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番外908 鬼娘と小鬼と

 補佐と交渉を担うならば見た目は和むようなものの方が良いのではないかと、接する事が多くなるジオグランタとユイの希望を聞きつつ模型と幻術で調整を行った。


「この子達は好きね。シーカーとハイダーだったかしら」

「うん。小さな精霊みたいで、かわいい」


 と、ジオグランタとユイとしてはその辺を抑えて貰えると嬉しいらしい。

 なるほどな。可愛い系のデザインが良い、というわけだ。

 そんなわけで角を丸くした四角形型とか、球型や卵のような楕円型、各種動物を模したものなど、身体の形を色々作って、そこから色んなマスコット的な組み合わせを試してみた。


 ティアーズから見た目はかけ離れていてもいいので、外装に毛皮を採用したりというのも有りだ。基本的な部分を造ったら、魔界の迷宮核にデータを移行して生成や管理ができるようにするつもりだからな。多少手の込んだ姿でも大丈夫だ。


 補佐役であり交渉の窓口に立つ役割もあるので、総じてユーモラスな印象の方が良い。特に顔は重要だ。

 円や楕円の大きな目とか、大きめのモノアイ。横線一本の口に、笑っているような口。変形や光の表現で表情を出せるようにするか等々、色々試しているが基本的には愛嬌がある印象だ。ジオグランタとユイ。それに中枢部への訪問者。どちらにも和んで貰えるようなものが望ましいな。


「まあ、俺達から見てというよりも魔界の住民が見てどういう印象になるかが大事なんだけどね」

「確かにね。メギアストラやボルケオール達にも聞いてみましょうか」


 と、俺の言葉にジオグランタが頷き、この場にいない魔界の面々についても水晶板モニター越しに見てもらう事になった。


 身体についても同じ事が言える。シーカー達と同じく、頭が大きく短い手足のタイプとか、短めの作業用アームがくっついているものとか、ティアーズと同じくマニピュレーターが身体に収納できるものとか……色々な組み合わせを試して、魔界の面々の意見を聞いてみる。


「何と申しますか中々に目移りしてしまいますな」


 ボルケオールが微笑むと、魔界の面々は同意するように笑って頷く。

 その他にも――手足があるというのは割合重要視される要素だ。


「――交渉役も担うのなら、何かしら友好的な身振り手振りができる、というのは重要よね」


 という……結構早い段階でステファニアが出した意見は説得力があって、みんなそれに納得していたからだ。

 その言葉に合わせて、ぺたんと座っているコルリスが挨拶をするように片手を挙げ、アンバーやティールも合わせるように手やフリッパーをこちらに振ってきた。


 確かに、そういうジェスチャーやボディーランゲージは毒気が抜かれると言うか、結構バカに出来ない要素だと思う。俺も実際ゴーレムやティアーズ達にはそうした挨拶をさせているというのもあるし、魔界でもそうしたジェスチャーで友好の意図が伝わるというのは同じなようだ。


 勿論、手があるというのは実用性の面でも便利という点はあるが。

 そうして色々デザインしてみたが、最終的には最も関わりの深いユイとジオグランタが気に入ったものをという事で精霊風のものが採用となった。


 やはり魔界の住民に好まれる可愛い姿というのは少し違うようで……色は漆黒が良いのではないかという事だ。

 身体は黒い靄に包まれて常時浮遊しており、輪郭がはっきりしない身体に、とぼけた印象の目と口が光っているというデザインだ。


 ユイは勿論、ジオグランタもメギアストラ女王、ボルケオールやカーラといった面々も「可愛いと思う」と高評価をしているので、魔界の住民と感性が違う俺としてはそれを信じるべきなのだろう。


 というか、見た目は何かしらの精霊のような印象であるが……。中身はれっきとしたティアーズの改造だ。涙滴型ではないものの、靄の中には実体がきちんと存在している。


 身体の周りに一時的に着色した霧を纏っており……オーラのように見えるが実はただの霧というわけだ。

 漆黒の身体の周りに霧を纏っているので輪郭が分かりにくいという……言わば視覚的なトリックを利用して精霊風に仕立て上げてみたのだが、この表現はユイも含めて魔界の面々には大分ウケが良かった。


 外から見てはっきり実体があると言えるのは……黄色い鬼の角が二本生えている点だろうか。その辺でユイの補佐役であるというのが分かる。


 身振り手振りや作業が可能なようにアームも付いているが、部分的にゴーレム技術を導入する予定で……アクアゴーレム制御の一環で腕を形成しているわけだ。身体の周りに着色した靄を纏っているのはこの技術の延長だな。


 ゴーレムならこんな事もできる、と、オーラ風に仕立て上げたのが切欠で、そこからウケが良くて発展していったというわけだ。


「腕の部分は実質アクアゴーレムと同じだからね。近接格闘には少し向いてないけれど、それ以外の事は大体できると思うよ」


 と、マルレーンのランタンを借りた幻影を用いてみんなに説明していく。


「戦闘の場に出るとしても、スレイブユニットでユイに後方支援をするのが基本なら、近接格闘能力はあまり問題にはならないわね」


 ローズマリーが分析して言った。そうだな。防御手段はマジックシールドで良いし、水や靄を操るというのは幻術、治癒術等、ユイの支援にも繋がる系統の術と相性が良い。眠りの雲等に転用も可能だしな。


 そんなわけでアームは基本的には戦闘用ではないものの、割と自由に変形や伸縮ができて、2頭身、3頭身のようなマスコット体型でも物を持ち運んだり、大抵の細かい作業もこなせると便利さが目立つ。


 勿論手を振ったり手招きをしたりといったボディランゲージも簡単と、結構利便性が高くなりそうだ。体育座りした補佐役の幻影が、丸みを帯びた手を振ったりして、みんなが表情を綻ばせる。

 魔界仕様ではあるが、ルーンガルドの面々から見ても中々に可愛いというか、ユーモラスな印象を受ける姿や仕草なのではないだろうか。


 スレイブユニットは本体より小型なものになるが同様のデザインで良いだろう。

 大きな頭部に小さな身体で浮遊移動したり、ちょこまかと動いて雑事をこなす光景を幻影として映し出してみたが――小さな精霊達が顕現したような印象があって中々に微笑ましい。

 マルレーンが手を伸ばすと、短い手でマルレーンの手を取って握手して応じる幻影の小鬼達である。


「ふふ。黒い靄だし、五行でも私と相性が良いかも」


 と、ユイも小鬼を膝の上に乗せて楽しそうに笑って言う。


「そうだね。その辺は意図したわけじゃないけど、当て嵌めてみると五行と繋がるかな」


 金属の身体、水の腕と身体に纏った靄、鬼の要素である角と……五行になぞらえた時に金、水、木という相生の要素が順に並んでいる。陰陽術、仙術を行使する折にユイの力を補強してくれる存在になるだろう。特に……水気は五行では黒色を当て嵌められているという話だからな。


「名前は――きちんと構築されてからつけてあげようか」

「うん……っ」


 俺の言葉にユイが嬉しそうに頷く。では、色々と補佐役に覚えさせる術式を選出していこう。基本的にはスレイブユニットが活動するので、補佐役本体は多少大型化しても良い。容量もその分潤沢に使えるようになる。

 しっかりと必要な能力を纏めてから実際の構築に移っていく、という事で。


 そんなわけで色々とユイの身の回りに関してのあれこれが纏まって……薙刀を完成させたり、補佐役を構築する為に動いていくという事になった。

 諸々完成した後に俺の誕生日もやってくるぐらいの予定になるという目途も立ったので、その後でみんなと共に母さんの家に遊びにいけるかな。

 ユイとしては母さんの家に訪問するのを大分楽しみにしているようで。みんなの体調も子供達の状態も良いので、先々が楽しみだな。

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