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番外1188 イスタニア王都への帰還

 そうして一夜が明ける。島の城にも転送魔法陣を描いたので早速イスタニア王都を目指して動いていく、という事になった。道中で主だった都市部にも立ち寄り、作戦が成功した事も通達していく事になるだろう。


 ちなみに昨晩と朝と、食事はアランが用意してくれた。エスナトゥーラ達にとっては久しぶりの感覚だったのだろう。


 一口一口感じ入るように食事をしている者や、食事を口に運んだ途端、仲間と顔を見合わせあって笑顔になったりしている姿が印象的だった。

 体調の安定もしているので、俺達としても安心できる風景ではあったな。


 エリオットとアランも楽しそうに談笑したり、魔人の子供達の寝顔を覗き込んだギデオン王やドナ、通信室のみんながにこにことしていたりと、中々和やかな一夜だった。


「それでは道中お気をつけて。また後程お会いしましょう」

「こちらこそ。今度はアラン卿も遊びに来て下さい。転移門が設置されればそういった時間も取りやすくなると思いますので」

「ああ。確かに」

「タームウィルズから私の領地にも転移門が通じていますからね。アラン卿が訪問してきた時は歓迎します」

「ええ。是非。楽しみにしております」


 笑顔のアランと、エリオットと共に言葉を交わす。

 島の武官、文官達も俺達を見送ってくれる。ウェルテスとエッケルス、それぞれの配下の武官達も何人か残って、アランと共に魔物の渡りに備えて支援を行う、との事だ。

 シーカーとハイダーを一体ずつ残していくので、これで転移門が出来上がれば諸々安心だろう。


 と言っても、またすぐにイスタニアの王都で彼らと顔を合わせる予定ではあるのだが。


 というわけでアラン達に見送られて、俺達はイスタニア王都に向けて出発したのであった。




 陸地が近くなってくると海も比較的浅くなって外洋とは様子も変わってくる。冬場で緯度も高い寒い海なので珊瑚等が見られるわけではないが、陽光を受けて煌めく海は綺麗なものだ。イスタニアの北方だと流氷も見られるとの事ではあるが。


 エスナトゥーラやその氏族の面々は子供達をあやしながらもそうした風景に目をやり、笑顔になっている。久しぶりに戻ってきた感覚を満喫しているようで何よりである。


「ふっふ。彼女達の気持ちは分かりますな」


 オズグリーヴが目を細めて笑うと、テスディロスやウィンベルグ、オルディアも頷いて柔らかな表情を浮かべる。

 テスディロスとウィンベルグは生まれついての魔人だし、オルディアの場合は必要に応じて自分自身で能力の封印ができるから、その辺の感覚はオズグリーヴとはまた違うようではあるが、エスナトゥーラや氏族達の様子に微笑ましそうにしているのは確かだ。


 オズグリーヴは隠れ里の面々を優先していて自身の事については二の次にしている印象ではあるが、封印術で感覚が戻った事に共感するあたりは、その内心が窺えて俺としても喜ばしい事である。


「封印術の有用性は分かりましたが……解呪との違いのようなものはあるのですか?」

「んん。ウィンベルグは――気持ち的にはより軽くなったような感覚がある、とは言っていましたね」


 ルクレインを抱えるエスナトゥーラの質問を受けて、俺もそう答える。ウィンベルグは少し思案しながら、自身の感覚について話をしてくれる。


「そうですな。最後にあった心のつかえがとれたような、と申しますか。軽くなったような解放感はありました。解呪された隠れ里の方々も似たような感覚を口にしているので、私個人の錯覚というわけではないのでしょう」

「なるほど……」

「ただ……心情や情動、感覚面では遜色はありません。隠れ里の方々とも、そこは見解が一致しております」

「だから我らもテオドールの手伝いをしやすいようにと、封印術を選んでいるわけだ」


 と、テスディロスが言うと、オルディアとオズグリーヴも同意を示すように頷く。まあ、その辺はな。魔人との和解、共存において魔人が共にいれば説得をしやすくなるからというのもあるが……俺としてもテスディロス達が解呪したいというのなら何時でも応じるつもりでいる。


「能力的な話をするのなら……封印術は特性封印をしている時は力が大きく制限されますが、解呪した場合はそうではない、というのがありますね。ウィンベルグさんは元々飛行を得意としていましたし、ある程度元の性質が残るというのは間違いないようです」


 瘴気特性が無くなるから、戦闘能力という一点でのみ言うのなら、パワーダウンしてしまうのは否めないけれど。

 テスディロスの場合はと言えば普段は街中の警備だが、元から身体が鍛えられているし、槍も使える上に傭兵としての経験がある。魔道具の補助もあって空中戦も慣れているという事で、そこらの兵士や並の冒険者には後れを取らないぐらいの地力があったりするのだが、これは例外と言えるかも知れない。


「そうですか。私も……覚醒に至った者の端くれとして、色々と考えてみます」

「分かりました。しかしまあ、あまりこっちの事情を中心に考える必要はありませんよ」

「ふふ、ありがとうございます」


 俺がそう返答すると、エスナトゥーラは機嫌の良さそうなルクレインをあやしつつ微笑んでいた。自身の長い髪に少し触れつつ考えてみると言っていたから、もしかすると髪が覚醒能力に関係しているのかも知れないな。




 主だったイスタニアの都市部を回って、海底洞窟に向かった時と同様に作戦行動が成功した事を伝えていく。各地の領主達はギデオン王やウェズリー、俺を祝福の言葉で迎えてくれた。


 沿岸部の領主にはワームの話も出たが……まあ、現場からは西の離島以上に距離があるし、深層の海流はこちらには来ていない、航路や漁場が交差する海域もないし魔力溜まりもないという事で危険度はより下がると思われる。


 そうしてイスタニア国内を今度は東に向かって移動していき、やがて王都に到着する。レプラコーン族からは預けておいたシーカーや水晶板モニター持参で王都に現地集合すると連絡があったのでその辺は回収の手間いらずで王都直行で良いらしい。


 今日の宴会にはエルドレーネ女王も参加するという事で、シリウス号内の転送魔法陣からフォレスタニアのみんなやアルバート達。エルドレーネ女王といった面々をイスタニア側に召喚していく。朝見送ってくれたアランやグランティオスの武官達も共に召喚する。


「こんにちは」

「ん。よろしく」


 と、グレイス達も姿を見せて、イスタニアの面々やレプラコーン族、エスナトゥーラ氏族といった顔触れと甲板で挨拶を交わしていく。


「これは奥方様達も。イスタニア王国は皆様を歓迎いたします」

「実際に顔を合わせられて嬉しく思います」

「ふふ、よろしくお願いします」


 ギデオン王やエスナトゥーラ達の挨拶に、笑って応じるアシュレイである。

 既に紹介はモニター越しに終わっていたりするから、挨拶もスムーズなものだ。最後に保存してあるホウライエソも召喚して、召喚回りの仕事も一段落といったところだ。


「作戦も首尾よく進んだようだし、テオドールも無事で何よりだわ」

「うん。ただいま」


 クラウディアの言葉に答えると、マルレーンもにこにことした笑みを見せる。そうやって無事に戻ってきた事を喜び合う。


 さてさて。巨大ホウライエソはどうしたものか。甲板に持ってきて保存容器の箱を開けた段階で、既にイスタニアの武官達やレプラコーン族の注目の的になっていたりする。


「おお。何と凶悪な面構えの巨大魚なのか……」

「これを海中で征伐したとは」


 と、容器を覗き込んでそんな風に語り合っていた。

 まあ、ホウライエソは顔がとにかく迫力があるからな……。それが巨大なサイズの魔物となればインパクトも抜群だろう。

 ともあれ、保存状態も良いので早速宴会料理に使う為に料理法の模索と行こうか。

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