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番外1120 再会と合流と

「護衛も同行するが監獄区画でもある故、気を付けるのだぞ。妾も水晶板で様子を見ておく」


 早速下層に向けて出発する俺達に、ベル女王がそんな風に言ってくれる。


「ありがとうございます。陛下が支援して下さるのは心強いですね」


 そう言って笑って返すと、ベル女王も笑って応じる。それからベル女王はリヴェイラに向き直ってから言った。


「リヴェイラもな。修業になるとはいえ負の念の解消区画は実戦に近いものだ。無理はしないようにするのだぞ」

「はいであります……!」


 気合の入ったリヴェイラの答えに、ベル女王も「うむ」と満足げに応じてそれから笑みを向けあう。

 何となくというか……直接の眷属なので親子に近い印象があるな。そんな様子にプルネリウスやディバウンズ、冥精達も柔らかい表情で和んでいる様子がある。


 マスティエルの起こした混乱も一段落したし先王も帰ってきたからか、神格者や冥精達の気持ちにも前より余裕があるように思う。

 さて。そうやって言葉を交わしていると天使達がやってきた。案内兼護衛役として同行してくれる面々だ。以前禁忌の地を調査する折に行動を共にした面々なのでこちらとしても気心が知れている相手だな。


「お久しぶりです」

「今日は皆様とご一緒できて嬉しく思います」

「こちらこそ。案内役の方々が皆さんだと知って安心しました」


 と、そんなやり取りを交わす。というわけで再会の挨拶も済ませたところで下層に向けて出発する事となった。

 上層中央の塔を出て冥府の都を移動していく。塔や沿道のあちこちで神格者、冥精達から手を振られたりして。サンダリオとドルシア、カイエンとユウ、それにエルリッヒとティアナ、エステルといった上層の住民達も姿を見せてくれた。


「これはテオドール公」

「元気そうで何よりだ」

「訪問も今日と聞いていましたからな」


 と、顔を合わせると挨拶をしてくれるサンダリオ達である。


「こんにちは。いや、賑やかに歓迎されている感がありますね。マスティエルの一件の影響でしょうか」

「中層では亡者の方々の反応もありますからあまり喧伝できないそうですが、上層ではまた事情が違いますからね」

「我らにとっての恩人の事を話さないというのも不義理かと」


 エルリッヒと天使が笑って教えてくれる。なるほどな。


「独房を訪問する事も聞き及んでおります」

「お話の結果が上手くいきますよう、及ばずながら同胞達と祈っておりますね」

「そうですね。私も巫女見習いとして一緒に祈りを捧げたいと思います」


 ティアナとドルシア、エステルが言う。皆真剣な表情で静かに頷いていて、応援してくれているのが伝わってくるというか。


「それは――ありがとうございます。約束が果たせるように、僕も力を尽くしたいと思います」


 そうして沿道から手を振ってくれる上層の面々にお辞儀を返したりしつつ、転移設備のある島に向かって進んでいく。転移門の見張りを行っている小天使達も前に冥府に来た時のままだ。


「こんにちは!」


 と、ユイやリヴェイラと元気よく再会を喜び合ったりしていた。冥府にもかなり知り合いが増えたのであちこちで迎えて貰えている感があるな。


 そうして亡者に変装する魔道具を使ってから中層へと移動すると、ヘスペリアとマデリネ、リネット達が俺達の到着を待っていた。まずは上層の面々と同様、再会の挨拶からだ。


「うん。みんな元気そうで良かった」

「そっちも元気そうで何よりだ。ま、水晶板で顔を合わせちゃいるが」

「今日を楽しみにしていた」

「マスティエルの時にあれだけ暴れたのに、呆れたものよね」


 リネット、ゼヴィオン、ルセリアージュ達はそんな調子でマイペースだ。ギルムナバルからは「我は今日、別の仕事がある故、ルセリアージュ殿をよろしく頼む」と言われた。


「リネット達も気を付けてね」

「そうだな。これだけの面子がいればとも思うが、油断は禁物だからね」


 ヘスペリアの言葉を受けて、頷くリネットである。というわけでリネット達とも合流したらいよいよ下層だ。


「では、いってらっしゃいませ」


 ブラックドッグのマデリネやヘスペリアに見送ってもらい、下層に続く転移門を潜る。

 下層入口から地下道を抜けて、下層拠点へ移動していくわけだ。ここでも下層の冥精達が俺達の到着を待っていて、ヴァルロスとベリスティオは拠点側で待機している、と教えてくれた。


「ありがとうございます」

「監獄区画にも足を運ぶと聞き及んでおります。お気をつけて」


 下層の案内役も拠点で待機中との事だ。そうして地下道を通って進んでいく。


「そう言えば、もう負の念の解消区画には足を運んだって聞いているけれど」

「そうだな。負の念が形を与えられている常設区画と……もっと効率よく負の念を浄化するための封印層がある」


 ゼヴィオンが答えてくれる。


「ザルバッシュは封印層までヴァルロス達に同行して大変だったらしいわね」

「奴は何というか……大分負けず嫌いのようだからな」


 ルセリアージュが苦笑するとゼヴィオンが真面目な顔で思案しながら答える。


「封印層については本来、負の念の蓄積具合を見て、非常時に活用する場所、と言うことになっています」


 同行している天使が教えてくれた。常設区画の冥府魔物では余裕があり過ぎてあまり業の解消としての意味をなさないから、自主的に封印層の活用を望んだという話であった。


「流石はお二方、といったところですかな」

「そうだな」


 ウィンベルグの言葉に頷いているテスディロスである。

 そんな調子で地下道を通って行き、下層拠点のある広大な空間に出る。と、地下道を出た途端に、魔力の火花が散る光景が目に飛び込んできた。

 魔力の尾を引きながら飛び回る白と黒の輝きが空中ですれ違いざまに火花を散らし、互いから放たれた魔力の弾丸が激突して弾ける。


 ヴァルロスとベリスティオだ。両者の動きの速さや攻防で応酬される技術の高さ。放たれる弾幕の密度からして見た目は相当なものだ。

 ただ、ぶつかり合った瞬間の魔力の衝撃であるとか、弾幕に込められた魔力はそこまででもないから二人とも本気ではない、というのがわかる。これはウォーミングアップの訓練といったところか。


 それを裏付けるように二人はすぐに俺達の到着に気付いたのか、互いに手を止めてこちらを見てきた。


「どうやら到着したようだ」

「うむ」


 と、そう言ってこちらに降りてくるヴァルロスとベリスティオである。


「いや、どっちも良い動きだった」

「実力の近い相手との組み手は色々と勉強になる」

「私が出て行った後のハルバロニスの武術というのも気になっていたからな。時々こうして手合わせもして貰う事にした」


 俺の言葉に、落ち着いた様子で応じる二人である。


「それと……儀式関連は順調なようだな。あまり詳しくは聞かないが、こちらにも祈りに似た力が流れ込んできているのを何度か感じた」

「そうだね。色々目星も付いた感じかな」

「それは何よりだ」


 月光神殿やハルバロニスで確保したものの他に、月の採掘場からの石も届いたし儀式に関してはきっちり進めていけるだろう。

 過去の話にまつわる感情の動きはヴァルロスとベリスティオにも届いているようだが、具体的な内容までは伝わっていないようだからな。儀式当日の共鳴に関しても問題はないと思う。


 さてさて。ヴァルロスもベリスティオも、ウォーミングアップ程度だったので疲れてはいない、との事ではあるが、まあ下層拠点に場所を移し、これからの事を少し打ち合わせてから動いていくこととしよう。

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