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番外856 祝福と想いの力と

 ――明くる日。目を覚ますとグレイスに抱きしめられたりしていて……グレイスも目を覚ますと何時にも増して嬉しそうな微笑みを向けられてしまった。


「――おはようございます」


 と、見惚れてしまいそうな笑顔で言ってくるグレイスである。


「うん。おはよう」


 俺からも朝の挨拶を返す。みんなの取り決めに関しては、誰かに子供ができた時の事も想定して決められているそうで。一緒に風呂に入ったり隣で眠ったりといった点でのローテーションは変わらず、という事らしい。


 状況が変わって触れ合えなくなるのは避けたいという事なのだろう。広い寝室に隣接するような配置で個別の寝室もあるので、体調によって安静にしたいという場合は静かに休む事もできる。


 これから少しずつ変わってくる状況もあるのだろうが……まあ、みんなで納得しやすいように日々を過ごしていけたらなというところだ。


「おはようございます」

「ん……。おはよう」


 と、みんなも次々目を覚ます。


「うん。おはよう」


 笑顔で朝の挨拶を返すが、にこにこしたマルレーンに抱きつかれて頬にキスされたりして。それを見たシーラからも同じように頬に口付けされたりする。耳と尻尾の反応を見る感じだと随分楽しそうだ。こういう場合、俺達の場合はみんなで同じ事を、という流れになったりするわけだが。


「ええと……うん」


 と、頷く。みんなの目の前での口付けだったので今回もそうなるようだ。


「んー。そうやって照れている所、好きだな」

「そうね。私もだわ」


 イルムヒルトが楽しそうにそう言うとステファニアも笑顔で頷く。グレイスもくすくすと笑ってそれに続いた。俺としてはこういう場合は成すがままに受け入れるといった感じだが。


「まあ、わたくしとしては身支度を整えてからが良かったのだけれどね」


 と、少し夜の間に乱れた髪を手で整えながらローズマリーが頬にそっと口付け、顔を赤らめながら離れていく。置いてあった羽扇を手に鏡台へと向かう。


「ええと、その失礼しますね」

「流石に、自分の番の時は少し恥ずかしいわね」

「ふふ。けれど、賑やかで楽しいです」


 アシュレイとクラウディアは顔を赤らめ、エレナははにかんだりしながらそれぞれ俺の頬にキスをしてくれた。

 まあ、頬に口付け、ぐらいの可愛いものではあったが……薄手の夜着なので至近に来られるとそれなりに刺激的というか。思いがけず朝からみんなとスキンシップしてしまったな。




 さて。昨日は旅から帰って来たばかりという事で、あちこちに連絡も回したが……まずは旅の疲れを癒して欲しいという事で返信も来ていた。


「おめでとうございます、旦那様、奥様」

「グレイス様は幼い頃から手がかからない分、心配していましたが……それらも杞憂であったようで」

「おめでとうございます!」


 朝食の席でみんなと顔を合わせるとセシリアやミハエラ、シャルロッテにシオン達、パルテニアラといった城の同居人。使用人や家臣のみんなも朝の挨拶と一緒に祝福の言葉をくれた。


「メイナードの子孫か……。うむ。妾としても感慨深い」


 と、パルテニアラも上機嫌そうに頷く。


 テスディロスやウィンベルグ、オズグリーヴといった面々も顔を合わせた時に「有事があれば我らが代わりの戦力となろう」と笑って申し出てくれた。マクスウェルやアルクスやヴィアムス、アピラシアもうんうんと頷く。


「まあ、我らとて中々グレイス殿の戦力の代わりになれるとは言い切れぬところはありますが」

「確かに。だがまあ、必要とあらば力は尽くそう」


 と、オズグリーブとテスディロスがそんなやり取りを交わす。昨日話していた内容と関わってくる事ではあるが、みんなそうした場合の事を気にかけてくれていたという事だろう。


「ふふ。有難い事ですね」


 グレイスはそんなみんなの気遣いに、嬉しそうに微笑んで感謝の言葉を口にする。


 そうして、朝食をとってから暫くすると、もうそろそろ通信機に連絡を送っても迷惑な時間ではないだろうという判断からか、あちこちから連絡が入り出した。


 ヘリアンサス号もまだ航行中。数日留守にしていたとはいえ執務もそこまで溜まっていないので、来客を迎える事に問題はないが……喜びに任せて沢山人が集まって騒がしくしては悪いからと、みんなで昨日の今日でおしかけるように訪問するのは遠慮しよう、という連絡を回し合っているそうだ。代わりに追々顔を合わせたり、アポを取ったりしてから顔を見せに行きたい、という希望は多かったが。

 そんな調子で通信機に次々と祝福のメッセージが入ってくる。


 メルヴィン王、ジョサイア王子、アルバートと工房の面々。エリオットとカミラ。アドリアーナ姫、七家の長老、ロゼッタ、アウリア、ペネロープ。そして国内外の知り合いに魔界の面々……とこれは中々返信も大変だ。というか、こんなに一遍に祝福の言葉を受けてお礼を返すのは結婚式の時以来だな。


『おめでとう。喜ばしい事だ』

『ありがとうございます、陛下。みんなから祝福の言葉が通信機に入ってきて嬉しく思っている所です』


 メルヴィン王と通信機越しに言葉をやりとりする。

 メルヴィン王達は状況も踏まえて俺やみんなに負担が少ないように体制を整えていくと、そんな風に伝えてくれた。


『うむうむ。曾孫か。今後が楽しみになったぞ』

『実に喜ばしい日ですな……! みんなも我が事のように喜んでおりますぞ!』


 と、お祖父さんとエミールからのメッセージ。七家の長老達とは顔を合わせたらまたしっかりと抱擁を受けてしまうだろうな等と思って苦笑しつつ、祝福に対する返礼を返す。


 そうして誰々からこんなメッセージが来たと、みんなで通信機を見ながらお茶を飲みつつ、返信をしたりして和んでいると、ティエーラとコルティエーラ、ジオグランタとパルテニアラ。それに四大精霊王とテフラ、フローリアが顕現して姿を見せる。


「お話は聞きました。私達に力になれる事があるならと、みんなとお話をしていたのです」

「おめで、とう」

「おめでとう。喜ばしい事だわ」


 と、ティエーラが微笑み、宝珠を抱えたコルティエーラと、ジオグランタがそれぞれ祝福の言葉を述べてくれる。

 高位精霊達が祝福してくれるというのは何というか心強い。こういう場合、もう少し経緯を見守って、という事も多いが、ティエーラ達の場合、自分達の祝福や加護が言葉だけに留まらないと分かっているという部分があるのだろう。


「ありがとう。みんなが祝福してくれるって言うのは……心強いな」

「ありがとうございます」


 みんなと共に礼を言うと、ティエーラ達は微笑みながら頷く。


「いやはや、素晴らしい事じゃな」

「おめでとうね!」

「微力ながら私達の祝福が役に立てば、と」

「そうだな。元気に育ってほしい」


 プロフィオンとルスキニア、マールとラケルドと精霊王達もお祝いの言葉を口にしてくれる。


「おめでとう。人の世のこうした光景は、何時見ても良い事であるな」

「私も、家にまつわる精霊としてこんなに喜ばしい事はないわ。特に、テオドールとグレイスは二人が幼い頃からすぐ隣に感じてきた子達だから……私としても、とても嬉しいの」

「そう言ってもらえると……私も嬉しいです」


 そう答えるグレイスの手をテフラとフローリアが取って笑い、そんなやりとりにセラフィナもうんうんと頷く。

 フローリアとセラフィナについては家にまつわる精霊や妖精としての性質があるからか、何やら力が増大しているようだ。


 というか、環境魔力そのものが暖かなものになっているな。

 精霊達だけでなく、みんなの祝福の想いが力になっているというわけだ。こうした想いの力も……きっといい影響を与えてくれるに違いない。

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