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番外1205 守護者と旅と

 各国の用意してくれた書状も受け取り、モニュメント設置に向かうにあたり、必要なものも揃った。隠密行動用や偽装においてあると便利な護符の類も、以前の作戦でヨウキ帝やユラ、シュンカイ帝やゲンライ老に書いてもらったものが残っているので安心である。


 イグナード王達とのお茶会も和やかな雰囲気で終わって……後は作戦行動に移るのを待つだけだ。

 みんなの体調は良いし、フォレスタニアの執務も滞りなく進んでいるので俺としては後顧の憂いなく作戦に集中できる。


 今回も作戦にはテスディロス達が同行してくれるという事だ。

 エスナトゥーラも参加したいとの事であるが、俺としてはルクレインとの時間も大切にして欲しいからな。何かあったら召喚術で来てもらうという方向でどうかと伝えると、深々とお辞儀されてしまった。


 その後で穏やかな笑顔を浮かべていたのが印象深いというか。召喚術でシリウス号側に飛んでも、ルクレイン自身はフィオレット達が預かってくれるのでエスナトゥーラとしても安心だろう。


「今回の魔道具設置は……魔人達の会合場所をあちこち回って設置するだけだから、隠密行動ができて順調に進むなら、そんなに時間はかからないかな」

「ええ。待っているわね」


 風呂から上がってきたところでそんな風に言うと、俺の言葉にステファニアがにっこりと微笑む。

 モニュメントを設置し、儀式を行ってからの魔人達の動向が重要、というのもあるしな。


 そんなわけで夫婦水入らずで過ごさせてもらう。寝台に寝そべってゆっくりと循環錬気を行いながら談笑したりといった具合だ。


「もっと背も伸びてきたら、やっぱり身体つきも……もっと筋肉がついたりするのかしら」


 と、イルムヒルトが軽く俺の二の腕を揉むようにしながら言う。昼間、背丈の話になったからな。


「んー。どうだろうね。あんまり鍛えて筋力を付けると適した戦い方も変わるから……そこまで筋肉が太くなるほど鍛えたりはしない……つもりではいるけれど」


 背丈がどれぐらいまで伸びるか、どのぐらいで止まるか、等を見つつバランスを考えたいところだ。

 背丈が伸びると感覚や最適な戦い方も変わってくるだろうし、その辺は基礎的な能力や技術の研鑽、魔力の出力と制御能力の向上、覚醒能力の研鑽等と併せて上手く対応していきたいところではあるかな。

 するとその話を聞いていたシーラも俺の肩やわき腹あたりにペタペタと触れたりして頷く。


「ん。テオドールは今の状態でも割と程よく締まってて、感触も好き」

「筋肉の質、でしょうか。感触の違いというのは確かにありますね」


 アシュレイもそんな風に言ってシーラの言葉に同意するように頷く。マルレーンもにこにこしながら俺の腕を軽く揉んだりして。


「まあ鍛えた武官達のような体格というのは、確かに魔術師らしくないと言えばそうかも知れないけれど、私達にしてみれば大きな問題ではないわ」

「ふふ。背丈が伸びたり身体を鍛えても、テオはテオという事です」


 と、クラウディアが目を閉じて言うと、グレイスも笑って俺の髪に触れたりしていた。


「魔力を通して補強するのに慣れていると、順応してより強化が効率的になるというのは聞いた事があります」

「らしいわね。そうなると、テオドールの筋肉の質もそうやって順応したものという事になるかしら」


 エレナとローズマリーも感触を確かめるというように俺の肩等に触れて納得するように頷いていた。……うん。みんなから興味津々という感じで揉まれたり触れられたりして、ややくすぐったい感じはするが……。まあ楽しそうなのでよしとしよう。


 そんな調子でみんなと触れ合ったりしながら、のんびりとした時間を過ごすのであった。




 そうして一夜が明ける。

 今後の予定としては、ガルディニスの隠れ家の封印解除も控えている。モニュメント設置に明確な期限はないが、儀式を行った後の動きに集中する為にも諸々早めに進めていく必要があるだろう。

 というわけで、早速出発の準備を進めることにした。


 自然石に偽装したモニュメントに食糧等々、必要なものをシリウス号に積み込んでいく。

 テスディロス達も既に手荷物を積み込んで旅支度だ。

 今回同行する面々は前回に引き続きテスディロス達。ルベレンシア。アピラシアやティアーズといった魔法生物の面々と、それからリンドブルムといった顔触れだ。

 それと……月光神殿で守護しなければならない対象が無くなった事や大分力も戻ってきた事から、カルディアも今回は俺に助けてもらった恩を返したいと同行を申し出てきた。


 念のために月光神殿の状況も分かるように中継映像を見られるようにしてあるので、その辺カルディアとしても安心だろう。アルファとしてはガーディアン仲間、だろうか。カルディアと顔を合わせると、何やら頷き合っていたが。


「エスナトゥーラさんは後で召喚魔法によって呼ばれる可能性もありますが……食料は船に備蓄があるので問題ありません。旅行鞄等は手配しておきましたから、着替え等々で不自由のないように、シリウス号に呼ばれても問題ないように準備だけはしておいてください」

「わかりました」


 造船所に見送りに来ているエスナトゥーラに今後の事を伝えると、真剣な表情で頷く。緊急時にエスナトゥーラ本人を呼んで、後で鞄を転送魔法陣で召喚したり、という事も可能ではあるかな。まあ、いきなり戦闘の場に来て貰うというような事はしないのでそこは安心してもらいたい。


 そうして諸々の準備も整い、出発する事となった。


「うむ。では気を付けてな」

「テオドール公の武運を祈っている」

「ありがとうございます」


 見送りにはメルヴィン王やジョサイア王子も顔を見せに来てくれていて、そうして挨拶を交わしてからグレイス達とも向き直る。


「それじゃあ――行ってくる」

「はい。お気をつけて」


 グレイス達と出発前にそっと抱擁を交わす。少しの間抱き合って体温や鼻孔をくすぐる香りを感じていたが、やがてゆっくりと離れて頷き合った。……よし。気合も入ったところで頑張っていこう。

 タラップを登って、テスディロス達と甲板へ移動する。アルファに視線を送るとこくんと頷いてゆっくりとシリウス号が浮上し出す。


 お互いに見えなくなるまで手を振り合って、そうしてシリウス号はバハルザードに向けて出発したのであった。




 星球儀を見ながら向かうべき座標を確かめ、最短距離を進む航路を設定する。後は――途中から隠蔽フィールドを纏って進んで行けば良い。

 向かう場所が人里離れた土地だし、余人に情報を漏らさない予定だから基本的には道中でどこかに立ち寄るという事もしないしな。


 出発して少しすると、フォレスタニアの通信室にもみんなが姿を見せた。


『ただいま戻りました』

「ああ。おかえり」


 と、中継映像越しに声を掛け合って笑みを向けあう。というわけで、今後の方針を再確認する意味でも地図をテーブルの上に広げ、小さな駒を使って目標地点を示す。


「さて。地図で言うとまずはここだね。バハルザード国内の、この場所を目指して移動していきたいと思う」


 そう伝えると艦橋と水晶板の向こうとでみんなが頷く。


「カルディアは……迷宮外に出るのは初めてなのかな?」


 そう尋ねると首を横に振って声を上げる。

 翻訳の魔道具によると、迷宮「外」に出た事はないが、月光神殿と四大精霊殿の封印を手掛ける時に最奥のガーディアンとして作られたので、タームウィルズにいた事はあるそうな。

 なるほど。確かにタームウィルズは迷宮の一部だから「外」ではないな。


 それでも最近の世情に疎い事には変わらないので、緊急時以外は船内で大人しくしていると、そんな風に答えてくれた。


「うむ。我もまた世情には疎いからな。カルディアと一緒に学んでいくとしよう」


 と、ルベレンシアも頷いていたりするが。まあ、分かった。とは言えどこかの景色を一緒に楽しんだりという分には問題あるまい。

 それに……世情に疎くともルベレンシアもカルディアも頼りになるというのは間違いないからな。

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