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番外1110 祈りと儀式の意味を

「おはようございます」

「はい、おはようございます」

「良く晴れて――良い日になりそうですね」

「はい。エレナ様」


 朝――朝食をとってから転移港に向かってそこで待っていると、ベシュメルクからガブリエラが姿を見せた。エレナとガブリエラは顔を合わせてにこにこと挨拶をし合い、パルテニアラも相好を崩す。血の繋がりはないが容姿は良く似ていて、相変わらず実の姉妹のような雰囲気の二人である。


「スティーヴンお兄ちゃん達も元気そうで良かった」

「ああ。カルセドネとシトリアも、いつも元気で良い事だ」

「うんっ!」


 スティーヴン達も一緒で、顔を合わせて挨拶を交わし、カルセドネとシトリアも揃って頷く。スティーヴン達はガブリエラの護衛役ではあるが、資料の運搬も買って出てくれたらしい。


 通信室でのヴァルロス達との話が纏まったので、各所に経緯を説明し、そういった術式に関する資料や知恵を借りられないか聞くことになった。

 そこでタームウィルズからはペネロープやアウリア、同盟各国ではパルテニアラやユラに協力を頼んだ。


 ただベシュメルクの場合、パルテニアラに力を借りる系統の術式に関する資料はあってもそれを管理しているのはガブリエラだからな。そこでこうして話を通し、資料を運んできてもらった、というわけだ。


 神格を得ているベリスティオから力を借りる方法であるが……神官や巫女の祈りによって精霊や神格者に語りかけ、加護や祝福という効果を顕す、という方式を踏襲する事となる。


 そうした方法は信仰や祈りを核とするものなので儀式はある程度体裁を整えてやれば何とかなってしまう事も多いのだが……今回は資料を見て検討した上で、安全に効果を増強するための道筋をしっかりつけよう、というわけだ。


 俺も精霊や神霊に絡んだ術をしっかり学んだわけではないからな。基礎的な知識や魔力の流れからの逆算、高位精霊達に力を貸して貰えているといった事情から不便はしていないけれど、最適化するとまた違ってくるだろう。


 ガブリエラやスティーヴン達と挨拶をしていると、ヒタカと繋がっている転移門からもユラとアカネがやってくる。


「こちらではおはようございます、ですね」

「そうですね。ヒタカノクニでは……今の時間帯はこんばんは、でしょうか」


 ユラの挨拶にそう返すと、二人は笑顔で頷く。時差によってヒタカは夕方頃だろう。こちらが朝ならば魔道具込みでお互い活動しやすい時間を作れる、というわけだ。

 では、このまま迷宮入口前の広場に向かい、アウリアとペネロープと合流してからフォレスタニアに向かうとしよう。


 アルバート達にも魔道具作りを手伝ってもらう事になるかも知れないが、工房の面々はフォレスタニアに集合する、との事だ。




「おお。テオドール。待っておったぞ」

「ふふ、おはようございます、皆様」


 ガブリエラやユラ達と共に転移港から月神殿へと向かうと、アウリアもそこで待っていた。ペネロープ共々挨拶をしてきて、マルレーンも嬉しそうにペネロープの所へ向かう。

 月神殿の巫女達も書物――資料を手にしていて、準備万端といった様子だ。


 というわけで合流した面々と挨拶をしつつ、フォレスタニアへと飛んだ。

 フォレスタニア城に到着し、サロンにて茶を飲んで腰を落ち着けてから各国の面々が持ってきてくれた資料を並べながら話をしていく。

 冥府との中継についても行っている。母さんやカイエン、ユウ、ベリスティオやヴァルロスといった冥府の神格者に関しても意義のある内容になりそうだからだ。


「信仰の対象――私で言うのでしたらシュアス様に祈りという形で想いを込め、シュアス様から力を受け取って祝福や加護を現世に顕す、というのが神霊や精霊に仕える神官や巫女の役割だと理解しています。以前、四大精霊王に仕える巫女様と意見を交わした事もあるのですが……その方も感覚的なところでは納得して下さっておりました」

「東国でも巫女としての役割は大きく変わらない、と思います。私達は固有の神霊ではなく、あらゆるものに宿る神霊に祈りを捧げて力をお借りしたりするものですが」


 ペネロープが言うと、ユラも同意する。シュアス様と呼ばれたクラウディアは、少し気恥ずかしげに咳払いして答える。


「祈りに対して力を返す側としては……私自身に想いが届くというよりもすぐ隣り合うところで共鳴するような感覚があるわ。神官や巫女に相応しくない考えに基づく祈りは――それに響かないから祝福や加護が効果を発揮することもない、のかしらね」


 クラウディアの言葉を受けて、話に参加するために顕現してきた四大精霊王達も頷く。


「その感覚は何となく分かります。共鳴するそれは、私でありながら私でないと言いますか」

「それこそが神格、と呼ばれるものかも知れぬな」


 マールの言葉にプロフィオンも同意し、ルスキニアがこくこくと頷く。


「ふむ。信徒達の思い描く我らと、我ら自身には少しばかりズレがある、か」


 ラケルドが納得したように言う。


「信仰対象側の感覚を直接聞けるというのは中々に貴重ね」


 と、ローズマリーが感心したように言う。その言葉に少し笑って俺も口を開く。


「より大きな加護や祝福を行使できる巫女や神官は、信仰対象の性質、性格を理解するために瞑想や水行なんかをして信仰対象に同調するための修業をしているって聞くし……共鳴をしやすくしているんだろうね。だからクラウディアと面識のあるペネロープ様や、マルレーンが祈りを行った時、祝福や加護も強いものになる、と」


 そう言うとペネロープやマルレーンは納得した、と言うように頷いていた。


「精霊魔法の場合は――そうさな。使役や契約する精霊と、対話や同調をする事で信頼関係を構築し、より大きな力を引き出す事ができる、とされておるな」


 と、アウリアが手の平の上に小さなつむじ風を作りながら言った。そんなアウリアの肩にはシルフがにこにことした笑顔で腰かけていたりするが。


「この場合は、神格者と信徒というわけではなく、個人と個別の精霊だからっていう事になるかな。ただ……原理的には神官や巫女が強い祝福や加護を引き出すのと同じかも知れない」

「今の話を聞いていると確かにそう思うのう」


 俺が言うと、アウリアも満足げに頷く。


『では、祀る者達が当人を知っていればズレも少ない、という事になるかな。神格者としては新参だから、そういったズレという感覚も俺にはまだよく分かっていないが……』

『祝福や加護を増強する手掛かりにはなりそうね』


 ヴァルロスが言うと隣のモニターで母さんも頷いた。モニターの向こうで冥府の面々も真剣な表情で聞き入って思案している様子である。


 まあ、そうだな。今現在フォレスタニアの慰霊の神殿で祀っている――ヴァルロスやベリスティオに関して言うなら、当人の事を知っていたり、想いを受け取っていたりするから、ズレという感覚が分からないというのは有るかも知れない。


 してみるとベリスティオと約束をし、当人とも交流のある俺としては、最初から比較的大きな力を引き出せる条件は整っている、というわけか。


『となると……後は神霊――神格者側の力を高める措置があれば目的を果たす事が出来るかな』


 ベリスティオが思案しながら言った。


「その辺は祈りや儀式で強化も可能なのだろうな。祈りによる祝福や加護は本来副次的なもの。祈りが信仰の対象に力を与える源泉となり……そうした存在が平和を維持してくれるように祈念するものなのだし」


 と、パルテニアラが教えてくれる。そうだな。パルテニアラに対して歴代の巫女姫が祈りを捧げてきたのも、境界門の封印を維持して平和が続く事を願っているからだし。

 後は、祈りを捧げる者達。それから儀式によって力を高める手順が必要となる。その辺は各々の持ってきた資料を参考にしていく、といったところか。

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