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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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173 歓迎会と改築

「ただいま」
「おかえりなさい、テオ」
「おかえりなさい」

 諸々の報告を終えて自宅に帰ってくると、もうすっかり日が傾いていた。台所では夕食の準備が進んでいて食欲をそそる匂いが漂っている。

「おかえりなさいませ、旦那様」

 セシリアがこちらに向き直り、お辞儀をしてくる。旦那様……と呼ばれるのは些か違和感があるが……。

 彼女はタームウィルズに出てくるのは殆ど初めてだということで、俺が出かけている間、案内がてらにみんなで買い物に出かけていたようだ。
 今日はミハエラとセシリアの歓迎の意味合いも込めて、それなりに豪華な食材を買ってくるという話だったので、割と楽しみである。

「ん。ただいま。タームウィルズはどうだった?」

 尋ねてみると、セシリアは真剣な表情で思案して答える。

「色々な方がいらっしゃるのですね。エルフの方々の姿も時々見受けられたので、少し緊張しましたが……。はい。特に何も言われることもなく」
「まあ……森での意見対立っていうのは人里ではあんまり関係ないんじゃないかな。特にタームウィルズでは」
「そういうものですか。確かに私も、あまり気にしてはいませんが」
「人里に慣れている場合はね。全員が全員ではないだろうから、知らない相手ならそれなりの警戒をしておくべきなんじゃないかな」

 まあ、これは相手の種族を限定した話ではない。

「なるほど……気を付けます」

 エルフとダークエルフであるが、やはり対立というのはあるらしい。
 BFOでのクエストによると互いの祖が考え方の違いから仲違いして、部族を率いて戦争をしたそうな。結局決着はつかずに、それ以来犬猿の仲なのだとか。

 どちらも森の奥深くに住み、森を荒らす相手――つまり自分達の領地に余所者に侵入されることを嫌う傾向があるのだが……エルフに比べるとダークエルフは他種族から恐れられる傾向にある。縄張りに入ってきた者達への対応が、エルフとダークエルフではやや違うからだ。

 エルフはどちらかと言うと穏健で、侵入者に対して精霊使役や魔法により、方向感覚を狂わせたりして森を出ていくように仕向けたりなどするらしい。
 対してダークエルフは閉鎖的且つ好戦的。領地に入った相手への実力行使も辞さない傾向があるようだ。
 そう。あくまで傾向。エルフやダークエルフが、皆どこでもそうなのだと考えるのは偏見で、集落ごとの族長の方針などでも割と違いがある……というのがBFOから得ている情報だ。

 どちらにせよ、エルフよりダークエルフの方が人里で見かけることは稀だ。そして両者とも人里での暮らしが長ければ長いほど領地や部族から立場上離れていくからか、あまり歴史的背景や部族の慣習には拘らない。
 もっとも……無闇やたらに森林を破壊するようなことをすれば怒らせてしまうだろうけれど。

 さて。食事の用意ができたようだ。
 タームウィルズらしい料理というか……迷宮から掘り出された食材を使った料理の数々が食卓に並ぶ。

「ではミハエラさんとセシリアの歓迎会を始めたいと思います。改めまして、申し出を受けて頂きありがとうございます」

 挨拶をして頭を下げると2人は頷く。ミハエラは粛々と。セシリアは少しだけ気恥ずかしそうに。
 炭酸飲料を注いだ杯を掲げて、乾杯の音頭を取ってからみんなで夕食である。杯の中身が酒ではなく炭酸飲料ではあまり格好もつかないが、まあ、俺なりの歓迎ということで。

「グレイス卿は、昔から料理が上手でしたね。私としては作法以外のことで教えられることがあまり多く無くて、残念に思っていましたよ」

 スープを口にしたミハエラが感想を口にする。俺が王城に行っている間に色々近況を聞いたようだ。

「本当……。美味しいです」
「ありがとうございます。ミハエラ様、セシリア様」

 2人の言葉にグレイスが柔らかい笑みを浮かべた。
 セシリアはグレイスの作ったスープを一口一口真剣な表情で味わっている。
 一般に言われるダークエルフのイメージは好戦的、排他的だが……セシリアは真面目で一生懸命という印象がある。このへんはミハエラの影響かも知れない。

「これも……不思議な飲み物ですね」
「テオドール様が作ったのです」

 炭酸飲料に目を丸くするセシリア。

「……そうなのですか。旦那様は多才でいらっしゃるのですね」
「テオドール坊ちゃまは本当にご立派におなりになりました。セシリア、よくお仕えするように」
「はい、ミハエラ様」

 食後にかき氷も用意してあったりする。そちらも2人には中々好評だった。



「はい、こんにちは」
「こんにちは、ロゼッタさん」

 明けて、翌日。
 資材も揃っていたので改築を始めることにした。ロゼッタも魔法建築を見学したいということだったので約束通り来てもらっている。

「こういうのを見る機会ってあまり無いからね。僕が前見たのも途中からだったし」

 と、アルフレッドが笑う。ロゼッタが見学に来るので、アルフレッドにも声をかけてみたのだ。学舎に通っていた関係でアルフレッドの正体をロゼッタは知っているから気軽に呼べるところはある。
 さて。アルフレッドも是非魔法建築を見たいということで……何やらみんなを引き連れて改築をすることになってしまった。

「では、早速始めましょうか」

 まずは――地下区画から広げていくか。地下室に移動し、そこの壁から通路を作っていく形だ。例によってクレイゴーレムを作ることで土砂を除けて、空間を作り、壁を固め、柱を作り補強。セラフィナと強度を確認しながら作業していく。
 地下に大広間や小部屋やらを作っていく予定だ。模型をレビテーションで浮かせて確認しながらどんどん作っていく。

「効率的ねえ。冗談みたいな速度で建物ができていくのだから、見ていて小気味が良いわ」
「ゴーレムが起き上がって、走って整列して行くのが面白いね」

 ゲスト2人は感心したように頷いている。ミハエラとセシリアはかなり驚いているようで、目を丸くしていた。

 魔法建築も何回目かになると慣れたもので、すぐに地下部分が終わる。ここから地上部分も行っていくわけだが――道から丸見えでやってしまうと内部構造などが衆目に晒されてしまう。劇場の時は宣伝にもなるかとある程度は容認していたが、自宅を衆人環視で作るというのはちょっとな。

 ということで、まずは敷地を覆うように土壁を作って、後は模型の通りに建物を作っていくわけである。

 1階部分に中庭、大浴場にトイレ、大食堂。2階、3階、屋根裏部屋に屋根と一気に形成。寝泊まりする個室も作っていく。個室には何となく心惹かれるものがあるのでロフトなど付けてみた。
 元々の家も形を残し、隣と繋がる廊下や扉を作り――みんなの要望も反映していく。

「よし。こんなものかなっと……」

 一息つくとみんなから拍手が起こった。また劇場の時とは違った感じだな。少々気恥ずかしいけれど。

「お疲れ様、テオ君」
「頼んで見せてもらって良かったわ。面白かった」
「んー……。ありがとう」

 苦笑して、今度は外に移動する。周囲の土壁を形成し直し、高さを適度なものにして塀にしてしまう。

「お、おい! 屋敷ができてるぞ!」
「え? 魔法建築……?」

 結局土壁の向こうでは、案外多くの者が足を止めて何が起きているのかと興味深そうに見ていた。土壁が無くなったと思ったら大きな屋敷ができていたので、かなり驚いている様子だ。まあ、建築途中の内部は見られていないので良しとしよう。

 さてさて。まだ内装や装飾部分は手をつけていない部分もあるが、大枠では出来上がりだ。後は家具や調度品を揃えなければならないが、村の住人が寝泊まりする部分は大使としての仕事も兼ねているので、メルヴィン王が手配してくれるらしい。
 娯楽室のダーツとビリヤード台は俺が作らないとな。ダーツの矢は町の鍛冶屋に発注済み。ラシャ織物も手配してあるから、それが届けばというところだ。
 まずはこのまま、みんなと一緒に内部の装飾部分などに手をつけてしまうか。
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