騎士達も離れた場所を飛んでくれている。


 というわけでフィールド内に入ると、シリウス号が見えるようになって……ラングハイン伯爵は驚きの表情を浮かべていた。


「おお……。本当にこのような大きな船を、ここまで近寄るまで感じとる事もできないとは」


 フィールドの形と位置関係を調整して、シリウス号を見てもらう。船体の装飾や掲げている国旗等からヴェルドガルのもの、というのは分かるはずだ。

 後は幻術ではないという事を示すために艦橋に少し触れてもらったりもした。


 そうして一通りの確認作業を終えたところで眼下に目的の場所が見えてくる。シリウス号もフィールドに他の騎士達が接触しないように少し距離を取る。


 俺達が向かった先は――深魔の森から一番近い開拓村だ。森で見た冒険者達が救援を呼びに行った場所でもある。魔力溜まりにも近い事から外壁も構築されていて、規模の割に防備が厚い事が窺える。


 俺達が空から近付いていくと、村の広場で焚火の周りに座っていた冒険者達が立ち上がる。森で見た冒険者達だな。


「無事だったのか……! 心配してたんだ……!」


 伯爵やカストルムと共に降下すると、キュレオと名乗った冒険者が俺達のところに駆け寄ってくる。


「この通り、無事です。救援を呼んでくれてありがとうございました」

「いや、怪我がなかったのならそれでいい」

「ふふ。森の魔物はマティウス殿達が撃退してくれた。心配はいらないだろう」


 キュレオ達と言葉を交わすと、ラングハイン伯爵も開拓村の住民にそう説明する。開拓村の住民達は顔を見合わせて安堵の表情を浮かべていた。


「まあ、僕が頑張ったというより、仲間達も一緒に対応に動いてくれた、というのが大きいのですが。一番の大物を仕留めたのも、僕ではありませんし」

「マティウス殿の友人達は外に逃げた魔物がいないか確認しに行ったとの事だが」

「そうですね。道を辿って開拓村も見に来ると思います……と、ああ。彼らですよ」


 そういう風にラングハイン伯爵には口裏を合わせてもらうように頼んでいる。封印術の魔道具をバロールが艦橋で再び起動し、少し離れたところに停泊したシリウス号から、村にやってくるテスディロス達である。


 そうやって俺達と一緒に戦った、という事を伝えると、村人達は笑顔で歓迎していた。


「お陰様で助かりました……!」

「ありがとう……!」


 と、大人や子供達からお礼を言われるテスディロス達である。

 そう。開拓村を見に来たかった……というよりは、特にエスナトゥーラにあの戦いで何を守ったのか、見せてやりたかったというのがある。


「ええ。無事なら何よりだわ」


 女の子から「ありがとうおねえちゃん」と言われ、エスナトゥーラが目を細める。

 幼い子供を抱えた母親の姿も見てとったのか、エスナトゥーラも静かにではあるが、口元に笑みを浮かべて頷いていた。


『エスナトゥーラさんも嬉しそうで……良かったです』


 それを見たアシュレイが笑みを浮かべてそう言うと、マルレーンもこくこくと頷く。


「ふふ。お母上も嬉しそうですよ、ルクレイン様」


 モニターに映るエスナトゥーラにフィオレットも腕に抱いたルクレインをあやしながら言って。

 そんな調子で艦橋に残っている面々、通信室で中継映像を見ている面々も和やかな表情を浮かべていた。


「どんな方々かと心配していましたが……解呪すると物の見方や感じ方が変わると聞いて納得しました」


 そんな風にラングハイン伯爵が伝えてくれる。


「そう言って頂けると、僕としても目標への励みになります」

「はい。私も陰ながら応援しておりますぞ」


 その言葉に頷き、後から国元に戻ったら今度は正式なルートで手紙を出すと伝えておく。折角接点を持てたわけだしな。

 まあ、とりあえずは魔物素材の分配などを済ませてしまうとしよう。

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