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番外928 東国の近況は

 シュンカイ帝、ヨウキ帝達とも合流して、マヨイガへと繋がっている転移門を潜った。光に包まれて……それが収まれば、もうマヨイガだ。

 襖が奥へ向かって開いていき。そこにマヨイガのスレイブユニットが現れた。振袖を纏った少女の姿だ。


「ようこそ皆様。来訪をお待ちしておりました」


 と、前に訪れた時と同じように口上を述べる。

 初めてヒタカやマヨイガを訪れるユイはと言えば「わあ……」と声を漏らしていた。マヨイガの演出に目を奪われているようだ。


「建築様式とか服とか好きだな。環境魔力も……落ち着く感じがする」


 との事だ。魔界迷宮の中枢部も落ち着くとユイは言っていたな。

 ラストガーディアンの間については鬼を形成するために魔力や寓意による場を整えたから、ユイにとっては生家という印象ではあるのだろう。ジオグランタの魔力を受けているので魔界出身の面々の魔力も心地良いものではあるそうだ。


 ヒタカの北東地域は妖怪達が暮らしやすい場所だ。レイメイ、御前、オリエの他に様々な顔触れが揃っている事からも分かる。ヒタカの面々は霊場と呼んでいたっけな。


「おお、テオドール達か」

「よく来たな。歓迎するぞ」


 マヨイガに案内されて奥へと向かうと御前とオリエ、それに妖怪達が顔を揃えて待っていた。

 湯呑でお茶を飲みながら俺達の到着を待っていたようだな。レイメイも含めてかつては喧嘩仲間といった関係だったらしいが……今は昔からの友人という雰囲気がある。


「こんにちは、お二方とも」


 というわけで、初対面となる顔触れ同士を紹介していく。


「よろしくお願いします……!」


 と、ユイが明るく挨拶をすると御前が表情を綻ばせる。因みにオリエと子蜘蛛達はと言えば、ユイの防具を作る時に素材を提供してくれたので既に面識があったりする。


「おお。噂には聞いていたが。物怖じはしないのは鬼らしいが、確かにアレの若い頃とは違うな」

「うむ。礼儀正しくて愛い事よな」


 オリエがそんな事を言いつつ微笑み、そんなやり取りを聞いていたゲンライがくっくと笑って肩を震わせていた。レイメイの若い頃は……今よりもっと豪気なものであったらしいが。


「は、初めまして。よろしくお願いするであります」


 リヴェイラも少し緊張した様子で挨拶をしていた。

 妖怪達も精霊に近い所があるからな。力の強い妖怪はリヴェイラも肌で感じ取れるところがあるのだろう。そんなリヴェイラにも御前達は笑顔で応じていた。


「話は聞いておるよ。今が大変な時だとは思うが……何、きっと状況は良くなっていく」

「そうだな。テオドール達が既に動いている以上はな。とはいえ、我らも何か力になれる事があれば相談に乗るぞ」

「うむ。年の功という奴だな」


 そんな風に御前とオリエが言うと、リヴェイラはお辞儀をして「ありがとうであります……!」と、明るい笑顔で応じていた。

 妖怪達や付喪神達もそんなやり取りに頷いて。ユイとオウギ、リヴェイラに代わる代わる自己紹介をしたりと温かく迎える。妖怪達は何というか、情に厚い印象があるな。

 リヴェイラと妖怪達の様子に、ユイもにこにことした笑みを見せているが。


「では、鬼の里に向かうとしようか」


 自己紹介も終わったところで御前が言うと、マヨイガも一礼する。


「楽しんでいらしてください。お風呂と寝床の用意は整えておきます」


 というわけで鬼の里での宴が終わったらマヨイガに一泊するという事になっている。

 例によって大型フロートポッドも転移対象に入れてヒタカまで持ってきているので、みんなには乗りこんでもらって、リンドブルムに牽引してもらう。


 マヨイガの中庭で準備ができた所で、みんなと共に鬼の里がある山に向かって飛び立つ。

 夕焼けに染まったヒタカの光景は長閑なものだ。ユイはフロートポッドには乗らずに外に出て飛行しながら環境魔力や景色を堪能している様子だ。楽しそうにフロートポッドの周りを飛び回っている。


「ユイ殿、嬉しそうでありますね」


 そんなユイの様子に、リヴェイラが表情を綻ばせて言った。


「何だかヒタカの空気が肌に合ってるって言うか。やっぱり、私の種族の由来がある場所だからかな?」

「故郷、とは少し違うにしても、やはり落ち着くものなのでありますな。私には……そういう感情に今一つ実感がわかないのでありますが」


 ユイの言葉に、リヴェイラは納得したように頷いてから、遠くを見るような目になった。そんなリヴェイラの様子に気付いて、ユイが少し真剣な表情になって言う。


「リヴェイラちゃんは――優しいし、良い子だから。きっと故郷に、リヴェイラちゃんの帰りを待ってくれている人がいると思う」

「ふふ。ありがとうであります。冥府に戻った時、ユイ殿のように感じられたら、それは楽しそうでありますな」


 そんなやり取りを見ていた周囲の面々も表情を綻ばせる。ユイもリヴェイラの事を心配して、力になりたいと思っているようだしな。ユイとしても、冥府に同行するから尚更というところはあるのだろう。俺としては上手く補助していけたらな、というところだ。


 そうして迎えにきてくれた妖怪達と共に飛んでいけば……山間にある鬼の里が見えてくる。鬼達は里の広場にいて、他の妖怪達と共に宴会の準備を進めていたようだ。俺達の姿を認めると里の鬼達が大きく手を振ってくる。


 フロートポッドを降ろしていくと、レイメイとその奥さんであるシホと共に、ツバキやジンもいて、こちらを見上げているのが目に入ってくる。


「こりゃまた大所帯だな。里が始まって以来の団体客か」


 と、レイメイは楽しそうに笑って言う。


「こんにちは、レイメイさん。みんなも元気そうで何よりです」

「ああ。のんびり寛いでいってくれ」


 フロートポッドから降りてレイメイや鬼達と挨拶を交わす。


「おお、この子がユイさんか」

「確かに……凄い力を感じるな」

「ええと、その。初めまして……!」

「うむうむ。歓迎するぞ」


 里の鬼達の注目を集めてユイも少し緊張している様子だが、元気にお辞儀をしていた。鬼達もそんなユイの人柄に好感を持ったらしく笑顔で向かえる。


「これはレイメイ殿」


 シュンカイ帝とゲンライの門弟達も、先達であるレイメイに挨拶をしたり、鬼や妖怪達がヨウキ帝達に挨拶をして笑顔で応対したりと、東国の面々は和気藹々とした雰囲気だ。


 穢れの問題もあって、ヨウキ帝やユラは余程の相手でなければ直接妖魔退治の矢面に立つ事もなかったというか、話が通じる相手かどうかに関わらず、立場がある事から万一の事を周囲が心配して、あまり妖怪達と直接の接点を持てずにいたそうだ。


 今はアヤツジ兄妹やホウ国の件で共闘したという事もあって、北東の妖怪達の人となりも分かり、中々良い関係を築けているから、ヨウキ帝やユラも喜んでいる、とアカネやイチエモンからは聞いている。


 実際人に対して敵対的な妖魔と戦う事はまだまだあるそうで、中央にはそういう報告も入ってくるらしいが……北東地方の妖怪に限っては人に対して友好的な考えの者達が多いしな。

 レイメイ、御前、オリエのそれぞれが力を持っているだけに、慕って集まっている妖怪達も同様の考え方の者が多い。


 ああやって妖怪達と楽しそうに挨拶をし合うヨウキ帝やユラを見ている限りでは、二人としてもこういう状況を望んでいたのではないかと思う。


 一方で最近のホウ国の面々はと言えば……やはり気になるのはジンオウに関してだろうか。

 一時は師匠と袂を分かったものの、ゲンライの下に戻って真面目に修業を続けているそうだ。門弟達と打ち解けて柔らかく笑う事も増えて来たとの事で、今日も同行して顔を見せているが、妖怪達に律儀に挨拶をして温かく迎えられているようで。

 東国の面々も良い方向に進展しているようで何よりだな。

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