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番外879 魔界の魔物と迷宮と

 魔界側の迷宮については――俺達の知っている魔王国の種族が潜れるような区画を作るという事になった。


 例えばインセクタス族なら森の区画。ギガース族なら巨大な石造りの遺跡といった具合だ。それぞれの種族にとって有益な素材、適した環境と有利な迷宮魔物を配置する事で、迷宮に潜りやすくしようというわけだな。


 森の区画であれば蜜を蓄えた植物系の魔物であるとか、果実、種子、葉、茎、根等、一部が食用に適した魔物を配置。ギガース族ならば比較的大型の魔物が出没する区画を作る事でギガース族の食糧や武器、道具等を得やすくするといった具合だ。

 迷宮は区画ごとに宝箱を生成、配置することができ、場所によって出る内容も変える事が可能である。それを使えばより、各種族に有用なものを渡す事が可能だろう。


「ディアボロス族はどうなのかしら?」

「ディアボロス族については……割とどこでも対応できるね。ただ……だからと言って高低差のある区画はあまり良くないと思う。飛んで戦闘をするのはやっぱり危険度が高くなる」


 ステファニアがそう尋ねてくるので俺も答える。

 翼があるから高低差のある区画でも対応できるのではと考えてしまうが、空を飛びながら戦って落下した場合、リスクばかりが先行してしまう。

 そう考えると天井を高くして飛ぶ事による優位性は作れるが落とされても落下距離は大した事がないというような、そんな区画が良いだろう。


 そういった考えを説明すると、マルレーンは嬉しそうに微笑んでこくこくと頷いた。オレリエッタ達とも仲良くなったからな。あまり危険な事はして欲しくない、とも思う。


「パペティア族の方々には……どんな区画が良いのでしょうか?」

「パペティア族は……普段はあまり戦闘を得意としてないらしい。戦闘を想定して動く場合、金属の器を用意したりするみたいだね。だから……それを踏まえた区画が良いんじゃないかな?」

「金属の器……。炎熱城塞にいる、リビングアーマーみたいな感じ?」


 グレイスに答えると、シーラが首を傾げた。リビングアーマーは中身が空っぽの鎧兵士だな。


「見た目はあれに近いのでしょうけれど、パペティア族は近接戦闘ではなく魔法を主体にするとわたくしが魔王国の図書館で読んだ書籍にもあったわ。肉弾戦は器にダメージが蓄積するから好まないと言う事かしらね」

「戦闘用の器であっても守りたい、というわけね」


 ローズマリーが説明すると、イルムヒルトが納得したように頷く。


「それを前提にすると……例えば眠りの吐息を浴びせる魔物みたいに、普通の肉体を持つ生物に対して作用する攻撃手段を持つけれど、全身鎧には無力で魔法にも弱い、みたいな魔物で構成した区画がいいね」


 戦闘型の器を持つパペティア族なら簡単に戦える区画、という感じにするわけだ。


「それは安心です」


 と、アシュレイが安心したのか明るい表情になった。


「得られる素材はパペティア族がより美を追求できるようなものがいいね」


 例えば、特殊な樹脂とか陶磁器の材料になる質のいい砂や鉱物であるとか。それに蜘蛛の魔物から糸が取れるというのも良いかな。魔物系の蜘蛛の糸は、髪の毛に加工できる。


 特殊樹脂についてはカーラに渡した技術で加工すれば人肌の質感を再現する事ができる、というもので、加工術式と共に普及すればパペティア族が表情を変える事ができるようになるだろう。


 パペティア族は普段使いの器と戦闘用の器で、素材を変えているので、戦闘用として有用な金属素材も得られるようにしてもいい。見た目が滑らかで美しく、薄手でも強度が確保できる素材であれば、パペティア族にとって人気が出るだろう。


 ミネラリアンはあまり魔王国に出入りしていない種族ではあるが……ルーンガルド側で言うなら、旧坑道のような区画が向いているだろう。

 鉱物、宝石の位置を察知できるし、身体も頑丈なので対抗しやすい魔物は打撃に弱いタイプというのが良さそうだ。


 まあ、そんな調子で上層はそれぞれの種族ならば対策がしやすい区画を構築していけば良い。もう少し下層は――多種族で挑んだ方が有利な区画とすれば種族間の協力も望めるか。色々考えてみよう。


「後は魔物の編成だけど……魔界の魔物は迷宮の情報収集がまだできていないから、魔王国の書籍を借りて、そこから情報を見て決めていくのがいいね」

「予備知識があった方が魔界側の方々も対処しやすい、という事ですね」


 エレナが俺の言葉に目を閉じてうんうんと頷いていた。潜る事を想定している区画はできる限り魔界側の魔物で構成しておいた方が良いだろう。


 というか迷宮のシステムは既存の魔物のデータを収集して記憶して再現する事は勿論、合成獣や魔法生物がデザインできたりする。各階層のガーディアンで、迷宮にしか出現しない魔物はそれに該当したりする者が多いな。

 アルファやベリウス等は収集データから再現された魔物だ。一方で魔光水脈に出現したガーディアンであるキャプテンノーチラスあたりはBFOでも知っているが、実際の所は合成獣のようだ。


 合成獣も魔法生物もシミュレーション上で構築して能力を見ることができるな……。防衛区画以外で活用する場合は、迷宮区画のコンセプトをどうしても実現できなければ組み込む、という方向でいいだろう。


 肝心の防衛区画の戦力は逆に予備知識が一切活用できないよう、魔法生物等で構成する予定だ。まあこれについては追々考えていこう。




 月でのオリハルコン精製を待ちながら、魔王国から借りた書籍を参考に、みんなと一緒に編成を考える。日常の仕事にそうした項目も加えて日々を過ごしていたが――ある朝、朝食を済ませた頃合いでアルバートから通信機に連絡が入った。


『おはよう、テオ君。その……例の水晶球だけど、オフィーリアにも反応があったみたいだ』


 という文面だった。ああ、それは……喜ばしい事だ。

 まずはおめでとう、と祝福の言葉を返信し『みんなにも伝えるよ。後で会おう』と伝えると、アルバートからは『ありがとう。今日も工房に顔を出すから、よければそこで。楽しみにしてる』というやり取りを交わす。


「今アルから通信があったんだけど……オフィーリアさんにも水晶球が反応したみたいだね」


 というわけで通信機を見せつつオフィーリアの事を知らせると、みんなも明るい笑顔になる。


「そうですか! オフィーリア様も……!」

「ふふ。良かったわ。アルバートも喜んでいそうね」


 アシュレイとマルレーンが特に嬉しそうな表情で、ステファニアもにっこりと微笑む。ローズマリーも羽扇で口元を覆っていたが割と機嫌が良さそうな様子だ。

 マルレーンは勿論として、ステファニアもローズマリーも姉としてアルバート夫婦の事を気にかけているのだろう。


「普段から色々世話になっているし、何かお祝いの品でも用意したいところだね」


 その言葉に、みんなも笑顔で首肯する。急ぎではないが、何か喜ばれるものを考えてみようという事でその場は纏まり、フロートポッドに乗って工房へと出かけることになったのであった。




「やあ、テオ君」

「おはよう。アル。オフィーリアさんも――この度はおめでとうございます」

「ありがとう」

「ふふ。ありがとうございます」


 工房の中庭にフロートポッドを着陸させると早速アルバートとオフィーリアが顔を出してくれた。俺から祝福の言葉を口にすると笑顔で応じてくれる。

 みんなもアルバートとオフィーリアに祝福の言葉を伝えて、二人も丁寧にお礼を言って、ビオラやコマチ、エルハーム姫といった工房の面々も笑顔で顔を出す。

 工房では祝福ムードと共に和やかな雰囲気だ。そんなわけで、俺達やエリオットとカミラに続いてアルバートとオフィーリアもという事で喜ばしいことである。

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