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番外897 魔界の守護者

 ――明くる日。子供達は朝食を済ませてから交流の時間といったところだ。孤児院の面々は昼食をみんなと食べてから帰る事になるかな。

 俺達はラストガーディアンについての話し合いがあるので子供達のいる迎賓館側にはあまり顔を出せないが、バロールを同席させておけば大体の事態には対応できるし、使用人の面々に任せておいて大丈夫だろう。


「この時間はおはようだったな。今日はよろしく頼む」


 そうして魔界からやってきたメギアストラ女王は、俺と顔を合わせるとそう言って挨拶してくる。


「おはようございます。こちらこそよろしくお願いします」


 魔界は昼夜がないが、ルーンガルドの挨拶にメギアストラ女王が合わせてくれたわけだ。こちらも笑って挨拶を返すと、メギアストラ女王は満足そうな笑みを見せた。

 ジオグランタはスレイブユニットでの話し合い参加なので……城でティエーラ達と共に待っている。


 というわけで、フロートポッドに乗り込んでフォレスタニアへと移動する。迎賓館は子供達が使っているので、今回は城の奥で話し合いの場を設けてある。窓から中庭が見られる場所なので、子供達の間で何かあればすぐに駆けつけられるだろう。


 城の一角に通すと、そこには既にジオグランタもみんなやティエーラ、コルティエーラ、ヴィンクルと共に待っていた。ヘルヴォルテ、アルクスやアルファ、ベリウスといったガーディアンの面々も迷宮防衛の実績を持っている事からアドバイザー役として参加している。

 月光神殿を守っていたカルディアもだな。


 というわけで顔を合わせた面々で挨拶を交わしていると、クレアがお茶とお茶菓子を持ってきてくれて、そうしてラストガーディアンについての話し合いが開始となった。


「これが迷宮核の分析資料です。極秘資料なので持ち出せない……というか、話し合いが終わったり、外部に持ち出すと呪法が働いて文字が塗り潰されてしまうので注意して下さい」


 ローズマリーの魔法の鞄から資料を出して配る。

 迷宮核にプリントアウトしてもらったものだが、生成する時点でインクに細工がしてあり、それを媒体にして呪法を込めてある。魔法の鞄から出した時点で話し合いの終了、外部への持ち出し、許可の無い者の閲覧のいずれかで呪法発動の条件を満たし、呪法が発動した場合資料も読めなくなってしまう、という具合だな。


「ふふ。いつも面白い方法で呪法を活用するものだな」

「テオドール様の呪法の使い方は素敵ですね。私も好きです」


 と、パルテニアラが肩を震わせ、エレナもうんうんと頷く。

 境界門が置かれているのも迷宮最深部なので、ラストガーディアンについての話し合いに関してはパルテニアラにも同席してもらった方が良いだろうと参加してもらっている。


 早速話し合いに参加してもらっている面々に資料を見て貰いながら話し合いを進めていく。

 迷宮核からプリントアウトしてきた資料の内容だが……ヴィンクルの成体――つまり過去のラストガーディアンを基準として色々な種族、既存の魔法生物と様々な観点から比較する内容となっている。


 成長してラストガーディアンと呼べるぐらいのポテンシャルが発揮できない種族は流石に資料には載せていない。


「私達としても色々方向性を考えたけれど……まずはそうね。資料を色々と見せてもらえると嬉しいわ」

「考えに沿うような種族が資料に載っている可能性もあるが、あまり考えに固執し過ぎないように見ていくとしよう」


 ジオグランタとメギアストラ女王はそう言って資料に目を通していく。


「色々資料には載っているけれど、流石にというか、戦闘能力に関してヴィンクルに並ぶとなると大分限られてくるわね」

「そうだね。種族的にはそうそう竜に比肩する事はないっていうのは分かっていた事だけれど」


 特殊能力を含めるとまた少し話も変わってくるが。月光神殿を守っていたカルディアのように、石化能力だとか強力な固有能力を持つ種族も……初見の相手には強い。

 特殊能力についての話をすると、カルディアが声を上げた。


 翻訳の魔道具によると、能力は強くともそれだけでは相性の問題があったり、情報が漏れれば対策される可能性がある、という事を言いたいらしい。その点ヴァルロスは基礎的な能力も高く、特殊能力も隔絶している。有無を言わさずねじ伏せられるだけの破壊力を有し、それを活かし切る技量があった、とそんな風に分析するカルディアである。


 確かに、カルディアも石化能力だけではない。今は再生中なので前よりは戦闘能力も落ちてしまっているものの、元通りに成長すれば身体能力も相当なものだ。それでもヴァルロスに負けてしまったのは……相手が悪かったとしか言いようがない。


「まあ、特殊能力を最大の武器にするとしても、その汎用性や基礎的な能力の高さも疎かにできない、という事ね」

「ラストガーディアンとして見るならね」


 ローズマリーの言葉にそう答える。

 一通り資料に目を通し、どの種族にどんな強みや弱みがあるか等、色々説明したり疑問に答えたりした後で、ジオグランタとメギアストラ女王に尋ねる。


「伝えるべき事は伝えましたので、お二人の希望や方針をお聞きしたいと思うのですが」

「そう、ね。やはり一番はこれからずっと一緒に迷宮を支えてくれる子なわけだから、私と相性が良い相手の方が良いわね。メギアストラと同じように……お互い信頼を築ける相手だと嬉しいというか。まあ……これは私の努力にもよるわね」

「他にも……これは前から触れていた事ではあるが、予備知識の関係から、魔界で知られる種族よりはルーンガルド由来……或いは未知、希少な種族。そしてヴィンクルとはまた別の種族の方が望ましいだろうと、そんな風に再確認はしていた」


 二人はそんな答えを返してくる。資料に一通り目を通した後でもその辺の考えを変える必要はないだろう、という事だそうな。ヘルヴォルテも目を閉じてその言葉に静かに頷く。


 なるほどな……。ジオグランタの求めるものとしては、まず信頼感というわけだな。戦闘能力も重要だが、コミュニケーションが成り立つというのが前提となる。実際ティエーラ、コルティエーラとヴィンクルの仲は良好だし。

 次に防衛任務を主とするので対策が立てにくい事。魔界内外を問わずそういった条件を満たすような種族が望ましいとなるわけだ。


 まあ、対策が立てにくいという点では何度か触れている通り、アルクスやヴィンクルのようにハイスタンダードである事が一番だと思うのだが。カルディアのヴァルロスの評もそこに繋がる話だしな。


「では……それを念頭に置いて、もう一度資料を見ていきましょうか」


 条件を満たす種族をピックアップして細かく触れて行けばいいだろう。




 そうして……暫くの間話し合いを続け、色んな観点から話をした結果、この種族がいいのではないか、という結果に至る。


「鬼、か。ふむ」


 メギアストラ女王が資料を見ながら頷く。


「鬼だとしても、女の子の方が気も合いそうね」


 と、ジオグランタ。ふむ。

 何というか……割と意外だが、レイメイと同じ鬼族に注目が集まっていたりする。

 まあ確かに……。鬼は鬼でも修業を経た者は強い力を持って神通力を備え、文字通り鬼神や羅刹と呼ぶべき存在になり得るポテンシャルを秘めている種族であるな。


 生粋の鬼は受肉した精霊に近しい存在であるため、実は始原の精霊との相性も最高に近い。人型で会話も可能で、魔界は勿論、そこまでの高位の鬼となれば東国でも伝説上の存在と……前提条件は大体クリアしている。

 条件を整えてジオグランタの力を集めてやれば……自然発生に近い形で新たな鬼のガーディアンを生み出すのは難しくないと迷宮核も提示してきていると……色々見て行けば確かに竜種に比肩するポテンシャルがあるかも知れない。


 鬼には地獄の獄卒であるとか守護神としての性質、イメージを与えられる事もあるしな。精霊に近しい事も考えれば、そういうイメージを持つ鬼という種族は……確かにラストガーディアンとして向いているかも知れない。

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