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番外798 精霊達の喜び

 ティエーラ達のスレイブユニットをそれぞれ寝台型のゴーレムに乗せて運ぶ。

 ジオグランタは本体とスレイブユニットで揃って境界門へと移動する。スレイブユニットはそのまま一緒にルーンガルドへ。本体はメギアストラ女王やファンゴノイド達と共に俺達を見送りだ。


「何だか、自分を見送るみたいで不思議な感覚だけれど」


 と、ジオグランタは俺達に同行するスレイブユニットと手を振り合って楽しそうな印象だ。


「ふふ、ジオが楽しそうで何よりだ」

「問題を抱えていた時は落ち着かなかったものね」


 隣に立つメギアストラ女王の言葉に、ジオグランタは小さく笑う。


『それでは、待っていますね』

「ええ。届けにいくわ」

「行ってくるといい。と言っても、本体は魔界側にいるのだが」


 ティエーラも水晶板モニター越しに微笑み、メギアストラ女王も笑顔でスレイブユニットを見送る。では……ティエーラ達のスレイブユニットを届けにいくとしよう。

 こちらからも程無くしてティエーラのスレイブユニットが魔界側にやってくるという事と出迎えと同時に執務もあるという事、メギアストラ女王はそのまま居残りだ。ティエーラとジオグランタを中継していたシーカーは代わりにメギアストラ女王が預かって、何時でも俺達と通信できる状態を維持する。


 そんなわけでみんなと境界門を潜り、回廊を通って転移港に出る。


「ああ――これがティエーラの守ってきた世界なのね」


 ジオグランタは転移港の設備から外に出ると、目を閉じたまま天を仰いで言った。

 暫くの間ジオグランタは魔力探知を行って周囲の状況を見て、楽しんでいるようだった。と、そこにティエーラ達と四大精霊王、テフラとフローリアが顕現してくる。

 スレイブユニットの起動だけなら転移港で十分にできるからな。高位精霊の面々もジオグランタの訪問とスレイブユニットの起動を楽しみにしていたというわけだ。


「ふふ、初めまして、というには既に色々お話をしていますが。会えて嬉しいです」

「ええ、ティエーラ、コルティエーラ。それに、高位精霊のみんなも。本体ではないけれど……私も会えて嬉しいわ」


 そう言ってティエーラとジオグランタは手を取り合う。コルティエーラも嬉しそうに明滅し、ヴィンクルも声を上げ、精霊達が拍手を送る。


「初めまして、ジオグランタ様!」

「お初におめにかかる」


 と、精霊王のルスキニアやラケルドがジオグランタに言うと、ジオグランタも微笑んで応じる。マールやプロフィオン、テフラやフローリアとも挨拶しあう。


「あまり広い範囲は見られないけれど……命に溢れる素敵な世界だと思うわ」

「ありがとう、ジオ。私も魔界にお邪魔する時が楽しみです」


 それからジオグランタはティエーラに向き直って微笑み合う。

 星や世界を司る精霊だけに気が合うというか。二人だけに通じるものがあるのだと思う。親子か姉妹か……関係性は謎で何とも言えない所があるが、ともかく枝分かれした近しい立場だしな。


 周囲では小さな精霊達が活性化して、二人のやり取りに小さく拍手したり、嬉しそうに見守ったりしているのが分かる。というか……本来なら顕現しないぐらいの小さな精霊も肉眼で薄らと見えるぐらいになっているな。これ以上ない程に同じ場所に高位精霊が集まって喜んでいるから共鳴して活性化しているのだろう。


 精霊同士の交流による影響は限定的なので大きな問題はない、という迷宮核の試算も出ているから安心だ。互いの世界に精霊の本体――依代がない状態なので、ルーンガルドと魔界間での行き来はしにくい。


「ふふ、賑やかで楽しいですね」


 グレイスがシルフと握手をして微笑みあったり、アシュレイが集まってきたウンディーネを撫でたり。マルレーンもにこにこしながら小さなサラマンダーと手を振り合ったりしていた。

 デュラハンやシェイド、ピエトロにガシャドクロ、ホルン達といった精霊や妖怪の面々もうんうんと頷いている様子だ。


 アシュレイの所に水の精霊が集まっているように、コルリスやアンバーも土属性という事でノーム達に懐かれている様子だ。ノームを肩や頭に乗せてやったりして、それを見たステファニアがくすくすと笑う。


 そこにメルヴィン王とジョサイア王子も転移港に姿を見せた。

 ジオグランタが訪問してくるという事で、挨拶にきたのだ。小さな精霊達が顕現している転移港の様子に驚きながらも表情を綻ばせていた。


「これはジオグランタ様」

「ええ。メルヴィン王とジョサイア王子ね。あなた達にも世話になったわね」

「勿体ないお言葉です。ルーンガルドの一国を預かる身として、訪問を嬉しく思います」

「ありがとう」


 さてさて。そんなわけでメルヴィン王達とジオグランタを互いに紹介しつつ、小さな精霊達と一緒に転移港の迎賓館へと向かう。


 まずはティエーラのスレイブユニットから起動させていく。

 ティエーラにスレイブユニットの手を取ってもらい、ジオグランタのスレイブユニットを起動させた時同様の手順で起動させる。

 そうしてティエーラのスレイブユニットが起き上がると小さな精霊達も拍手を送っていた。


「確かに……」

「これは不思議な感覚ですね」


 ジオグランタの時と同じように本体の言葉をスレイブユニットが引き継いで、ティエーラは楽しそうにくすくすと笑った。表情等もきちんとティエーラらしい雰囲気で……しっかりとスレイブユニットも動作しているようだ。

 そうしてティエーラのユニットも起動して問題ない事を確認したところで、続いてコルティエーラのユニットを起動させる。

 コルティエーラ当人の希望としては――ティエーラの半身ではあるが、スレイブユニットで同じ姿になると紛らわしくなるから別の姿にしてくれて構わないと、ティエーラが確認してくれた。

 なので、ティエーラの容姿は少し残しつつも、少しだけ幼い姿にさせてもらった。

 ティエーラがコルティエーラが宿る宝珠をスレイブユニットに触れさせると、ぼんやりとした輝きが広がり――ゆっくりとコルティエーラが起き上がる。

 幼いティエーラと言った雰囲気だが、おっとりとした印象のティエーラとは表情の作り方が違う。


「……悪くない。こうして、身体も作ってもらって感謝してる」


 と、あまり表情を変えずに言って、宝珠のコルティエーラを胸の所に抱えたままで、こちらにぺこりとお辞儀をしてくるスレイブユニットである。


「コルティエーラは意図して感情をあまり動かさないようにしているようです。嬉しく思っているのは私が請け負いますよ」


 ティエーラがそう言うとコルティエーラは頷いて、俺に向き直る。


「特にテオドールには、とても感謝してる。私達の事をずっとみんなと一緒にいられるようにって助けてくれた。もう一人の私も伝えているけれど、私もこうして言葉で、きちんとお礼が言えて嬉しい」

「ん……。俺もこうやってコルティエーラと言葉が交わせて嬉しいよ」


 そう言って笑みを返し、コルティエーラのスレイブユニットと握手をすると、その腕に抱えられた本体のコルティエーラも明滅していた。


「おめでとうございます、コルティエーラ様」

「ありがとう」


 と、マールと言葉を交わす。四大精霊王やテフラ、フローリアも改めてコルティエーラに祝いの言葉をかけて……小さな精霊達も飛び跳ねたり手を取り合って踊ったりと、随分嬉しそうだ。

 ウンディーネや小さなドライアドに揃ってカーテシーの仕草でお辞儀をされたローズマリーも小さく笑って作法に乗っ取ったお辞儀を返したりして、そんなやり取りにみんなも笑顔になっていた。


「これで、ジオグランタ様もティエーラ様も、お互い気軽に魔界とルーンガルドを行き来できるのですね」


 エレナがそう言って表情を綻ばせる。境界門の改造も終わったし、するべき仕事も順調に進んでいる。コルティエーラとも改めて言葉を交わす事ができたし、スレイブユニット作りに関しては上手くいって良かったな。

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