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番外1204 獣王達の未来

 転移港に書状を届けに来てくれたイグナード王達を連れて、まずは工房のみんなと合流しにいく。アルバートやエルハーム姫も一仕事を終えた節目という事で、少しのんびりできると思うしな。


「ガブリエラ様、お元気そうで何よりです」

「うむうむ。息災なようで喜ばしいことだ」

「ふふ。エレナ様とパルテニアラ様も」


 エレナとパルテニアラ、ガブリエラは顔を合わせると嬉しそうに挨拶を交わす。


「ローズマリーも元気そうで良かった。奥方様達も皆健康と聞いて、陛下も安心していてね。いやまあ、私もなのだが」

「まあ……そうね。体調は良いわ」


 バルフォア侯爵の言葉にローズマリーは羽扇で口元を隠しつつ頷く。姪であるローズマリーの体調を心配していたというところか。ローズマリーはそっけない態度ではあるが、対するバルフォア侯爵は穏やかな表情である。

 というわけでフォレスタニアに移動し……到着したところでサロンに向かう。


「イグナード陛下……!」

「こんにちは、イグナード陛下」

「うむ。会えて嬉しく思う」


 イグナード王とオルディア、レギーナも嬉しそうだ。イングウェイも顔を出していて、イグナード王に挨拶をしていた。


「ご健勝で嬉しく思います」

「そうだな。イングウェイも修業に励んでいるようで何よりだ」


 と、イングウェイとも顔を合わせて笑みを深めるイグナード王である。その隣ではカルセドネとシトリアがスティーヴン達と再会を喜んでいて。


「二人とも、少し背丈が伸びたみたいだな」

「ね。実際に顔を合わせると少し背が伸びたのが分かるわ」


 スティーヴンの言葉にイーリスが頷く。


「ん……。良く食べて、よく眠ってるから」

「うん。私達だけじゃなくシオンちゃん達も、少し背が伸びた」


 カルセドネとシトリアが答えると、スティーヴン達と共にフォルセトが表情を綻ばせていた。フォルセトとしてもシオン達の成長が嬉しいというのと、カルセドネ、シトリアと仲良くしているのが喜ばしい、というところだろう。


「ふふ、背丈と言えばテオもですね」

「ん。育ち盛り」


 グレイスが俺と背丈を比べて微笑み、シーラもこくんと首を縦に振る。


「んー。そうだね。気が付けば目線の高さがグレイスと同じぐらいっていうか」


 身長も日々少しずつ伸びているというか。グレイスに背丈が追いついてしまった感があるな。その……改めて自覚すると少し感慨深いものがあるというか。


「年齢的にもテオドールはこれからどんどん伸びる頃合いよね」


 クラウディアがそんな風に言って納得するように頷くと、マルレーンもにこにことした笑みを見せたりしていて。


「ふふ。若者達の成長は喜ばしい事よな」

「うむ」


 と、パルテニアラの言葉に、目を閉じて大きく頷くイグナード王である。


 そこにアルケニーのクレアがお茶と焼き菓子を運んできてくれた。みんなでお茶を飲みながら腰を落ち着けて話をする。


「書状の内容についても伝えておきましょうか。何かあった時に内容が分かっていた方が話も進めやすいでしょうし」


 再会の挨拶も一段落したという事でアドリアーナ姫が言った。


「そうですな。デメトリオ陛下からも書状の内容についてテオドール公にお伝えするようにと仰せつかっております」

「私も書状に目を通して署名をしたので内容は分かります」

「うむ。儂も同じく」


 バルフォア侯爵とガブリエラが言うと、それを受けてイグナード王も首肯する。

 エインフェウスからの書状に関してもイグナード王が認めたものなので内容の伝達に関しては問題ないというわけだ。


「内容としては同盟の作戦による隠密行動中につきテオドール公の移動の自由を認めるようにと書いてあるわね。それから……求められれば協力をするように、とも追記してあるわ」

「同じく。その辺は中継で意思統一ができているな」


 アドリアーナ姫とイグナード王が書状の内容について教えてくれる。グロウフォニカやベシュメルクも内容としては基本的に同じ、という事らしい。エルハーム姫もそれを参考に書状を認めてくれる、との事だ。


 移動の自由というのは……作戦は全て人里離れた場所での事なので領主や兵士達には関わりのない事である、というのを伝えているわけだ。といっても魔人達との共存と和解については同盟各国にも周知してもらっているので、聞かれたら殊更隠す必要もないのだが。


「その辺の説明に関する裁量はこちらに任せてもらえるというわけですか」

「そうですね。魔人達との交戦を避けるという意味では、詳細までは余人が知らない方が良いという事もあるでしょう。個人的にも、テオドール公による現場の判断で臨機応変に動けた方が良い結果になりそうに思います」


 と、バルフォア侯爵が言うと書状を預けてくれた面々もその言葉に同意していた。

 そう、だな。確かに。魔人達との和解については周知されているが、会合場所については余人が知らない方が良い。魔人に対しては……蟠りのある者もいるだろうし偶発的な事態は避けたいからな。


「ありがとうございます。出発する予定日等についてもお伝えしておきたいと思います」


 書状の内容と気遣いについて礼を言うと、イグナード王達は相好を崩して応じる。

 そうして諸々必要な連絡事項を伝え合ったところで、改めてお茶会という事でのんびり談笑しながら過ごす事となったのであった。


「ふむ。そろそろ獣王の継承についても準備が進められていく時期、か」

「私も次の武術大会には参加するつもりでおります」


 イグナード王が言うとイングウェイも頷く。

 エインフェウス王国の……獣王継承か。

 エインフェウスでは複数の獣人氏族やエルフ達を束ねる役を氏族の中から決めるという事で、折を見て継承のための獣王選出を行うとのことらしい。


 選出の時期は状況に応じてだが、イグナード王も大分高齢になってきたから引退が近いと見られているそうだ。実際イグナード王も継承に絡んだ動きを承認しているそうである。体制の移行等もあるので、選出が行われてから即獣王が変わるというわけでもないようだが。


 ともあれ人格や人望、知略に武力等、色々な面が獣人族の氏族長達から見られる事になる。……まあ、その中でとりわけ重要なのはやはり武、という話だが。


 様々な種族を束ねる上で強い力を示す事は別の力自慢の獣人氏族からの人望を得ることにも繋がるからだ。だから……国を挙げての武術大会が開かれるというわけだ。ただ……それでも王に求められるものは力が全てではない。武力一辺倒で人格に難があっても獣王としては認められない、という事だ。


 景久の知るBFOの歴史上では……イグナード王の後にイングウェイが獣王として即位していたはずだ。

 ただ――。エインフェウス王国ではベルクフリッツの討伐に俺が加わっていて、恐らくBFOの歴史と違っていると思う。その後のイグナード王やイングウェイの行動も違っているだろうし、その辺がどう影響して今後どうなるかは未知数というところがあるな。


「やはり、次期獣王の候補とみられているのはイングウェイさんでしょうか?」


 アシュレイが尋ねるとイグナード王は頷く。


「そうさな。見所のある者は何人かいるが、本命はやはりイングウェイと見る向きは多い。それと……エインフェウスも外に門戸を開くようになっているからな。氏族外の者は流石に選出対象とはならぬが、テオドール達には武術大会等は是非見学に来て欲しいものだ」

「ええ。是非」


 俺がそう答えると、イグナード王とイングウェイも笑って頷いていた。

 元々獣王継承に絡んだ一連の催しはエインフェウスを挙げての祭りのようになるらしく、今は門戸も開かれているので武術大会については同盟各国からも招待する予定だそうである。それについては……楽しみにさせてもらおう。


 とはいえ、それも先の話だ。目の前の仕事に集中しなければならない。まずは――バハルザード王国の辺境に散らばる会合場所にモニュメントを配置していく事となる。魔人達との和解と共存に絡んだ事だから、引き続き気合を入れていかないとな。

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