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番外1042 城に戻れば

「そうして部隊前面に煙の渦で作った槍――と言えばいいのでしょうか。こうした形状の物を構築してもらい……激突の瞬間に転移魔法との連係で突破した、というわけですね」


 冥府であった事を諸々説明していく。オズグリーヴの技のくだりは、ドリルの一言で説明して通じれば楽だったのだが。まあ、幻術を交えて見せる事でスムーズに説明できるけれど。


 そうして暗闇の平原を抜けてディバウンズの支援を受けながら前線基地に駆け込んだ事。そこでアイオーン達が乗っ取られていた事。情報漏洩の謎や犯人の目星がついた事等……時系列と共にメルヴィン王とジョサイア王子、フラヴィアとミリアムに説明していく。


 メルヴィン王達は興味深そうに話に耳を傾けていた。ミリアムは上体を前に傾けて目を輝かせながら話に聞き入っている。

 そんなミリアムの様子にフラヴィアは楽しそうに微笑みを見せたり話に驚いたりと、ころころ表情を変えていた。フラヴィア嬢の人となりはそこまで知らないが、割と素直な反応をする人物なのかも知れない。


 話の内容と言えば武装していないアイオーンを撃退したところから、作戦を立てて洞穴を抜ける場面へと続いていく。見張りは洞穴内にも配置されていたので、それに気付かれないように通り過ぎる場面はみんな固唾を飲んで聞いていた。


 そして話はマスティエルや変異アイオーン、黒い怪物達の群れとの戦いに及んでいく。母さんやヴァルロス、ベリスティオがベル女王に祈りを捧げて駆けつけてくれた事。呪法を叩き込んで機能不全にしてから化身を倒した事。

 冥府の先王の解放。大部隊でのマスティエル本体との決戦と、祈りの力。


 そうしてマスティエル本体が光の柱に吹き飛ばされて消失するところまで語り終えると話に聞き入っていたメルヴィン王達が拍手を送ってくれた。


「いやはや。此度もまた……大変なものだったのだな」

「化身は精霊としての性質を持って本体から力の供給を受けて再生していましたし、本体は本体で魔法生物に取りついた衝動が力を得た存在でしたからね。とかく、有効な攻撃はなんなのか、どうすれば滅ぼし切る状況に追い込めるのかという点を考えて戦況を見極める必要がありました」

「なるほどな。しかし盟主までが駆けつけて来るとは驚かされる」

「ベリスティオに関しては……そうですね。僕も驚きました。ベリスティオもですが、ヴァルロスも魔人化から解放されていたようではありますが」


 ベリスティオがラストガーディアンを止める事を選んだ事で自身の業から解放されたという事なのだろう。その後のヴァルロスやベリスティオとの会話やベル女王達、冥府の対応についても話をしておく。恐らくではあるが、彼らについては大丈夫だろう。


「そうだな……。彼らについては気掛かりな部分もあったが、此度の事で安心した。冥府との関係を見る限りでは問題無さそうだ」

「慰霊の神殿については支援を約束しよう。月の民やハルバロニス、隠れ里の面々もいるだろうが、他にも志を同じくする面々を探していきたいものだね」


 メルヴィン王とジョサイア王子は俺の説明を受けて、静かに頷く。


「ありがとうございます。今後も冥府には折を見て足を運ぶ予定ですが、その際ヴァルロス達とも交流は続く事になるかなと」


 負の念を消費するシステムについても伝えておく。迷宮も似たような仕組みなので、これに関しては伝えやすいか。



「リサ様の話……魔人達との約束……。私にできることは多くはありませんが、境界公の事は陰ながら応援しております」

「同じく……。広める事のできないお話ではありますが、知る事ができて嬉しく思います」


 フラヴィアとミリアムも真剣な面持ちで頷くと、俺を真っ直ぐに見やってそう言ってくれた。俺も「ありがとうございます」とお礼の言葉を返す。


 これで、冥府に関する報告も一先ず完了だな。冥府に関する諸問題は解決したし、期せずして魔人に絡んだ事に再び目を向ける事になったが、メルヴィン王もジョサイア王子も慰霊に対しては好意的な反応で喜ばしい事である。




 メルヴィン王への報告を終えてから、竜舎に挨拶に行っていたリンドブルムを迎えに行き、フォレスタニア城への帰路についた。

 共に迷宮入口まで下りてフォレスタニアに飛び、入り口の塔から城へ向かって飛翔する。リンドブルムも竜舎の顔見知り達に挨拶をしたからか、結構な上機嫌だ。


「リンドブルムも楽しかったみたいだね」


 というと、首をこちらに巡らせて一声上げて肯定の意思を伝えてくる。うん。楽しかったのなら何よりだ。


 俺が戻ってきたのを湖から見かけたマギアペンギン達が、飛翔するリンドブルムを泳ぎながら追いかけてくる。

 そうして船着き場にリンドブルムが舞い降りると、ティールと共にマギアペンギン達が水から上がってきて、おかえり、と声を上げる。うむ。


 船着き場には陽当たりの良い場所にコルリスとアンバーが腰かけており、俺が戻ってきたのを認めると手を振ってくる。どうやらコルリス達はマギアペンギンの雛達の面倒を見てくれていたようだ。近くに一緒に座っていた雛達も俺とリンドブルムの方に近付いてきて、おかえりなさいと声を上げる。


「ん。ただいま」


 コルリスやティール達に笑って返事をしてから、みんなの待っている作戦室改め、通信室へと向かった。モニターの置かれた通信室は、前よりも長時間の居住性を上げる為に長椅子等も配置され、ティーセットや給湯の魔道具なども置かれて、寛ぎながら話ができるようになっている。


「おかえりなさい」

「おかえり、テオ君」

「おお、テオドール公」


 と、みんなが笑顔で迎えてくれた。早速エレナが微笑みながらお茶を淹れてくれる。

 予定通り工房の面々もやってきているな。メギアストラ女王とボルケオール、ジオグランタもいて。魔界の面々も遊びにきていたようだ。みんなでお茶を飲みながら話をしていたらしい。


「ああ。ただいま」


 答えつつ椅子に腰を落ち着け、お茶を淹れてくれたエレナに礼を言う。


「父上の所にも行ってきたんだよね。報告はどうだった?」

「問題なく終わったよ。ヴァルロスとベリスティオや、慰霊の神殿に関しては、メルヴィン陛下もジョサイア殿下も好意的で……俺としても安心したかな」


 アルバートにそう答えるとみんなも「それは良かった」と穏やかな表情で応じる。


「ん。私達は、工房や魔界のみんなと、冥府での事や今後の予定とか話をしてた」


 シーラが教えてくれた。みんなも冥府でのことは一部始終を見ていたし、戦いに参加した面々もいるしな。

 今後の予定というのは……魔界迷宮の事だろう。


「魔界でも迷宮のお披露目の準備は整っているという事ですか」

「うむ。ユイも新たな力に目覚めたようだし、心強く感じていたところだ」


 尋ねるとメギアストラ女王がそう答えて、ユイもその言葉に嬉しそうに笑った。


「うんっ。まだ修行と検証が必要だけど」


 ユイが拳に魔力を込めて気合を入れている様子だ。モチベーションが高いのは良い事である。


「ユイの通力に関してはこれからもう少し調べた上で、安全性を高めていきたいところですね」


 ユイの通力検証については、冥府の環境を調べるために使った調査用魔道具が流用できそうだ。作り出した異空間内部で生命が活動可能なのか等、色々調べる事ができるだろう。


 魔界迷宮お披露目の日程についてもボルケオールが教えてくれた。それまでに執務やユイの通力検証、冥府のハイダー、シーカー達の冥府仕様への差し替え等の仕事を進めていくとしよう。

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