表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1839/2811

番外1065 ディアボロス族の見解は

 ユイは将来ラストガーディアンとなるという事もあり、魔界……特に迷宮では人目の多いところに行って現地を見学というのは対策無しでは控えなければならない。

 ただ、迷宮中枢部でデータだけ見ているというのもバランスが取れていないような気がするので、そのために現場を見られるようにシーカーを管理施設や迷宮入口に配置したりしていたわけだ。


 これも仕事の一環……というより、ラストガーディアンとして関わりを持つ事になるのが魔界の民だからか、シーカーから送られてくる中継映像をユイは熱心に見ていた。


「あっ、ブルムウッドさん達も迷宮に潜ってたんだね」


 迷宮の奥から転移で戻ってきた面々を見て、ユイが声を上げる。そこにはブルムウッドとヴェリト達がいて。背嚢に結構な素材を集めて、丁度転界石を使って迷宮内部から戻ってきたようだ。


「外で狩りをした経験があり、迷宮の秘密を守れる人材となると、彼らがうってつけだったのでな。あの面々なら浅い階層で遅れを取る事もあるまいと、ブルムウッド達には今回内部の探索と狩り、そして入口に転界石で戻るまでを体験してきてもらった、というわけだ」

「確かに、経験や能力的に言ってもブルムウッドさんは熟練ですし、ヴェリト達も冒険者に近いところはありますね」


 ヴェリト達に関しては冒険者として見るなら……若手期待の有望株と呼んで差し支えないぐらいの実力は十分にある。ディアボロス族は普通に空を飛べる、というのもあるしな。

 ブルムウッド達は狩ってきた魔物の素材、魔石抽出用の部位を一先ず管理施設の別の兵士に預ける。これらの素材に関しては商人を通して換金し、ブルムウッド達の臨時ボーナス扱いになるらしい。


 メギアストラ女王によれば「探索への意欲を高くしてもらうため」だそうな。浅い下層でどのぐらいの収入になるのか等の指標にもなるだろうしな。


 オレリエッタが管理施設のシーカーを腕に抱き、そのまま休憩室に移動する。

 向こうには水晶板がないが、通信機はあるので俺達と双方向でやり取りはできる。


『探索ありがとう。怪我はしていない?』


 状況把握している事もこちらから伝えるのも兼ねて通信機でメッセージを送ると、ヴェリト達は笑顔を見せる。


『ああ。見ての通りだ。大丈夫だった』


 シーカーに向かって伝えてくるブルムウッド。その返答にリヴェイラが「良かったであります」と反応し、ユイと微笑みあっていた。


『浅い階層ってのもあるからかな? 迷宮っていう場所が場所だから、最初は慣れなくて気疲れはしたけど、テオドール公が調整しているしその分を差し引いて魔物自体の強さも考えられているって感じられた』

『ギガス族も入れるから、天井も通路も広くて空を飛んで戦えたものね」


 ヴェリトとオレリエッタが言う。


『そのへんは見立ての通りだね。浅い階層で躓かれて迷宮探索の気力が損なわれても困るし。今後も狩りとしては丁度いいぐらいに考えていきたいから、探索者の感想、見解も集めて反映していきたいとは思ってるよ』

「その辺の情報収集は管理施設側でも進めるのよね」


 通信機でそう返答しつつこっちにもいるみんなに伝わる様に読み上げると、ジオグランタがメギアストラ女王に尋ねる。


「今後、探索者に関する仕事を取り纏める組織が作られていくが、その中で情報の収集と共有は行われる予定だな。素材の収集依頼、市場売買等の仲介も行われていく事になるだろう」


 尋ねられたメギアストラ女王は澱みなく答えていた。冒険者ギルドを参考にしているだけに、結構具体的に組織結成に向けて動きだしているようで。

 浅い階層の魔物については剥ぎ取れる素材が食材やちょっとした薬になる植物系の魔物であるとか、外骨格が盾や鎧の装甲として使える甲虫型の魔物であるとか、加工技術をあまり必要とせず、即席でそこそこ役に立ちやすく、かといってそこまで強くはない、という魔物を揃えている。


 浅い階層で潜って、とりあえずの装備を整えたり飢えを凌いだりできるように、というわけだな。


 これがルーンガルド側の迷宮だと、駆け出しの冒険者が、迷宮に出て来るゴブリンの武器を鹵獲して間に合わせで自分の武器とするのも有り触れた光景なのだが、魔界のゴブリンは変異しているからか蛮族という位置付けで警戒されている。

 そこで浅い階層に配置するのも探索者が尻込みしてしまうかと別の魔界の魔物を配置する形になったわけだ。


『あまり外では遭遇したことのない魔物もいたけど……』

『ああ。戦ってみてもそれほど強くはなかったな』


 浅い階層の魔物と戦ってみての感想を聞いてみれば、ヴェリトやオレリエッタが顔を見合わせて頷き合う。総じて『迷宮というロケーションに慣れて、曲がり角の待ち伏せ等に気を付けていれば大丈夫だろう』という見解だった。


 そうして魔界迷宮の一般開放に関する情報収集やこれからの交流会や幻影劇についても話をし、俺達は一旦魔界を後にしたのであった。




「おかえりなさい、テオ」

「おかえり、テオドール」

「ああ、ただいま」


 フォレスタニア城に戻ってくると、みんなが笑顔で迎えてくれる。


「一般開放も順調なようで何よりです」

「管理施設の周りも賑やかで、お祭りの後だからか、何だか楽しそうだったよ」


 アシュレイの言葉にユイが答える。そうだな。迷宮入口でも気合の入っているグループが結構いたりして、活気があった。

 今後はしばらく魔王国側と連絡を密に取って、魔界迷宮の探索状況に注視していく予定だ。ユイも流体騎士団との連係や指揮訓練、防衛シミュレーション等があるのでその辺も並行して進めていきたいところだ。


「ん。今日のところは仕事も終わり?」

「そうだね。ゆっくりさせて貰おうかな」


 シーラの言葉に答える。幻影劇の事が決まり、魔王国から本や資料を貸してもらったので、今日はフォレスタニア城の中庭の東屋あたりでのんびりと読書させてもらうとしよう。


 そうした話をすると、アルケニーのクレアが「では、お茶の準備を進めておきますね」と頷いて通信室を退室していく。


 そんなわけでシーカーを連れて通信室と中継できる体制だけ整えつつ、中庭へ移動した。フォレスタニアは気候が落ち着いているので、陽当たりも良好。中庭に造られた水路を流れる水の音も心地が良い。

 みんなで東屋に腰かけ、お茶を飲みながら本を読む。東屋の周りではコルリスとアンバーが横になって日向ぼっこしていたり、ラヴィーネとアルファが植え込みを飛び越えて追いかけっこをしていたりと、動物組も陽当たりの良さに喜んでいる様子が見て取れる。


 コルリスとアンバーの背中や腹の上にカーバンクル達が乗って昼寝していたりするのは何とも脱力する光景だ。

 すねこすりのオボロを膝の上に乗せ、コルリスに背中を預けて満足そうなシャルロッテも混ざっているけれど。

 リンドブルムが日陰で大きく欠伸をし、その周りでマギアペンギンの雛達も昼寝をしていたりと何とも和やかな事である。


 そんな光景を傍目に眺めつつ、みんなにも魔王国から借りてきた資料の内容を読んで聞かせたりする。

 メギアストラ女王が、蛮族王討伐の功績もあって次の代の魔王として指名された経緯等も資料では示されており、先日聞いた話の舞台裏や続きも補完できたりして、中々に興味深い内容だ。

 最大の脅威である成竜と、魔王と共に戦ったというのは……確かに魔王国の官民問わず魔王としての支持や信頼を得るのには十分過ぎる程の功績だろうな。


「当人の話と資料とで、幻影劇にも厚みが出そうで良い事ね」


 資料の内容を語って聞かせると、ローズマリーが羽扇の向こうで言って。みんなも楽しそうにその言葉に頷くのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ