表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1981/2811

番外1207 砂塵と遺跡と

 モニュメントと同時に監視役となるハイダーも配置しているので、この後の状況確認はそちらで行っていけばいいだろう。

 少し様子見をしながら船に戻り、中継映像についてはフォレスタニアにいるティアーズがこちらに向かってマニピュレーターを振りながら担当する、と応じてくれた。


 ん。そうだな。今回は監視場所が多いので、同行しているティアーズに監視してもらっていると人手が足りなくなる事もあるだろう。その点、フォレスタニア側にいるティアーズ達ならば問題なく監視任務に集中できるから、連係して作戦を進めていきたいところだ。


 さて。では砂漠に点在する拠点を順番に巡っていくとしよう。バハルザードとネシュフェルの間に跨る砂漠地帯を移動していく事になるが、これらはまあバハルザード側に属するだろう。

 シリウス号の艦橋にみんなで戻り、高度と速度を上げながら次の目的地に向けて移動していく。


「バハルザード国内の拠点で気になるのは……ここかな、やっぱり」

「当時のベリスティオ殿が本拠地と定めた場所ですな」


 俺の言葉にオズグリーヴが頷く。戦時の上にベリスティオは機動力を重視していたから都という扱いではなかったらしいが……それでも本拠地という扱いだったそうだ。この本拠地に関しては攻め落とした人間側の砦を再利用してその周辺に拠点を構築した場所、という事らしい。


 あちこちで集めた情報を総合すると、七賢者との戦いで盟主が敗れて以降は打ち捨てられている、という話だが。

 一方で人間達としても魔人達の住んでいた土地であるから忌避されたか、接収して再利用される事はなかった。


 魔人達も殊更思い入れで動く種族ではないからな。結局どちらの陣営からも顧みられる事はなかったらしい。


 七賢者と盟主との戦いという事で、相当な激戦となったそうな。魔人達にとっては戦時中の臨時本拠地程度の扱いである事や、占拠した人間達からも放棄されたという事実から考えれば、水源以外はさしたる物も残っていないのでは、というのがベリスティオやオズグリーヴの見解である。


 ベリスティオから見ても後世において重要視されるようなものは置かれていなかったという認識だしな。


 だとしても……儀式という観点から見ると話は変わる。各地に散らばった魔人達にとってのルーツというか、縁の深い土地であるのは間違いないから、俺達にとっては抑えておくべき場所という事になるな。


 そうした話をしながらも周囲の状況、生命反応も見つつ砂漠を進んでいく。やがて次の拠点跡地に到着し、最初の地点と同様にモニュメントを設置していく。


 隠蔽フィールドも展開しているし、魔道具自身にも護符を仕込んで注意を引かないように対策をしている。拠点跡地に到着した際、馬程の大きさもある蠍の魔物とニアミスはしたが、あちらは気付かず。空中に留まって少し待機していると勝手にどこかに去って行った。

 一先ずは……魔物からの隠蔽に関しては問題無さそうだな。


 そうして砂漠を回ってから、ベリスティオのかつての本拠地への航路を取る。

 風によって形成された砂の丘がどこまでも連なる景色――。その向こうに何かが見えてくる。石材で造られた建築物が見えているのだ。一部は埋まっているが、元々が砦であったからか、ある程度全容も分かるな。


「崩れているけれど、まだ地上に残っているんだね」

「そのようですな。土魔法に通じている者も当時はいたので、彼らが増築を担ったわけですが……その辺は埋まってしまっていますな。臨時とは言え本拠地ですから、砦を増改築してそれなりに大きな拠点となっていたと記憶しております」


 本拠地というだけあって他の拠点跡地よりも整備されていたという事だろう。同時に内部構造も変えて、内部情報があっても攻略しにくいように改造まで施していたそうだ。


「やや古い記憶で細部は違っているとは思いますが――」


 と、オズグリーヴが煙を使って当時の記憶を大雑把に再現してくれる。

 中心部に砦。一体化するように外縁部に建物が連なって……砦と街が一体になったような外観をしていたようだ。


「当時の外縁部は砂に埋まってしまっているようだな」

「中央の砦も砂を被っている上に崩れてしまっているようですが」


 と、テスディロスとオルディアが言う。


「当時は大魔法も飛び交いましたからな。砦の北側が大きく抉られているのは、巨石を凄まじい勢いで叩き込まれた事によるものだった、と記憶しておりますぞ」

「崩落から推測される石の大きさだと……メテオハンマー級の魔法かな」


 七賢者ならそれぐらいの大魔法も使いこなして見せるだろう。


『激戦の跡地、ですね』

『戦史的な価値もあって、興味深いところではあるわね』


 アシュレイとローズマリーが言う。歴史的な史料価値というのは確かにな。魔人達の瘴気特性等々で忌避されなければ砦も再利用されたのかも知れないし……取り返しに来るかもと考えてしまうと半端な戦力を置いておくわけにもいかない。


 シリウス号が高度と速度を落として近付いていくと、細部も見えてくる。

 砦内部に井戸の痕のようなものが残っているのが見て取れるが……これも砂を被ってしまっているな。水場として利用するには少し手を加えないといけないし、地下水を利用しているからオアシスとは違って周囲に生命反応が集まっている、といった事もないようで。


「一先ずは――そうだな。砦の中心部に魔道具を配置したい、かな」


 シリウス号を近くに停泊させたところで言う。

 当時の本拠地となれば象徴的な意味合いとしては十分だ。こちらとしても儀式を行うに当たって抑えておきたい。


「崩落しているのであれば、建材に偽装すれば砦内部の設置でもなんら問題は無さそうですな」

『瓦礫に紛れさせる、というわけですね』


 ウィンベルグの言葉に、モニターの向こうでエスナトゥーラが真剣な表情で言う。

 そういう事になるな。モニター越しではなく周囲を直接見て、問題がないかも調べつつ砦を見ていくとしよう。


 オズグリーヴやテスディロス達が同行してくれるのは変わらず。今回は七賢者にも縁があるという事で、カルディアも一緒に行きたいとの事だ。


「それじゃあ少し行ってくる」


 そう伝えると、アルファやアピラシア、ティアーズといった面々がこくんと頷く。


「我は働き蜂達と共に艦橋から周囲を見張っておこう。何か見つけたら伝声管――よりも通信機で連絡する」

「ん。よろしく頼む」


 俺も頷くと、ルベレンシアも楽しそうに笑う。

 折角人型になったのだからと、魔道具を色々使いこなしているルベレンシアである。アウリアとも性格的に気が合うらしく、通信機でやり取りもするそうな。

 では、モニュメント設置に向かうとしよう。


 甲板に出てから同行する面々を迷彩フィールドで覆い、甲板から状況を確認。生命反応は問題ない事を確認している、が……。


「外縁部の砂の中に、何か魔力反応があるな」


 結構大きな……何だろうか。少し歪な、球体のような。魔力反応はそこまで強いものではないので、実際にもう少し近付いて調査しないと分からない。

 その事を伝えるとオズグリーヴが思案を巡らせてから口を開く。


「調査をする必要がありますか。その大きさの魔力反応……私には心当たりがありませんな」

「そうなるね。心当たりがないっていうのもまあ……後から配置された物かも知れないし、危険物だって決まったわけでもないからな」


 とりあえずモニュメントはシリウス号側に残しておいた方が良いな。戦闘に巻き込まれて破損したら目も当てられない。

 その事を伝えると、アピラシアの働き蜂達がやってきて、モニュメントとハイダーを船の中に運んでくれた。


 では――少し近付いて調査をしてみるとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ