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番外1193 ワームへの対策は

 王城での報告と今後の方針の確認等をしてから、フォレスタニアに向かう。みんなやエスナトゥーラ氏族の様子を見て、それからワームを迷宮核による解析にかけてこよう、というわけだ。


「ワーム対策は、どんなものを考えているのですか?」


 馬車に乗ってフォレスタニアに向かう道中で、エリオットが尋ねてくる。アランとも友人だし、エリオットとしては気になるところかも知れないな。


「現地の人達が直接戦うのも大変ですし、そもそも襲撃を受けないようにしつつ漁場に居座るのが避けられれば渡りの過程をやり過ごせますから……基本的にはそうした方向で考えています」


 解析結果次第で、できる事とできない事も変わってくるからな。現時点ではアイデアの段階で止まっている。迷宮核ならば有効な手立ての模索もできるだろうという事で期待している部分はあるが。


「なるほど……。とは言え、戦闘を避ける方向なら安心ですね」


 俺の説明にエリオットは笑みを見せて頷く。漁場が荒れてしまった場合も何かしらの支援はしたいところだが……まあ、そちらは事態の推移を見ながらだな。徒に不安を煽っても意味がないのだし。


 そうしてエリオットと話をしながら移動し、俺達を乗せた馬車が神殿前の広場に到着する。送ってきてくれた御者に礼を言うと、笑顔でお辞儀をしてセオレムへと戻っていった。

 そうして顔見知りの顔触れに軽く挨拶をしながら移動し、迷宮入口からフォレスタニアへと飛んだのであった。




 フォレスタニアに到着すると、エスナトゥーラ達が城の住民達に迎えられているところだった。

 迷宮村の住民と隠れ里の住民が、自分達も似たような境遇でお世話になっているから安心して欲しいと、エスナトゥーラ達に伝え、互いに自己紹介をして親睦を深めているというところらしい。


「これから使っていただく部屋の割り当てなどは、既に手筈を整えています。氏族の皆さんは人数もそこまで多くなかったですし、当面の着替えや生活必需品、子供達用の肌着といったものも、既に諸々手配して、幾つかは用意も済んでいます」


 セシリアが受け入れ態勢の進捗状況を纏めた書類と共に状況を教えてくれる。

 書類を見ていけば……フォレスタニアの居城の一角を使ってもらうので、住環境は全員問題なし。部屋の割り当ても既に済んだようだ。衣類は当面の着替えが全員分。肌着に毛布、布オムツとその予備が確保済み。食事に関してもエスナトゥーラ達は大した人数ではないので問題はあるまい。


「いいね。これなら安心かな」


 間に合わせの部分をウォルドムの遺産を財源に補強する方向で動いていく、と。遺産の活用方法と配分を話し合って考えるという話にもなっているので、その辺は色々と入用になる前にエスナトゥーラ達と話し合う時間を設ける事にしよう。


「当面の生活に関しては問題なさそうだ。封印術と解呪については疑問や不安もあると思うから、テスディロス達や隠れ里のみんなと交流した上で、ゆっくり決めていけばいいと思う」

「それは――ありがとうございます。私達も早めに方針を決めて、お伝えできるようにしたいと思います」


 俺の言葉にエスナトゥーラが一礼する。そうだな。色々納得した上で決めてもらうのが良いだろう。現時点でも契約魔法が組み込まれているので安全性の確保はされているし、子供達に関して言うなら頑丈な肉体というのも、ある程度成長するまでは魅力的なものだと思う。


「すぐに必要になるであろう品々は、そこのお部屋に纏めて置いてあります」


 と、アシュレイが教えてくれる。氷漬けにしたワームは迷宮核に持ち込んで分析にかけるので持ち帰ってきているのだ。


「それじゃ、エスナトゥーラさん達は問題なさそうだし、そっちの仕事を先に済ませてこようかな。ワーム対策もきちんとしておかないといけないしね」


 アフターケアが万全というのが示されれば、今後の魔人との和解と共存に関する作戦に関しても各国から協力してもらいやすくなるからな。この辺もきっちりしておきたい。

 エスナトゥーラ達の歓迎の宴はイスタニアで行っているし、身重の者もいるのでまずはフォレスタニアでゆっくり休んでもらい、馴染んでもらう、という事で。




 そんなわけでワームを持って迷宮核へと向かう。既に迷宮核内部で情報として集積されている可能性は高いが、まあ……実物を解析した方がシミュレートもより正確になるだろう。


 氷漬けにしたワームを迷宮核がスキャンしてその情報を取り込んでいく。ウィズが記憶している実際の動きなども迷宮核に伝えて……それから迷宮核の内部空間へと飛んだ。


『迷宮核内部だと……情報として集積はされているけど、陸の民からは未発見の魔物、っていう扱いみたいだね』

「住んでいる場所が特殊だったものね」


 迷宮核の持っている情報について、通信機を通してみんなに伝えるとステファニアがそう言って応じる。

 グランティオスの面々も知らなかったようなので新発見の魔物、という事になるな。間に合わせにワームとだけ呼称していたが、こちらで命名してしまって構わないだろう。


『見た目からして牙が警戒に値するって言うのは分かるから……パラライズワームとか、性質が明快な名前で通すのが良いかもね』

「ん。分かりやすさは大事」


 と、シーラもうんうんと頷く。うむ。

 とりあえずの仮称という事で。厳密な区分が必要ない場面では今まで通りワームで通じるだろう。


 仮称も決まったところで、ワームの生態、能力等々を仮想空間上でシミュレーションしていく。

 やはり魔力の動きには結構敏感なようで、感知能力が高いというのが分かる。情報収集の過程で実際、どの辺の海域に生息しているかという予想分布図も迷宮核が出してくるが……冷たい深層の海流に乗って移動し、魔力溜まりのある岩礁を選んで住み着くという推測も概ね当たっているようだ。


 俺の考えている対策としては……まず探知レーダーの構築だな。連中から抽出した魔石から、ワームの魔力波長の位置を感知する魔道具を作る、というのがまず一つ。


 ワームから抽出した魔石に改めてワームの属性を付与して強化……うん。既存の技術でも問題なくできそうだな。シミュレートの上では問題ないというか、探知距離もかなり広げる事が出来そうだ。


 それからもう一つの対策としては……感知能力の高さを利用し、忌避魔道具が作れないかというものだ。

 ゴブリン等よりも更に本能的な衝動に従う生態だからな。昆虫に対する虫除けスプレーのような技術は――恐らく効果があるだろうと踏んでいる。


 ワームの生存にとって不利益だと感じさせるような魔力を拡散する魔道具を稼働させる事で、感知能力の高さを利用して船や漁場等から遠ざけるというわけだな。


 原理としては単純なものだが……予想される影響等も含めてきっちりシミュレーションしたいところだ。他の種族や魚も忌避するような効果が出てしまっては意味がないのだし。


 というわけで色々な魔力波長を仮想空間上のワームに対して照射してシミュレートしていこう。ワームをそのままアンデッド化した場合の魔力波長であるとか、同じ生息域でワームを捕食していると思われる魔物の魔力波長だとか、色々試していく。


 そうして見ていくと……ワームの魔力波長の真逆の位相を組んだものが中々興味深い効果を示した。


『逆位相の魔力が面白いな。元々ワーム達が冷たくて陰の気配の大きいところで暮らしているからか、温かくて明るい感じの魔力波長になる』


 ワームにとっては温かく明るい場所というのも住環境として適さないというか。忌避効果もきちんと見られる。


「効果的なものが見つかったのであれば何よりです」


 そう伝えるとエレナが応じて、みんなも笑顔になっていた。よし。この方向で調整して詰めていくのが良さそうだな。

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