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番外1079 海の民結集

 日々の仕事と共に諸々の仕事や準備も進んでいく。

 と言ってもそれで急に多忙になるのかと言えばそうでもなく……例えば造船所での飛行船の建造等は俺が船体を造るものの、浮遊炉ほかの建造はシルヴァトリアが主体になって進めてくれている。アドリアーナ姫が責任者となり、お祖父さん達七家の長老達が基幹部分を造る、というわけだ。


 交流会の準備にしてもエルドレーネ女王とロヴィーサ、モルガン、レンフォス、御前にキュテリアといった海の民に関わる面々が積極的に手伝ってくれて、湖底の交流会準備も順調である。


 城の方は城の方で武官、文官、迷宮村と隠れ里の住人達と……十分な人手があるしな。そんなわけで俺は俺にしかできない仕事に注力すれば良いという事で、抱えている仕事の種類は多いがそこまで忙しなく駆け回る必要はない、というのが現状だ。


 工房も一つ一つ仕事を進めているし、タルコット達も最近はかなり魔法技師としても頼れるのでこなせる仕事の量自体が増えている感がある。


 まあ、俺の方はみんなに仕事を割り振る事で、暫定的な家臣扱いの面々にも禄というか給金を与える正当な理由にもなるしな。


「最近の隠れ里のみんなの様子はどうかな?」

「皆中々楽しそうですな。普段との変化もありますし……参加している、誰かの力になっているという感覚は存外重要なのでしょう」


 執務を終えて別の仕事に向かう傍ら、城のみんなが打ち合わせをしていたので尋ねてみると、オズグリーヴは穏やかな笑みを見せてそんな風に返答してくる。


「それは確かにね」


 俺も折に触れて様子を見ているが、オズグリーヴだと気楽に話せることや気付けることもあるだろう。そんなオズグリーヴから見て楽しそうだというのなら、合間合間を見て仕事を手伝ってもらうというのは良い方向に作用していると思う。


 隠れ里の面々は約束もあってフォレスタニア城で預かっている以上、衣食住については過不足がないようにしている。

 その上で自立もできるようにと勉強と職業訓練を並行して進めているが、合間を見つつ実際の仕事の手伝いもしてもらう事で、各々の適性を見ながら手元で自由になる賃金も得る事ができる、というわけだ。


 隠れ里の面々は――月の民の子孫だからな。総じて魔力の保有量と扱いに優れているので仕事の手伝いとなった場合に魔法関係に強い。実際、工房の仕事や画廊の準備も手伝ってもらって、その辺は結構助かっていたりするのだ。


「ふふ、テオドール公はベリスティオ殿やヴァルロス殿との約束の事もありますから、折に触れて皆を気にかけて下さっている。そのお気持ちはしっかりと伝わっております。私も皆も、感謝しておりますよ」


 オズグリーヴが笑って言うと、テスディロスとウィンベルグ、オルディアも頷いていた。


「俺達に関して言うなら随分と良い待遇で迎えてもらったと思っている」

「迷宮村の住民達もですが、前例があるから皆も安心できる、というのはありますからな」

「そうですね。今の私達の立場や在り方も、隠れ里の皆さんの不安を取り除くことに繋がるのなら幸いです」


 と、そんな風に言ってくれるテスディロス達である。


「ふふ。迷宮村のみんなも技能習得は進んでいるし、外の常識も感覚的に分かってきたものね。あの子達も自分達が通った道だから、隠れ里の住民とは仲良くしているみたいね」


 クラウディアがテスディロス達の言葉を受けて微笑む。


「家事についても迷宮村の住民が教えたりしてくれているみたいだからね」

「外で暮らすためにテオドールに力を貸してもらったものね。隠れ里の人達にも同じようにしたいと思っているみたい」


 ああ、そうか。それは何というか……ありがたい話だ。

 迷宮村のみんなについては――隠れ里の面々に先んじて色々進めてきたから、受け持っている仕事も外との関わりにおける生活も、大分馴染んできたという印象がある。


 仕事をしながらその合間に勉強や護身術を身に着けるといった具合で、隠れ里の住人とは各々の性質上、習得するものの優先度や比率が少し違ったりするが、外の常識を学ぶ、という点は一緒だ。閉鎖された環境から外に出てきた者同士。良い関係を築いているのならこれ以上はないな。


 後は――外にいる面識のない魔人達にもこの辺の事が広まって、とりあえず話を聞いたり、広めている情報に興味を示す、という程度に信用を得られれば良いのだが。

 魔人達についてはヴァルロス達とも相談しつつ、ゆっくり進めていこう。色々と付随する問題もあるし、感情的な部分だって軽視できるものではないからな。




 そんな風にしてフォレスタニア城内外のみんなと協力し、関係各所と打ち合わせや相談を重ねつつ、一日一日が過ぎ、そうして交流会当日がやってくる。


 そんなわけで頃合いを見計らって転移港へと向かう。

 まずはエルドレーネ女王達……ルーンガルドの海の民と合流してから魔界の水の友を迎える、というわけだ。


 みんなと共にメルヴィン王、ジョサイア王子、ヘルフリート王子とカティア、ソロン、キュテリアといった顔触れで待っていると転移の光が走り、エルドレーネ女王とグランティオス王国の親善大使であるロヴィーサ、セイレーンの族長マリオン、武官のウェルテスにエッケルスといったグランティオスの面々が姿を見せる。ロヴィーサについては改造ティアーズのブルーコーラルと共にエルドレーネ女王達を迎えに行っていたわけだな。


「おお、待たせてしまったかな?」

「僕達も予定より早めに来ていましたから。陛下が一番乗りですね」

「ふふ。そうであったか」


 と、エルドレーネ女王は上機嫌そうな印象だ。そうして久しぶりの再会を喜ぶようにお互い挨拶をしていると、転移門が光り――その中からネレイド族と深みの魚人族が一緒にやってくる。族長のモルガンと、長老のレンフォスを始めとした面々だな。パラソルオクト達も同行していて、一気に転移港が賑やかなことになった。スレイブユニット側で迎える側に回ったヴィアムスも、満足げに頷いていたりするが。


 ちなみにヴィアムスの本体はといえば、深みの魚人族の集落の人数が交流会で少し減るので留守は任せて欲しい、と気合を入れて集落の防衛に臨んでいるようだ。


「これは皆さんお揃いで」

「おお、テオドール殿……!」


 挨拶をすればやってきた面々も笑顔で応じてくれる。スキュラのキュテリアは、深みの魚人族達の姿を認めると、笑顔でそちらへ向かう。


「いらっしゃい……って私が言うのも変だけれど。こんにちは」

「これは、キュテリア殿」

「お元気そうで何よりです」


 深みの魚人族のブロウスやオルシーヴがキュテリアに応じる。

 そんな和気藹々とした雰囲気の中で、東国からも御前と共に河童一家が姿を見せた。


「おお……。良い具合に水の気が高まっておるな」

「心地の良いもんですな」


 表情を綻ばせる御前と、うんうんと親子で頷く河童達である。


「これでルーンガルド側の交流会参加者は全員揃いましたね」

「そうだね。俺はこのまま頃合いを見て迷宮奥まで出迎えに行く事になるかな」


 グレイスの言葉に頷いて言う。交流会参加者はこのまま転移港で待つとの事だ。フォレスタニアでの受け入れ態勢はできているが――念のためにというか、今の体調や陸上に関して問題や不備がないか聞いてみると、全員問題ないと応じてくれた。


「まあ、いざとなれば妾の水の帯もあるし、各々水を纏う術も心得ていよう」

「それを聞いて安心しました。では――このまま転移港で待っていただいて、皆で魔界の皆さんの出迎えですね」


 というわけで、魔界の面々とも合流したら、そのままフォレスタニアに向かう事になるだろう。

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