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番外1187 帰還と会議と

「ああ、良かった。お帰りをお待ちしておりました……!」

「ただいま戻りました」

「作戦は無事終了、といったところですね」

「アランもご苦労様です」


 2隻の飛行船を停泊させると早速アランが迎えに来て、俺とエリオット、ギデオン王が笑って再会の挨拶を交わす。まずは、そうだな。エスナトゥーラ達に落ち着ける場所を提供したいという事で、早速城の一角に宿泊できるように手筈を整えてくれた。


「その方達は既にテオドール公の庇護下にある。くれぐれも丁重にお持て成しするように」


 そうアランが指示を出してくれる。

 俺達は俺達で、シリウス号への必要な荷物の積み替え等、やらなければならない作業があるのでその後でエスナトゥーラ達の様子を見にいこう。


 それまではカドケウスとバロールに付き添ってもらって、体調不良等がないかモニターしておく、と。


 積み替え作業はグランティオスの武官達が手伝ってくれるとの事で。みんなで船から船へと荷物を移し換えてくれるので、すぐに終わりそうだ。


「第一世代だからこそ、でしたか。この事例を基準に考えるのも問題がありますが……海王は妻子達の為に封印を残した、と。良い……お話ですね」


 アランは案内されていくエスナトゥーラ達を見送りながらしみじみと言う。


「そうですね。封印を残して未来に希望を託そうとした、その気持ちは分かる気がします」


 俺がそう言うと、通信室のグレイス達やエリオット、カミラも自分達に重ねて考えたのか、目を閉じたり頷いたりしていた。


 アランもある程度中継映像でこちらの状況は見ていたので、ワームの渡りに関する話もしておこう。


「それと少し話は変わるのですが――海底洞窟内部の環境が少し変わって、内部にいた魔物が渡りを行う可能性があります。水温の低い深層の海流を使って移動すると推測されるので影響は限定的だとは思いますが、注意は必要になってくるかと。今回のお話が発端ですので、対応には僕達も継続して動きたいと思っています」

「それは……冒険者ギルドと漁師、船乗り達にも通達しておく必要がありますね」

「テオドール公が協力してくれるのは心強い」


 アランが言うと、ギデオン王も頷く。


『であれば、グランティオスの武官達を派遣して協力、という形を取る事も出来るやも知れぬな。テオドール公は多忙であるし、海が現場である以上、我らの出番であろう。懸念や摩擦を生まない程度の部隊規模ならば、とも思うのだが、どうか』


 と、そう言ったのは執務を終えて中継映像を見ていたエルドレーネ女王だ。


「我らにも関係のある事。派遣するというのであればその任、我らが受けたいと存じます」


 エッケルス達も頷いてやる気を見せていた。


「それは――心強いですね」

『その辺の細かい話も詰めたいところではあるな』

「ええ、是非」


 ギデオン王とエルドレーネ女王は笑みを向けあい、そうして後で落ち着いた状況での話し合いが行われる事になった。

 転移門の設置、という方向にも話が進みそうな印象もあるな。メルヴィン王達も交えた話になるかも知れない。


『では、僕達としては魔道具等で補助をする方向で動くというのが良さそうですね』


 と、アルバートが笑う。


「水中戦闘用の装備、水難事故の救助に使える魔道具とか他にも……考えられるかな」


 ワームの遺骸をいくつか確保しているのだし、それを元に迷宮核で対策を分析したり魔法的な探知をする魔道具を用意する、という事も可能だろう。

 丁度グランティオスの武官達が氷漬けになったワームを運んできてくれたので、一旦甲板に置いてもらって、幻影も交えて見聞と説明を行う。


「ワームの特性についても改めてお話をしておく必要がありますね。遊泳速度は意外に速く、大顎と麻痺毒、魔力弾に巻き付きあたりが主な武器、でしょうか。両断されてもまだ攻撃の意志を見せる点、生命力が高いのも油断がならないところですね」

「何というか……厄介なものですな」


 ウェズリーが氷漬けになったワームと、幻影の動きを見比べて言う。


「単体同士であれば……グランティオスの武官ならば十分に対処できる相手だとは思います。魔力に引き寄せられる傾向もあるようですから、必要があれば誘き寄せるような作戦も考えられるのではないでしょうか」


 と、ウェルテスが言った。そうだな。連中の魔力弾にしても必要があればそうした作戦もとれるように計画を練っておこう。


「ワームの遺骸は、持ち帰って対策のために分析にかけようかと思います。注意喚起を行う場合は――土魔法で模型を作りますので、それを活用していただければと」

「助かります」


 アランが頷く。というわけで、土魔法で模型を作る事にした。

 ワームの模型を構築する。毒腺と毒袋の解説模型や魔力弾を放っている頭部の模型も合わせて構築する。


「まあ、誇張や矮小化はせずありのままを、という事で。危険性だけで無闇に恐怖心を煽って、漁業の不振などを招いてもいけませんし……かといって軽く見て被害が出るのも問題です。渡りが起こるとしてももう少し先の事だと思いますから、それまでにしっかりとした対応策を練っておきましょう」

「冒険者達の水中戦闘訓練でもお役に立てそうですな」


 と、元海王の眷属であった武官達が笑みを浮かべる。

 そうだな。イスタニア王都だけでなくこの島にも転移門を設置という話にもなるかも知れない。いずれにしてもアフターケアは万全にしたいところだ。




 そうして、荷物の積み替えや今後の注意点についての伝達も終わり、島の城に宿泊という事で海底洞窟探索の気疲れ等を癒させてもらう。


 城の一角に臨時サロンが用意してあるので、そこでギデオン王とメルヴィン王、エルドレーネ女王他、同盟の王達がモニター越しに顔を突き合わせ、今後についての話し合いの時間を取る。

 イスタニア側が今回の作戦に協力してくれた事もあって、同盟に名を連ねる方向での調整が進んでいる。同時に契約魔法を用いた転移門の設置等にも話が及んでいた。


「この島に転移門を設置するのであれば、契約魔法を組み込んだ簡易の転送魔法陣を残しておくのが良さそうですね」


 俺がそう言うと、その辺も会議に参加している王達も興味を示す。


「では、問題がなければお願いしてもよいでしょうか」


 と、ギデオン王が言って、その場にいる面々からの了解を取り付ける事ができた。

 転移門設置の資材を持って戻ってくる事や渡りに対して備える事を考えれば、その為の準備をしておくことで後々の展開も楽になる。

 ギデオン王がいる今なら契約魔法を構築する前提条件も整っているしな。この島自体地政学上重要というか中央の直轄地なので、転移門があるのはイスタニアにとっても歓迎すべき事というわけだ。


 契約魔法で悪用ができないようになっているというのも、転移門を設置する側としては安心できる部分だろう。


 そうやって今後の事を話し合う傍らで、エスナトゥーラ達はモニター越しにイルムヒルトやユスティアが奏でるリュートやハープの音色、ドミニクの歌声に聞き入っている様子であった。

 ティールやアルファもそれを聞いて首や尻尾を動かしていたりと、和やかな光景だ。子供達への子守歌代わりでもあるが、魔人化が解除されたという事で色々な事に触れてもらって、封印術や解呪に対して理解を深めて貰えたら俺としても嬉しい。


 イスタニア王都に戻ったら改めて宴会を、という事になっているからな。フォレスタニアのみんなも呼んで巨大ホウライエソの試食会といきたいところだ。

 まあ……ホウライエソが美味いかどうかはまだ現時点では分からないからな……。深海魚は水っぽいとかアンモニアが、とか良い話を聞かない事が多いが、魔物は美味いという話も多いので全く予想がつかない。

 料理にする前に試食しなければならないだろうが、願わくばきちんとした食材で、そちらもエスナトゥーラ達に喜んで貰えれば嬉しいな。

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