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番外1062 冥精を迎えに

 魔界から戻ってきて、一夜が明ける。


 飛行船操船用のフライトシミュレーター区画の建設。先代魔王とメギアストラ女王の幻影劇。魔界の水の友とルーンガルドの海の民達の交流と……魔界絡みで今後の予定もできたので、それらも準備を進めていくとしよう。


 フライトシミュレーターについては俺が進める仕事なので、基本部分を組み上げたら迷宮核による魔法建築という事になるな。

 幻影劇は急ぎではないのでゆっくり進めて行けばいい。魔界迷宮の一般開放に合わせて魔王国を訪問する予定だから、その時に先代魔王に関する資料を見せてもらいながらストーリーや演出面を練っていけば良いだろう。


 水棲種族の交流会に関しては、まだ細かい事が決まっていないが、城で働く使用人達や文官達には話を通しておく必要がある。


「――そんなわけでまだ詳しい日程も決まっていないけれど、交流会も行われる予定になった。クシュガナと連絡を取り合いつつ予定を組む事になるから、具体的な日程はもう少し先になると思う。但し……グランティオス王国、ネレイド族や深みの魚人族とも協力するから、ロヴィーサ、モルガン、レンフォス達と打ち合わせをする事が増えるかな。当日使う料理の食材については、いつも通りかな。訓練を兼ねて迷宮で確保する事になりそうだ」


 交流会の場所に関してはフォレスタニアだが、大きな括りではルーンガルドの海の民が、訪問してくる水の友を歓迎するという形なので、グランティオス王国の親善大使でもあるロヴィーサやモルガン、レンフォスといった各部族の族長との打ち合わせも必須になってくる。水竜親子やスキュラのキュテリア、マギアペンギン達といった面々も是非参加したいという事で……まあ、交流会当日は賑やかな事になりそうだ。


「なるほど。ではその旨、皆に情報共有しておきます」

「畏まりました。詳しい日程が決まりましたら、調整に関してはお任せください」


 セシリアと共に頷く文官の長ゴードン。


「うん。よろしく頼む。それから留守中の仕事に関してだけれど、いつもきっちり執務の補佐をしてもらって助かっている。ありがとう。これもみんなにも伝えておいて欲しい」

「勿体ないお言葉です」

「皆も喜びましょう」


 セシリアやゴードンはそう言って穏やかな笑みを返してくる。

 そんなやり取りを交わしてから俺も今日の分の書類を受け取り、執務に戻る。セシリア達も各々の仕事に戻っていった。


 今回の魔界行はそれほど長居したわけではないので、留守中の仕事に関してもそれほど溜まっているわけではない。今受け取った分の書類を片付ければ今日の執務に関しては一先ずは終わるだろう。


 というわけでみんなも無理のない範囲で手伝ってくれる。


「こうしてみると執務を手伝うのも中々楽しいわね。訓練はさすがにできないから、というのもあるのでしょうけれど」


 というのはローズマリーの弁である。仕事なり研究なりに携わっていたいというのはローズマリーの性格的なところではある。

 執務に関しては体調に負担にならない程度ではあるが、そう思ってくれているのなら何よりだ。


「ん。みんなで一緒に仕事するから尚更楽しい」

「そう見る向きもある、かも知れないわね」


 シーラの言葉に羽扇で口元を隠して答えるローズマリーである。そんなローズマリーにみんなも楽しそうに笑みを見せたりして。


『ふふ。みんなの普段のお仕事の風景……。うん、良いものよね』


 と、モニターの向こうで母さんがうんうんと頷く。

 普段の仕事を見てみたいという事で、モニターを執務室に持ってきて、今日の仕事風景を見て貰っている。身内だし書類の具体的なところを見せなければ問題はないだろう、というわけだ。


 そうして暫くみんなと共に仕事を進め、フォレスタニア、シルン共に今日までの分の執務を完了する。


『そうそう。伝言を頼まれているのだけれど、リヴェイラちゃんの方も落ち着いたからそっちに向かいたいと言っていたわ。リヴェイラちゃんに関しては、陛下からも過ごし方の事で相談があるとか』


 仕事が一段落したところを見計らって、母さんがそんな風に教えてくれた。


「相談?」

『ええ。詳しい事は……そうね。ベルディオーネ陛下から教えてもらった方が良いのかしら』

「分かった。ユイもリヴェイラには早めに会いたいだろうし、天弓神殿に迎えに行って……それからみんなも交えて話をしてもらう事にしようかな。その後で魔界迷宮の様子を見て来る事になると思う」


 そう答えると母さんは頷いて『それじゃあ、リヴェイラちゃん達に伝えて来るわね』と言うと立ち上がって伝言に向かってくれたようだ。


「それじゃ、俺もちょっと行ってくるね」

「はい、お気をつけて」


 と、みんなも笑顔で見送ってくれる。

 魔界迷宮に関してはジオグランタが管理者という事もあり、異常があればジオグランタからスレイブユニット経由、或いはメギアストラ女王から通信機で連絡を取ってもらえる手筈になっているので割合安心ではあるか。




 というわけで中庭にいたユイと合流。ティエーラと共に天弓神殿に飛び、そこから更に冥府へと移動する。

 移動先は冥府上層だ。中央の塔の一角にサウズが待機する部屋を用意してくれているので、今現在はそこと天弓神殿との間で双方向移動ができるようになっている。


 中継施設、寝室、厨房、風呂、トイレといった必要な設備もこの一角に移されて、冥府に滞在する事も可能な状態だ。


「ああ。これはテオドール殿、ユイ殿」


 と、俺が姿を見せると警備についてくれている天使が笑みを見せる。ユイと共に「こんにちは」と挨拶を返せば天使は頷き、今ベルディオーネ女王や母さん、リヴェイラがこっちに向かっていると教えてくれた。サウズも俺が姿を見せると手を挙げて挨拶してきたのでしっかりと魔力補給しておく。


「ふふ。シーカーさんとハイダーさん達の材料も揃って来ているそうですよ。丁度良い質と大きさの昇念石が揃ったら作製をお願いしたい、との伝言も預かっています」

「分かりました」


 昇念石は天然ものというか、中々同一品質というわけにもいかないからな。素材が揃ったら冥府素材のシーカーとハイダーを作って置き換えていく事になるだろう。


 そんなわけで隣にある中継用の部屋に移動し、水晶板モニターでフォレスタニアのみんなと話をしたりしながらユイと共に待っていると、ベルディオーネ女王達が姿を見せる。


「おお、待たせてしまったかな」

「いえ。先程到着したばかりですから」

「こんにちは……!」

「はい、こんにちは。ふふ。元気そうで何よりだわ」

「こんにちは、であります!」


 といった調子でベルディオーネ女王や母さん、リヴェイラと挨拶を交わす。


「母から、相談したい内容があるというお話を伺っておりますが」

「うむ。リヴェイラについては妾の直接の眷属という事が冥府に周知されたからな。時間経過と共に冥府に住まう者達の想いも受けて、冥精として力を増していく事が予想される。今のところ引退等を考えているわけではないが、もしかしたら成長如何によって次代の冥府を任せるだとか、何かしらの冥府の管理に関わる仕事を任される……という事もあるやも知れん」


 俺やユイと関わりを持ち、在り様を隣で見ておけば、それが良い影響に繋がるだろうと。そう考えたのだそうな。現世で修業を積むというわけではなく、リヴェイラの今後について知っておいてくれれば特別な事はしなくても大丈夫、との事である。

 その辺は……現世で行動を共にしていれば勉強になると考えているのだから、随分と信頼してくれているように思う。


「分かりました。現世にて見聞を広げるという感じですね。僕もその辺りは意識しておこうと思います」

「それは助かる。感謝するぞ」

「よろしくお願いするであります……!」


 ベルディオーネ女王の言葉と共にリヴェイラが丁寧に一礼してくる。


「うん。よろしく」

「よろしくね、リヴェイラちゃん!」


 と、俺達も返答して、モニターの向こうでみんなも微笑むのであった。

 リヴェイラが少し冥府に残っていたのは、眷属となった後の性質を調べ、今後の方針を立てるためでもあったのかも知れないな。

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