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番外896 守護者達の想いは

 お披露目の翌日、子供達を幻影劇場に招待して上映が行われた。

 サンドラ院長や巫女頭のペネロープも子供達には安心して童話劇を見せられると上機嫌な様子でお墨付きをくれた。

 そうして予定通りに上映が行われて、俺も上映ホールで立ち会ったが、子供達は童話集に随分と喜んでくれた。


 上映ホールの様子と言えば、笑いを取る場面、話が盛り上がる場面で素直に反応してくれて……俺としても見ていて嬉しいというか微笑ましいというか。

 それはみんなも同じようで、水晶板モニターを通して上映ホールの様子を見て笑顔になっていた。


『声だけの演技ではありますが……子供達が一喜一憂してくれているのを見るのは楽しいですね』

『ふふ、先々の事が楽しみになってくるわね』


 グレイスの言葉にステファニアも表情を綻ばせる。


『その頃には……私達も後に続いている頃合いでしょうか』

『それは、ええ。多分ね』


 アシュレイが明るい笑顔で言うと、クラウディアも少し笑って頬を赤らめて答える。マルレーンもにこにことした笑みを見せる。

 年少組も後に続いている頃合い、か。ん……。確かに時期的にそうなってくるだろうか。


 俺もそうだが年少組も各々背が伸びたりして成長しているのが見られるし。年少組はまだ幼い印象が強いが、ふとした時に妙に大人びて見えたりする事もあって、そのギャップに時々どきりとさせられる事がある。みんな苦労しているし、立場上も自立しなければならなかったりで、精神年齢的には大人びているところもあるのだが。


『子供達に童話の内容が分かるようになってからの話だから、そうなるかしらね』


 と、ローズマリーは羽扇で表情を隠しながら言った。


『早くて4歳か……5歳ぐらいでしょうか』


 エレナが思案しながら言った。そうだな。童話の内容を理解できる年齢というとそのぐらいになってくるか。色々先の事を予想すると嬉しくなってくるというか。


『ん。子供達と一緒に見に来る』

『楽しそうね。私の場合は、一緒に演奏したり歌ったりもしたいわ』


 マイペースながらも耳と尻尾の反応に喜びが見えるシーラと、そんな親友に笑みを向けるイルムヒルトである。


「それじゃあ、子供達を連れて城に戻るよ」

『はい。お待ちしています』


 というわけで一旦みんなとの話も切り上げて上映ホールから出て待っている子供達の所へと向かう。


「たのしかったです!」

「しょうたい、ありがとうございました、テオドールさま!」

「うん。喜んで貰えたなら良かったよ」


 幻影劇場のホールで声を揃えて丁寧にお辞儀をされてしまった。そんな中にも興奮冷めやらぬといった様子が見えるぐらいにテンションが高めの子供達である。引率役のサンドラ院長やペネロープと孤児院の子供達は一緒にそのままフォレスタニア城に招待してあるので、迷宮村や隠れ里の子供達と交流を深めて貰えればというところだ。


 年少の子達は勿論、年長の子達にも十分に楽しんで貰えたようで、俺としては何よりである。

 というか親子連れ向けというコンセプトなので水竜親子やベヒモス親子も招待しているのだが。ラスノーテとエルナータも童話集を楽しんでくれたようだ。この辺種族を選ばず楽しんでもらえるのは幻影劇ならではだな。笑顔で親達に身振り手振りで楽しさを伝えていて、微笑ましそうにうんうんと頷いて応じている様子であった。


「これはテオドール公。この度は先行上映の招待、誠にありがとうございます」


 と劇場のホールに到着した武官達が俺に挨拶してくる。先日調整の時に街中の警備任務に就いていた武官達だ。子供達と入れ替わりに童話集を鑑賞という事になっている。


 代わりに先日調整を手伝ってくれた面々が今日は街中の警備をしたり、子供達の護衛をしたりして城へ向かうというわけだ。フォレストバードのルシアンがにこやかに声をかけて子供達を整列させて点呼を取ったり、周囲に不審者がいないかテスディロスが見回してから「うむ」と頷いたりしていた。


 そうしてフォレスタニア城に到着した面々は迎賓館に通して、子供達同士で交流の時間を持ってのんびりしてもらう。

 子供達は先程の幻影劇について語り合ったり、或いは早速チェスやカードで遊んだり、ダーツボードに向かい合ったりといった時間を過ごしていた。ゲームで遊びながらも童話集の話をしたり登場人物の真似をしたりといった具合である。


 そんな子供達の様子を見てみんなも表情を綻ばせて、上機嫌な様子だ。

 まあ何だ。調整や先行上映についても話題になっているようで、チケット販売の折にも何時から封切りなのか、どんな内容なのかと質問される事も多いそうだ。童話集についても中々期待度が上がっているようで何よりである。





 やがて夕飯も済ませ、いい頃合いになって子供達はセシリアやクレア達に案内されて大浴場に向かっていった。


「おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

「ん、子供達が楽しそうで何より」


 お休みの挨拶をして、手を振って大浴場へ向かう子供達を見送ったところで、シーラが言う。その言葉にみんなも頷いて微笑んだりしていた。

 声を当てたり演奏したりと、童話集では結構深く関わっているので、ああして喜んで貰えるというのが嬉しいのだろう。

 何というか……みんな子供好きな事は分かっていたが、実際子煩悩になりそうな気がするな。うん。


 ともあれ童話劇については一段落。後は封切りを待つばかりだ。そうなると俺は経過を見つつ、別の仕事に注力する事になる。


「んー。明日はメギアストラ陛下が訪問してくる予定か」


 軽く背伸びをしながら言うと、ローズマリーが口を開く。


「ラストガーディアンについての話し合いだったかしら」

「そうだね。色々情報も出揃ったから」


 魔界の迷宮核もデータ収集が終わり……解析も終わって情報が出揃ったところで魔界側のラストガーディアンについて具体的な話をしていく、というわけだ。


 ジオグランタやメギアストラ女王には色々とデータを渡して、希望や方針を改めて聞く事になる。恐らく今回の話し合いでラストガーディアンについても具体的な所が決まってくるだろう。


 流体騎士団はと言えば色々バリエーションとそれに伴う集団戦の動きであるとか、相手の戦法、編成等に合わせた対応の仕方のシミュレーション等も組んでいる。

 実際防衛区画も資源生成区画も準備は滞りなく進んでいるので、後から生成されるであろう区画という予測しにくい要素を除けば、ラストガーディアンの育成計画について考えていく頃合いだ。


 そう。育成だな。具体的な所までは決まっていないものの、ヴィンクルと同じくラストガーディアンも一から育てるという事で意見は一致している。ジオグランタやメギアストラ女王のパートナーになれるような、そんな存在が望ましい。


 ヴィンクルやアルクス、ヘルヴォルテやベリウス、アルファといった面々からしてみると後輩ができるので楽しみであるらしいが。


「私はあまり感情が強い方ではありませんでしたが……ずっとクラウディア様にお仕えしてこられた事は誇りに思っている……のだと思います。ガーディアンはそれぞれ性格が違えど、生みの親とも言える迷宮に対しては守りたいという想いが大なり小なりありますね」


 と、ヘルヴォルテはラストガーディアンを新しく育成するという話を聞くと、そんな風にガーディアンとしての想いを教えてくれた。


 アルファにしてもベリウスにしても、仲間になる事を選んでくれたのは管理者であるクラウディアを助けたい、機能不全になった迷宮を元の形に戻したいと、俺に倒されて迷宮の支配が薄れた時に思ったから、らしい。

 まあ、大前提として俺達がそれを任せられるだけの力量を示したとか、戦って気に入ったからというのもあるらしいが。


 だから俺が対話をするなら大丈夫だろうと、そんな風にヴィンクルも含めてガーディアンの面々は翻訳の魔道具を通して魔道具で伝えてきてくれている。魔界側のラストガーディアンがどうなるにせよ、そうした信頼にはきちんと応えたいところではあるな。

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