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番外1201 子供達と境界公

 夕食は火精温泉の休憩所にて行われた。今度は米やそれに合う料理を中心に添えて、イスタニアの面々を歓迎すると共にエスナトゥーラ氏族の面々に楽しんでもらえるものを、というコンセプトにしたらしい。


 海老と貝がたっぷりと入ったシーフードパエリアという事で、スパイシーで旨味がたっぷりと出ていて、何とも美味だ。米料理ではあるが魚介もふんだんに使っているので、グランティオス、イスタニアの面々としても受け入れられやすい味なのではないだろうか。


「ん。これは良い」


 と、シーラもこくこくと頷き、そんな反応にマルレーンもにこにことした笑みを見せる。


「お米でしたか。巨大魚の時も食材として使っていましたが、これは美味しいですね」

「陛下にも気に入っていただけたなら何よりです」

「僕達の出身地や東国でも食べられている食材なのです」


 俺の言葉に、シオンがそんな風に言って。かつて東国から月を経由した、という話をするとみんなからの興味を引いていた。


「米には私達も馴染みがありますが、遥か東国からというのは驚きですね」


 エスナトゥーラが言うと、フィオレットや氏族の面々も頷いていた。

 まあ、同盟に加入したのであればいずれ東国の面々と知り合う事もあるだろうし訪れる機会もあるかも知れない。


「フォレスタニアから向かう事のできる迷宮の区画が東国の雰囲気に近いですね」


 夜桜横丁に関する話をすると、みんなも興味を示していた。とはいえ、夜桜横丁に関しては迷宮初心者にはそれなりに厳しい区画なので、もし足を運ぶならば迷宮探索の経験豊富な者が案内するべきだろうと思うが。


 転界石の使い方であるとか魔物のいる大部屋であるとか、それに撤退の判断であるとか。野外での魔物討伐や天然の洞窟探索等とは勝手が違うところがあるからな。実力に関しては問題ない面々だとしても、その辺は注意したいところだ。


 その辺の事を伝えると一同真剣な表情で頷いていた。まあ、迷宮に興味があるというのなら冒険者ギルドで講習を受けてからというのも良いだろう。




 食事と談笑の後は王達による会合が行われた。と言っても、イスタニアとの国交や貿易はヴェルドガルやシルヴァトリアとの間では普通に行われている。

 今後もそういった関係を維持するという確認が主だ。他の同盟各国の王達とも挨拶をしたり、特産品の貿易等の話をしたりもしたが、大きく情勢を変化されるような話にはならず、結構気楽な会合であったようだ。


 イスタニアとしてはギデオン王が若くして王位を継承して国内の体制を整えていたので、特定の国に偏らずに同盟各国の王と面識を持ち、繋がりを強くしたというのは基盤の強化に繋がるから歓迎すべき事のようだ。ウェズリーや騎士団長、アランといった面々も会合の結果には上機嫌であった。


 そうして会合が終わったところで植物園に繰り出したり、幻影劇場に出かけたりもした。


 植物園では花妖精達に加えてノーブルリーフ達の歓迎も受けて、レプラコーン族は随分と喜んでいた。森で暮らしているだけに、ノーブルリーフというよりは野生のイビルウィードと友好関係を結べる可能性があるというのは喜ばしい事のようで。


「長期的な影響については追跡調査中ではありますね。今のところ問題は出ていないので先々に期待しています」

「その辺の事が上手くいくと良いですね。楽しみです」


 と、ドナは俺の言葉に笑みを浮かべていた。

 植物園自体も温室の構造やそこに使われている魔法技術を見て、ギデオン王は感銘を受けていたようだ。様々な地域の植物も見られるという事で、エスナトゥーラ氏族の面々も馴染みのある植物を見つけて喜んだりと……色々興味深く見て回って貰えたようで何よりである。




 植物園の見学が終わったら再度フォレスタニアへ。幻影劇場に行ってのんびり幻影劇鑑賞というわけだ。

 エスナトゥーラ氏族の幼い子供達は……母子向けの幻影劇にしてもまあまだ少し早いという事で、劇場内の施設で俺達が面倒を見るという事になっている。幻影劇に関しては何度か鑑賞しているしな。


 身重な者達は子供優先という事で、幻影劇は刺激が強そうなのでグレイス達と一緒にのんびりする、との事だ。まあ子供が生まれてからでも何時でも鑑賞できるしな。


「皆さんが幻影劇を鑑賞している間に循環錬気で体調を診る他、生命力の補強も行っていきたいと思っています。今後の子供達の健康管理にも繋がりますから」

「それは――お気遣い感謝します。では、よろしくお願いします」


 と、エスナトゥーラからお辞儀をされて、子供達を預かる事になった。みんなで幻影劇を鑑賞してもらって、リフレッシュして貰えたら、というところだ。

 迷宮村の住民も子守を手伝ってくれるとの事で人手は足りているな。ライフディテクションも併用して生命反応に異常がないかモニターしておけば安心だ。


 同時に……劇場ホール内の様子もカドケウスに見て貰っておこう。


 さてさて。子供達を預かる場所は劇場内のサロンで、毛布や絨毯を広げて簡易の託児所といった感じにしている。循環錬気で体調を診て空腹なようであるならば、ミルク等を厨房で準備をすればいい、という事で。

 そうしてイスタニアの面々が幻影劇鑑賞に向かったところで、俺も一人一人子供達の循環錬気を行っていく。


 まずは循環錬気で体調を確認して生命力の補強だな。

 順番に診ていくが……そうだな。体調に関しては問題ないというか、総じて解呪前より力強くなっている印象がある。元々健やかだったのに加えて、解呪の儀式を経て加護がより強く作用しているからかも知れない。

 いずれにしても解呪を行っても体調が良いという事で、この辺は安心できるな。


 循環錬気を受けた時の子供達の反応は……嬉しそうにしているか、温かい感覚から眠りに落ちるかのどちらかといったところだ。子供達にとっても不快でないのならば何よりである。ウィズの分析で身長や体重といったデータを保存しつつ、そっと寝台の上に寝かせて毛布を掛けたりしていると、グレイスが微笑みを見せる。


「ふふ。テオがそうして子供をあやしている姿は……良いものですね」

「そうね。テオドール君の表情とか仕草とか、優しい感じがして好きだわ」

「ん……。そう見えるかな」


 グレイスやイルムヒルトの言葉に少し頬を掻くと、みんなも笑みを見せて頷いたりして。


 んん。まあ、和んでくれているなら良しとしよう。俺としてはみんなが子供達をあやしているところを見ていて安らぐ感はあるのだが。


 そんな調子で循環錬気による診断と補強。簡易の身体測定をしてから迷宮村の住民にも手伝ってもらい、お腹が空いている子には成分調整をしたミルクを飲んで貰ったりと、子供達の様子を見ていく。

 闇魔法と光魔法を駆使して即席のプラネタリウムを構築してあやしたりしていくと、子供達はそれを食い入るように見て……グレイス達や氏族達もそれを見て笑顔になっていた。


 幻影劇の方もカドケウスで確認してみると、良さそうな感じだな。レプラコーン族の子供達も話に見入っているようで、アンゼルフ王とグリュークの出会いに笑顔になったり、ピンチを切り抜けると拳を握ったりと、結構感情移入してくれているのが窺える。


「妖精は気に入った人を見守ったり力になったりするのも好きだから」


 その事を説明すると、セラフィナがそんな風に言って、リヴェイラもこくんと頷いていた。


「なるほどね。導入で気に入ってくれたわけだ」


 レプラコーン族の子供達は妖精としての気質が強く出るらしいからな。イスタニア王国やエスナトゥーラ氏族の面々も幻影劇を見やって楽しそうにしているし、楽しんで貰えているようで良いことである。

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