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番外1146 南方の動向は

 監視用魔道具ができたところで、早速シリウス号に食品類を積み込み、現地へと向かう、という事になった。


「行ってらっしゃい、テオ」

「お気をつけて」

「ん。行ってくるよ」


 グレイス達と一人一人抱擁をし合う。みんなから抱きしめられて、髪や頬、背中を撫でられたりして、なかなかこそばゆい。

 シーラ等は髪の毛に顔を埋めて深呼吸して「ん。成分補給完了」などと言っていたりするが。耳と尻尾は嬉しそうな反応なのでまあ、良しとしよう。


「ふふ、また後で、通信室でね」


 イルムヒルトが笑顔で言うと、マルレーンもにこにこしながら頷いた。みんなも応援してくれているのはありがたい。


「現地までの飛行経路を決める頃には、みんなもフォレスタニアに戻って丁度良い頃合いになるかな」


 そう答えると、みんなも嬉しそうに笑う。


「守りは任せて欲しい。深層の守護者達には出番がないようにしなければな」


 マクスウェルが核を明滅させながら言うと、ピエトロやガシャドクロ、カルディアといった魔法生物組の面々と共に頷く。

 アルクス、ヴィンクル、ユイといった深層や中枢部の守護者の面々は、それぞれに嬉しそうな反応を見せていた。


 シリウス号で出かけるという事もあり、アピラシアは同行する側だ。今回はルベレンシアも同行を希望しているな。魔界の竜であったルベレンシアは、フォレスタニアの生活や人の常識にも慣れてきたところだ。


「テオドールの護衛は任せてもらおう」


 と、真剣な表情で言ってテスディロス達も頷き……「では、お願いしますね」とグレイス達が笑顔で応じる。

 本人は気炎を上げているが、そういった危険がなくともルーンガルドの色んなところに出かけるというのも良い経験になるだろうしな。後でウォルドムとの約束を果たす際も同行が決まっているので、砂漠や海など、色々見てもらえれば俺としても嬉しい。


 アルファもラヴィーネやコルリスやアンバー、ティールといった動物組によろしく頼む、というように挨拶を受けて、こくこくと頷いていた。

 そんなわけで見送りの面々は中々バリエーション豊かで賑やかな事ではあるが。


「戦いが目的ではないとは言え……気を付けて向かうのだぞ」


 メルヴィン王も見送りに来てくれている。もし見つかった場合に同盟の立場等を説明できるようにと、ファリード王共々書状を認めてくれたが、国交があまりない国だからな。その辺の効果も限定的なので気にかけてくれているようだ。


「ありがとうございます。件の場所は管理の及ばない土地で、国土という区分ではないようですが、何分現地の情報が不足しているので……なるべく公式な形での接触にならないように気を付けるつもりでいます」

「国の力の及ばない土地という事は……立ち入りが困難な場所であるか、危険な魔物が出る可能性の高い土地、という事になるからね。いずれの場合でも安全とは言えまい。怪我のないように気を付けてほしい」


 ジョサイア王子の言葉に頷く。そうだな。人里から離れた奥地であるという事は何かあっても助けも呼べないという事でもあるし。

 少なくとも人里から離れた場所である事は確かだし、敵対的な魔物が住みついていても不思議はない。防御方式から見てもガルディニスからすればどんな種族が住んでいようが意図的に隠れ家を暴こうとしない限りは関係のない事だろうしな。


 ともあれ、山というのは低地の水源として機能している場所だ。それに……罠が発動した場合、巻き込まれる動植物は勿論、精霊も困るだろう。ガルディニスの遺したものもそうだが、石化の罠をいつまでも残しておくわけにもいかない。


 そうしてみんなに見送られ、シリウス号に乗り込む。今回はまあ、ハイダーを送り込む事と、現地の簡単な情報収集が目的なので、それほど長居するわけではないが、ガルディニスが一件に絡んでいるから油断して良いものでもない。気合を入れて行こう。


 手を振るみんなに甲板から手を振り返して……シリウス号は段々と高度を上げていく。そうして俺達は南方に向けて出発したのであった。




 星球儀を利用し現地までは直線で最短距離となる航路を設定する。高高度を維持したままで飛行速度も魔力光推進を使わないまでも火魔法を使ったジェット推進での移動はするので、移動時間はかなり短縮されるだろう。


 諸々の設定を終えるとアルファもこくんと頷いて、船首の方向を少し変えながら高度を上げつつ前へと進んでいく。計器類と星球儀を見て予定した航路を取っているか確認。十分に高度をあげたところで、予め迷彩フィールドを展開する。

 と、そうこうしていると通信室にみんなが姿を見せた。


「ああ。おかえり」

『ええ。戻って来たわ』


 俺の言葉に、クラウディアが少し楽しそうに笑う。アピラシアの働き蜂達がいそいそとお茶を淹れて運んできてくれて。礼を言うとアピラシアもこくんと頷く。

 中継の水晶板にはベリスティオとヴァルロス。それに下層の冥精達も姿を見せていた。


『現地で問題が起きた場合は、当人に尋ねる準備もできている。デュオベリス、だったか。教団の残党が絡んでくる可能性も考えると、な』


 とヴァルロスが言う。中継地点は冥府下層……独房区画の待機所のようだ。中継できるように冥府シーカーを連れて来ているベリスティオとヴァルロスである。


「それは助かる」

『何、儀式が始まるまで、私にできる支援と言えばこれぐらいのものだからな』

『ガルディニスが話をしてくれる者も限定されそうな気がするしな』


 ベリスティオは静かに笑い、ヴァルロスも目を閉じて頷いていた。

 ああ。ガルディニスの性格からすると、そういうのはありそうだ。

 場所については正確な場所に向かうための情報も貰っているが、デュオベリス教団など他の事情も考えると、本人に尋ねるための体勢を整えてくれている、というのは助かる。


『デュオベリス教団の内情についてはどうなのかしら?』


 と、ローズマリーが首を傾げる。


「ガルディニスに聞いてみたけれど、自分が負けた、その後の事は把握していないって言ってたよ。緊急時の対応策が決めてあって……俺達に負けた後にその報が伝われば当然、集合場所なんかも変えるだろうっていう話だし」


 拘束された者達から情報が漏れて一網打尽、という事態を避けるためのものだな。

 

『中層はともかく、下層では自分が冥府に来てからの情報は入って来ないからな。俺達も含め冥府の他の住人にも言える事だろう』


 ヴァルロスが言う。ベリスティオが封印後の事を知らなかった事と同じだな。

 とはいえ、手持ちの情報を総合すると教団もかなり衰退してしまっているように思われる。


 主だった幹部は……吸血鬼の副官や魔人の従者もいたらしいが、前者はグレイスに倒されているし、魔人の従者もヴァルロスに反乱を起こしてその時に制圧されている。教団に協力していたオーガスト率いる吸血鬼の集団も、俺達が倒しているしな。


 タームウィルズの襲撃に同行した面々も実働部隊としては教団の中では力に優れた者という事もあり……今は末端ばかりというわけだ。


 バハルザード先王の圧政に反発して教団に身を投じた者も多く……ファリード王はその辺、治世が行われれば様子見に回る者も出て来るだろう、とは見ているし、政情の混乱に苦しんだ者達の感情に寄り添うような発言もしているとの事で、実際教団の活動は下火になっているという話だった。


 危険性があるとしたら……幹部ではないが教祖であるガルディニスに心酔しているような者が暴走しているような可能性だな。

 とは言え……教団の動向に関してはガルディニスの隠れ家に関するリスクがあるとしたらという可能性に基づいた話なので、こうして話をしている事自体が杞憂に終わる可能性もあるが。油断して失敗はしたくないからな。

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